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*過去 レイ Ⅱ*



レイの過去その二です。



 睨まれた。今までそんなことなかったから、どうして良いかわからないよ。迷惑だったの?嫌なの?


「遊べないの?」

「は?」


 クラスに体が弱くて、外で遊べないの子がいた。だからこの子もそうなのかなって。そう思ったって言ったら違うって返ってきた。持ってる本だけを見て、こっちは見てこない。


「遊ぶ友達なんかいないだけ。お前もさっさと自分の友達のとこ行けよ」

「いないよ」

「は?」

「僕の家、学校から離れてるから、近くに友達いないの。だから毎日一人で家で遊んでたんだ。ね、一緒に遊ぼうよ」

「……そうだとしても、いい。遊び相手なんかいらない」

「なんで?なんで?」

「何だっていいだろ。もうどっかいけよ」

「よくない!じゃあ、何でここで本読んでるの?図書館とかで読まないで、こんなところで……。本当は、遊びたいんじゃないの?」

「うっさいな。お前もうあっちいけよ」


 あっち行けと言われたけど、僕は動こうとしなかった。本当に追い払おうとはしてないって思ったから。

 僕はそのまま動かず、じっと本を読むその姿を見つめていた。


「俺の家、よくない家だ」

「え?」

「同じ学校のやつがそういってくる。そいつらの親が、こそこそ俺を見て何かを言ってるのも見る。あの子の家は危ないから、関わるとロクなことがないから……って。うち、ごくどうっていう家なんだ」

「ごくどー?」

「俺もよく知らない。けど、よく喧嘩してたり、警察が来たりしてるから……。よくないことしてるとは思う。お前だって、そういうやつとかかわったりしたくないだろ?」

「……」


 ごくどーとか、よくわからないし。この子の家が危ないことしてる家だって言うのはわかったけど。だけどさ……。


「でも、君は何もしてないでしょ?」

「は?」

「喧嘩してないし、警察だって君に会いに来たわけじゃないじゃん。でしょ?それに、僕……君と遊びたいもん。お家のことなんか関係ないよ。だから、一緒にあそぼ?」

「……」


 目を丸くして、その子はしばらく僕を見てた。僕も視線をそらさずにその子を見つめ返した。ぱたんと音を立てて本を閉じたその子は、立ち上がった。くすっと笑いながら。


「お前、変な奴」

「ふえ?」

「何して遊びたいんだよ。そのボール?」

「え……?」

「なんだよ、いまさらやっぱりいいとか言うんじゃないだろうな?」

「い、言わない!!でも……ほんとに遊んでくれるの?いいの?」

「こんなにしつこく遊びに誘ってきたの、お前が初めてだし。ただ単に、うれしかった。一緒に、遊ぶか」

「うん!!!」


 それから、僕らは夢中に日が暮れるまで遊んでた。それこそ、夕方のチャイムが鳴ったのに驚いたほど。


「もうこんな時間か……そろそろ帰んないとな」

「えー……。ねぇ、明日も此処来る?」

「大体学校終わったら来てるけど……」

「じゃ、明日も遊ぼう!あと明後日とその次の日もその次の日も……」

「……わかった。じゃあ、また明日」

「うん!!」


 本を持って、公園から帰ってくその子を見てふと思い出した僕は大きな声で呼びとめた。


「何?」

「あ……あの、名前!!」

「そういえば……俺は――――リョウ――――」

「え?」


 公園に植わってる木のどこかにいたカラスの鳴き声がうるさくて、リョウとしか聞き取れなかった。


「お前は?」

「あ、澪!あのさ……」

「じゃあな、レイ」


 聞き返す前に、その子は走って帰ってしまった。でも、いっか。


「りょうっていうんだ。りょう。えへへ……りょうがいるから、寂しくなくなったよ」


 ピンクのボールを抱えて僕も家に帰った。

良介が可愛げなくて。

あんな可愛くない小学生がいていいのか……。

その分澪には可愛くなってもらいたいですね。



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