*過去 レイ Ⅰ*
今回から番外編になります。
まずは過去からですね。
家に帰るのが嫌なの。
『お帰りなさい』って言ってくれるのが、お母さんじゃない。お父さんでもない。二人ともお仕事。朝も会ってないの。僕が寝たあとに帰ってきて、起きる前に出かけるから。
淋しいの。でも言えない。悪い事してるわけじゃないもん。頑張ってお仕事してる。
幼稚園に入園して、はや3年目。来年は小学校だ。いつも通り家政婦の洋子さんが迎えに来てくれた。一緒に帰る。いつもと同じ。帰り道繋ぐ手の暖かさは洋子さんのしかしらない。
今年から僕は一人部屋になった。小さな僕には広すぎる部屋。
「……これ、なんだろ」
朝にはなかった包みが三つ。ベッドの上に置いてあった。大きいのと、小さめのが二つ。不思議に思いながら、僕はそれらを開けてみた。
「くまさんに……ボールに、ランドセル……」
そういえば先週の日曜日は、僕の誕生日だった。大きなくまのぬいぐるみには『れいへ、おたんじょうびおめでとう。おくれてごめんね。おとうさんとおかあさんより』っていうカードがあった。僕は一番近くにあったピンクのボールを抱えた。胸の前で、ギュッと抱きしめる。
「会いたいよぉ……お母さん……お父さん……」
嬉しさと淋しさが胸いっぱいになった。
◆
そんな淋しさを埋めるように、僕は小学校に行っても友達をたくさん作ることにした。だから学校にいるときは淋しくなんかない。でも家に帰ると、僕は一人ぼっちになる。家政婦さん達と遊んでもいいけど、やっぱり友達じゃない。だから僕は、遊んでくれる友達を探しに外に出た。
でも、みんな自分の友達と一緒に遊んでてなかなかその輪の中には入っていけなかった。僕の家は二つの小学校の学区の境に位置してて、この公園にはもう一個の小学校に通う子たちしかいない。僕の通う小学校の子は、もう少し離れた方の公園。でもそっちは遠くて、遊んじゃダメって言われてるからいけない。僕はボールと遊んでばかりいた。
そんなある日。僕は公園の木の陰で座って本を読んでる子を見つけた。ちらっと、楽しそうに遊んでる子たちのほうを見ながら読書してる。遊ばないのかな。そう思いつつ、僕はその子に近づいた。
それが、良だった。
「ね、一緒に遊ぼう?」
「……え?」
あんな驚いた顔したから、嫌なのかと思ったのに。良はこう言ったんだ。
「俺のこと嫌じゃないの?」
その顔は、もう驚いてはなかった。すごく、僕を睨んでた。
なんでそんな顔するのかなぁ。
此処から澪のぬいぐるみ収拾癖が始まったりもしたわけです。
さびしがり屋さんでもあるので……




