＊３３＊
本編最終回になりました。
そんなつもりはなかったんですが、気がついたらめでたしめでたしに……
卒業式は、何事もないように淡々と進められていった。ただ、俺が卒業生代表の言葉を言う以外、ほかに変更点もなく。言葉をいい終わり壇上から退場する際、澪の姿が目に入った。清桜ではなかったことに驚いてる３人と、一人だけ違う表情をしている。全く、何でそんな顔してるんだか。まぁ、卒業式泣きそうな性格じゃないか。
この高校生活。今まで送ってきた学生生活の中で一番だったとおもう。毎日が荒れて、退屈だった中学時代が黒歴史にしか思えない。正直、あの時代は澪にすら話したくない。むしろ誰にだって話たくはない。
何より、あのレイに再び会えたことが一番だろう。死んだと勝手に思っていた。そうとしか思えなかったから、あのときはすごくショックだった。毎日夢に澪が現れては、闇に飲まれて消えていく。それを繰り返し見てたから、精神的にもかなり来た。思えば、初恋の相手は多分澪だろう。あれからずっと、俺は澪だけを想い、生きてきたんだ。絶対言わないけど。
＊＊＊ ＊＊＊ ＊＊＊
昼前には、寮の自室に遭った荷物は、春から一人暮らしをするマンションに送られた。もう、この学園に用はない。引越しの片づけでもしようと、学園を去ろうとしてた俺のところに、一通のメールが来なければの話だったが。
差出人は、澪だった。校内の南の端にある一本の桜の木で待ってて。ただそれだけのメールだ。この馬鹿広い校内には、１００本をはるかに超える桜の木がある。南の端のある一角には、立った一本の枝垂桜が植わっていた。校内に枝垂れ桜は４本。ちょうど東西南北に合わせて植えられている。まだ５分咲き程度のそれは、静かに枝を揺らしている。それをぼんやりと見つめていると、後方から元気よく走ってくる音が聞こえてきた。
「良！！」
「いったい、こんなところに呼び出して何の用……」
確かに、現れたのは澪だった。だが、その手にあるものを見て、俺は驚いた。
「そのボールは……」
「僕が、小さいころ遊んでたボール。これで良と一緒に遊んだんでしょ？洋子さんが言ってたの思い出して、昨日取りに入ったんだ。なつかしい？」
「あぁ……」
まだあったのか。それとも、あの家政婦がとっておいてくれてたのかもしれない。今の澪にあの頃のレイの面影が重なる。屈託のない笑顔で、俺に話しかけてきた澪。普通は女の子が持っていそうな、ピンク色のボールだが、澪が持っていても、なんら違和感がない。何もかも、あの頃と変わってない。今まで気づかなかったのが、あほらしい。
「良、卒業おめでとう」
「どうしたんだ、急に」
「別に。何か言ってみたくなっただけ。……」
しばらく俺を見ていたと思ったら、持っているボールに視線を戻す。……これは癖なのか？
「何かいいたいことあるのか？」
「え？あ……うん……でも……」
「今のうちだぞ」
「う……ちょっと、寂しいなって思っただけ……。それだけ……」
「俺は心配だけどな」
「はぇ？」
なんだその間抜けな顔。こんなところもあるから、心配なんだ。
「もう、俺は澪を傍で見てることができない。何かあっても助けに駆けつけるなんて無理だ。あのキス魔野郎みたいなことがあっても……俺は大学だ……」
「大丈夫だよ。もうあいつもいないし」
「ほかにもいろいろ。朝は寝坊しないかとか、授業さぼり過ぎて単位足りなくなるんじゃないかとか……」
「どんな心配？」
「……俺のいないところで、澪を失うんじゃないか……とか……」
「良……」
それが一番怖い。もうおれはこの学園の生徒じゃないから、俺は傍で守れない。いろんな不安要素が浮上してくるたびに、不安に駆られる。
「大丈夫だよ。僕、死なない。良がいるから……良のために死なない。どこにもいかないし、ちゃんと傍に行くから。昔とは……違うじゃん。もう、何も知らないわけじゃない。名前だってフルネームで知ってる。家だって……良の家の場所覚えてないけど……知ったし。連絡だってとれるじゃん。ちゃんと一人でも頑張るから……」
休みの日は、会いに行っていい？
桜が散り新たな季節が訪れる。たとえどれ程時が経とうと、俺はもう見失わない。
ただ一人−−−−貴方だけに恋を捧げよう
これからも永久に
ここまで、読んでくださりありがとうございました。
一番最後に書きはじめたはずが、甘いもの〜よりも早くおわるなんて……
あ、でもまだ完結にはしません。
それぞれの過去やこれから先の話しを番外編を載せます。
なんか疑問等ありましたら、番外編で解消します。ぜひお寄せください。
ところで、前に夕焼けシリーズ三作の恋人たちにはある共通点があると言ったの覚えてますか？（知らなーい←）
答えは昔からの知り合い（幼なじみだった）です。
澪と良介は幼なじみというよりは知り合いのような感じですね。あとの２組（３組？）は幼なじみです。
どーでもいいですね。はい。
番外編は書けしだい更新します。
