*26*
……最近、妙だ。
俺が寒い冬になると夏の方がいいと思う。だけど、暑い夏になると冬の方がいいと思う。矛盾しているかもしれないが、だれもがそう思うだろう。まあ、俺は秋の方が好きだけども。
なんでいきなり季節の話しなんかしたかというと、特に意味はない。要はただの現実逃避だ。
「良に聞きたいことがあります!」
「……この状況は……なんですかね……」
「良に聞きたいことがあります」
普段めんどくさそうな顔か、無表情にちかい表情をしてる彼はここ(俺の寮部屋)に何のよう……どこからはいったんだ?
「そのまえに、俺の部屋に何故いるんですか?」
「良に聞きたいことが……」
「……どうやって」
「青葉の部屋のベランダから」
「聞きたいこととは?」
「……なんで、レイって名前にしたの?」
「……は?」
そこまでして、聞きたかったのは猫の名前の由来らしい。馬鹿じゃないのか。いや、馬鹿だったか。
「……別に理由なんかありませんけど」
「……嘘だ」
「なんでそう決め付けられるんです?」
理由あるに決まってる。けどそれを誰かにいうつもりなどない。だが目の前にいる彼はそれで帰るような人間だろうか。
ソファの上で押し倒されたのは油断していたからであって、じゃなきゃ彼が俺を押し倒せるわけが……ないはず。探るような目で俺を見つめてくる。
……似てるな。やっぱり。だけど、違う。いるわけもないのに、まだ俺はあの子の面影を何処かで探し求めている。
「だって……レイって呼んだ時、すごく優しい目をしてた。だから、大事な名前なのかなって……。べつに僕と同じ名前だから、気になったとか、変な想像はしてないから」
「……聞いてどうするんです?貴方にはなんの得もないと思いますけど」
「知りたいだけ。ただそれだけ。知りたいんだもん、良のこと……もっともっと知りたい。良の家の事だって知られてすごく嬉しかった。良に少し近付けたんじゃないかなって。……でも、まだ知らないこといっぱいあるし……だから、良に関係することなら、何でも知りたい。ただそれだけ」
そんなことをそんな真剣な顔して言われたら、言わなきゃいけない感じになるだろ。というか、俺の家の事を知って嬉しかっただけ?
「……怖いとかないんですか、貴方には」
「え?……あぁ、良の家?まぁ最初はびっくりしたけど、そのうち凄いなとか、嬉しさが勝ったけど」
信じられない。そういえば、確かにそれを知っても、俺を嫌う所かあまり変わらなかったな。……あの子も、レイも同じだった。
「……話せないなら話せないでも……」
「……レイ、というのはとある人から取ってつけた名前です。まぁ、あなたではないことは貴方もわってるでしょう」
「大事な人?」
「そうですね。一生忘れることなどできないほど、俺にとっては大事な人でした」
「でした?今もじゃないの?」
確かに今も大事であることに変わりはない。だが、もうおれはあの人を守ることも愛することもできない。
「その人……レイはもうおそらくこの世にはいません」
あの日を俺は一生忘れはしない。
次回は過去話になります。
相変わらず過去話の書き方が難しいですが
良介視点です。




