*24*
あまり、過去を思い出さないようにしてる。それは、昔の自分が嫌いになったから。思いだせるのは中2からだけど、その中2から高校に入って、良を好きになるまで僕は最低な人間だった。人の心をもてあそんで、いらなくなったり飽きたりしたら捨てた。もちろん男をだけど。多分、僕は誰一人としてその人たちに好意を抱いていなかった。
始まりはどこからわいたかわからない噂。檜山澪は尻軽だ。毎晩遊び歩いてるっていう噂。もちろんそんなのは文字通りの噂で、初恋は良だし、初キスは……思い出したくないけど変態野郎だし。それから先のことはまだ未体験だし。彼女がいたこともないし……。付き合ってた男は数知れずだけど。
多分相手は本気だったと思う。気を抜いてたら初体験なんかとっくに経験済みだった。あの頃は、埋めたかったんだと思う。なぜかとてつもなく寂しさが募って、誰かそばにいてほしかった。ただそばにいてくれるだけでよかった。親とかじゃなくて、そういうんじゃなくて……僕を愛してくれる人に傍にいてほしかったんだ。そして、そのたびにこの人じゃないって言って別れを告げてきた。
そのたびに、背中がうずく。ひりひりとした痛みすら感じる。
*** *** ***
ふと、目が覚める。まだ夜明け前なのか窓の外は暗いままだ。僕の横には、レイが丸くなって寝ていた。しばらく、その寝ている姿を眺める。
良を好きになって、もう誰かれ構わずつきあうのをやめた。その代わりぬいぐるみを抱いて寝るようになった。言っておくけど、付き合ってきた男と一緒のベットで寝るなんてことはしてない。でも、やっぱり寂しさはまだある。だから、それを紛らわすためにぬいぐるみを集めた。今一番気に入ってるのはあのひよこ。良って名前をつけたいけど、知られたら間違いなく怒られそうだからやめてるけど。でも、猫にレイってつけてるなら、いいかな。まぁ、レイが澪とは限らないけど。
まだ僕は良のことをあまり知らない。学校での良と、家が極道の家ってこと位しか知らない。過去のことはもちろん知らない。知りたいけど、多分いい顔はされない。家のことを僕に知られた時だって、殴りかかられたのを覚えてる。胸倉は掴まれた。あのときは本当に怖かった。
「そういえば……何であのとき、殴らなかったんだろう。殴られるって思ったのに、良こぶししまっちゃったんだよね……」
「んにゃ……ぁ?」
「あ、ごめん、起こしちゃった。おやすみ、レイ」
レイのきれいな毛並みをやさしくなで、レイが再び寝たのを見た後、僕もまた夢の中へと落ちた。
*** *** ***
どうしても眠れない夜なんか、久々だ。前は寝るなんてことができないほど、毎日気がたっていた。それを晴らすように、毎日無駄とも呼べるケンカに明け暮れた。親は別に何も言わないし、祖父はあんなだし。別に負けてくるわけじゃないからうるさく言うやつはいなかった。
空に浮かぶ、欠けた月を眺める。今日は三日月のようだ。
「いっそ、お前のそばに行けたら……」
冬の寒さすら忘れたかのように、俺は明け方まで縁側にいた。
次回、良介視点でお届けします。
いまだにどう進行させていこうか悩んでます。
突然変更とかするので……ご了承ください!!




