*16*
タイトル一新しました!
ですが相変わらずの内容です。
今回は初の試み。良介視点でお送りします。
聞き分けの悪い躾のなってない猫を相手にしている気分だ。まるで実家にいる飼い猫のようだ。
相手は人間なのだが。大体何故俺の部屋を占拠するかが理解できない。立て込もりなら自分の部屋でしてて欲しいものだ。寝不足なんだから、せめてトイレにでも篭ってていれば良いのに。トイレなんか隣にでも借りに行けば良いわけだし。
立て篭もり犯から逃れ、俺はソファに腰を下ろした。今に飽きて出てくるだろう。飽きっぽい性格なのは嫌でも知っている。むしろ俺の事も飽きれば良いものを。
「明日は……土曜日か……」
まさか、あのまま土日も立て篭もりを続けたりは……。
そんな不吉な考えが浮かび、一抹の不安にかられる。そして固く閉ざされたドアを見つめる。そういえば、やけに静かな気もする。……まさか……。
実は寝室の窓の鍵は閉まってない。さっき掃除のために換気して、まだそのままだった。掃除もようやく終わった。という時に、彼がやってきた。だからベランダからなら簡単に入り込める。ソファから立ち上がり、リビングからベランダにでる。もうすぐ日没。すっかり空は暗くなり始め、気温もそれに従い寒さを増していた。この時期に何でこんなことをしなきゃいけないんだか。そして、寝室の窓を開ける。鍵はあけっぱなしのままですんなりと開いた。そして中に入る。さっきまでいたはずのドアのところにその姿はなかった。不思議に思い、部屋中を見渡す。するとベッドに不自然なふくらみを見つけた。もしやと思い近づいて覗き込むと、案の定そこにいた。いつのまにか寝ていたらしく、こぼした涙そのままに枕をぬらしている。
やめてくれ、そんな顔するのは。
片手を顔のよこに静かにおき、そっと濡れた眼もとにもう一方の手で触れる。近づきたくなんかない。関わりたくない。貴方だけは何があっても、関わりを持ってはいけない。たとえあなたが俺を好きでも。俺はその気持ちにこたえてはいけない。
だがそれを、目の前にいる彼が妨げる。あの保健室の出来事が、まだ頭から離れない。なんてことないはず。俺にとってそれはただの出来事の一つでしかないはず。それなのに、何故動揺した。何故、こんなにも心音が早い?なんで今、寝ているのを起こさない?追い出さない?
わからない。どんなことでもそれなりに対処できる。あわてることなんか、最近ない。ただ、今寝ている彼が関わると、それは全く違ってくる。頭が停止しているかのように。何をすればいいのか。何をしたらいいのか。自分がなにを考えているのか。何もかも明確ではなくなる。あのときだって、正直何が何だか分からなかった。ただ、呼吸すら忘れた。
こんなに、間近でこの顔を眺めるのは初めてだ。遠巻きに見ることのほうが多い。きれいな顔をしていると思う。そして、何より……あの子を思い起こさせる。
『りょう!公園行こう!』
素直で、元気で、俺のそばから逃げなかったあの子。いつの間にか、俺もあの子から離れられなくなっていた。正直、この二人の顔が似ているかと言われたらわからない。比べることなんかできない。
ベッドで寝ていた彼が寝がえりをうち、仰向けになった。まだ目は覚まさないらしく、規則正しい寝息を立てている。その顔を見下ろしているうちに、俺はだんだん顔を近づけていっていた。唇と唇が触れ合うその手前で、俺は動きを止めた。今、俺は何をしようとしていたんだ。
我に返って、自分の行動に頭を抱えたくなった。ずるりと体を崩し、ベッドにもたれかかって床に座った。ひざを立てそこに肘をついて髪をかき上げる。
「まだ俺は、好きなんですね……忘れられない……。俺の中でまだ……れいは生きている」
乾いた笑いは、声すら出ず。ただ時計が時を刻む音だけが部屋で大きな音を出していた。
しゃべり口調は敬語なのに、内心?視点で書くとため口って言う……
素は丁寧じゃないってわけですね。
今回からいよいよこちらのオリジナルストーリーを展開させていきます。
(今までは夕日~を土台にしてましたから。)




