携帯電話
現在のゲ-ムセンタ-
「おお、凄いな…」
辺りを見回す佐藤
「眼がチカチカするだろ?」
「おう、目が痛い」
「俺も痛い」
笑い合う2人
「で、どうだ?実体化した感想は」
「何か…、しっくり来ないな」
「だろ?」
「だが、動けるな」
「じゃぁ、咲紀ちゃんに電話をかけるか」
カチャッ
電話を取り出す田中
「…」
そのまま、押し黙る
「どうしたんだ?早くしてくれ」
「どうやって、かけるんだっけ…?」
「はぁ!?知らないのか!?」
「…知らない」
「意味ないじゃん…」
「誰かに聞こうか?」
「そうしようぜ」
「すいませ-ん」
「はい?」
田中が、通りすがりの女性を呼び止める
「この携帯、どうやって使うんですか?」
「え…、知らないんですか?」
「お恥ずかしい話で…」
「今時、珍しいですね」
優しく笑う女性
「私、携帯会社に勤めてるんです」
「そうなんですか」
「よろしければ、来てくださいませんか?使い方も教えますよ」
「ど、どうしよう?佐藤」
「行けばいいじゃないか!話が進まないからな」
「そうだな…」
「それじゃ、行きましょう」
現在の携帯電話ショップ
「ここは?」
「アナタが持ってるMTLと言う携帯会社のショップですよ」
「おい、田中」
「何だ?佐藤」
「ここ、もの凄い電波だぞ!!」
「それが?」
「ここまで凄いと、俺達に有害じゃないのか?」
「た、確かに…」
「どうしたんですか?」
「い、いえ、実は…」
「ちょっと!真希ちゃん!!」
店の中から、見るからにきつそうな女性が出てくる
「仕事サボって、何処に行ってるの!?」
「あ、店長…」
「あら?お客様?」
「は、はい!そうです」
「真希さん、店の中に行きましょう」
「え?」
真希の肩に優しく手を置く佐藤
「バラが、バラが俺を待っていますから」
「佐藤!?」
「俺の好みだ」
「気の強い年上…、あの人か!!」
「さぁ!電波が何のその!!俺の愛は全てを凌駕する!!」
店の中に入っていく佐藤
「…変わった人ですね」
「そう思います?」
「はい…」
「俺も、そう思います」
ウィ-ン
店の自動ドアが開き、田中達を迎える
「お客様、携帯の使い方が解らないんですか?」
「は、はい…」
「でしたら、携帯を出してください」
「わ、解りました」
携帯を出す田中
「…!!」
真希が目を大きく見開く
「これって…!!店長!!」
「何なの?真希ちゃん」
「コレを見てください!!」
「もう!お客様の前で大声は…」
押し黙り、携帯を目視する店長
「…お客様をVIPル-ムにご案内しなさい!!」
「はい!!」
慌ただしく動き出す店内
「…どういう事だ?佐藤」
「俺が知るか」
「お客様!我が店の店員が失礼いたしました!!」
「はい?」
「VIPル-ムへご案内----!!」
ザザザザザ!!
「レッドカ-ペット!?」
「何したんだ?田中」
「何もしてないよ!!」
「ささ!どうぞ、こちらへ!!」
「は、はい…」
現在のVIPル-ム
「お客様!ワインでございます!!」
トクトク…
田中の持ったグラスにワインがつぎ込まれる
「…どういう事?マジで」
「あ!俺、聞いたことがあるぜ」
「何を?」
「優しく接する女性に夢中で、品物を頼みまくり、後で凄い金額を要求されるんだよ!!」
「悪徳商法じゃないか!!」
「そうだ!それが、この店なんだよ!!」
「何を仰いますやら、お客様」
「悪徳商法!?」
「いえいえ!アナタ様方は、まさにVIP!!」
「ど、どうして…」
「その携帯は世界最高峰モデル、「ゴットズMTL」!!」
「「ゴットズMTL?」
「この携帯を持つと言うことは、世界の携帯所持者の神に等しいのです!!」
「はい?」
「よって!VIP待遇は当たり前!!携帯界の神ですから!!」
「…何、言ってるんだ?この人」
「俺には解らないな」
「とりあえず、使い方を…」
「はい!お任せくださいませ!!」
パンパン!!
手を叩く店長
「真希ちゃん!お客様に、ご使用方法を!!」
「は、はい!!」
ぎこちなく歩いてくる真希
「よ、よろしくお願いいたします!お客様!!」
「…普通で良いよ」
「そ、その様な失礼なことは!!」
「いや、携帯を持ってるだけだから」
苦笑する田中
「俺のじゃないし」
「え!?そうなのでござますか!?」
「うん、預かってるだけなんだよ、彼女から」
「そうでございましたか…」
「しかぁ-し!!」
店長が横から出て行く
「彼女様であろうと彼氏様であろうと!神に違いはございません!!VIP待遇は当たり前なのです!!」
「そ、その通りでございます!!」
それに賛同する真希
「…なぁ、田中」
「…何だ?佐藤」
「人間界って、面白いな」
「お前もそう思う?」
「うん、そう思う」
大きくため息をつく2人であった
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