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王子様が嫉妬しているようです。②

 私はフィンを見上げ、小さく息をのむ。


「も、もう、ごめんなさい。私が無神経だったわ。……どう謝ったら許してくれる?」

「……。そこまで嫉妬させたのならさ、これまで、他の男子との関係、何があったのか全部教えてよ」


 フィンは目を伏せ、少し怒ったようにそう言った。


「教えるって……全部は流石に覚えてないわ」

「別にいいよ。言わなくて。ルナフィアの身体に聞くから」

「!?」


 まるで乙女ゲームのようなことを言い出したフィンに、思わず少し身構える。

 フィンはゆっくりとした動作で手袋をそっと外し、私に手のひらを見せた。


「……君の心に聞くから。使わせて。接続(コネクト)


 その一言に、呼吸が止まる。

 フィンがゆっくりと手袋を外し、白く整った指先を私の頬へと伸ばす。

 触れるか触れないかの距離。


「……駄目?」


 どこか、熱を帯びた声。

 フィンにしては珍しい、余裕のない声だった。


「……こういう魔法って、あんまり他人に使っちゃいけないんじゃないの?」

「ソリオには毎朝触れてるくせに……」

「ソリオは義弟じゃない!」

「……本当に? ルナフィアはともかく、ソリオの方はそう思ってない気がするけど」


 心臓がどきりと脈打った。

 その通りだ。私は、"駄目"……とははっきりと言えない。

 だって、私、普段からソリオにベタベタ触っているんだもの。

 今更心を読まれるのが嫌だとか、言う権利がない気がする。


「無理強いしないよ。俺、ルナフィアが本当にしてほしくないことはしない。"愛のない政略結婚"だしね」


 少し皮肉っぽく紡がれたその言葉に、思わず悲しくなった。


「うう……違うの。最近、人とプライベートなやり取りがあったの。それを思い出しちゃうかもしれないから……。覗いたら、分かっちゃう、でしょ?」

「男の人と?」

「……」

「知る権利、ないかなあ。俺」


 そう言われると、何も言い返せない。

 思えば私は、婚約者(フィン)に言えないことばかりしている気がする。


「俺の接続(コネクト)は微弱だから……ソリオみたいに、全部まるっとお見通しってわけじゃないよ。ちょっと嘘や、心象風景が見えるくらい。他人の会話内容なんてちっともわからない」

「……」

「触っていいなら、君から触れてよ」


 私は思わず後ずさりそうになって──結局目を閉じる。

 そして、そっと、彼の手を握り、私の頬に触れさせた。


「!」


 フィンの瞳が大きく開かれ、逃さないとでも言いたげに、すぐにその手が頬を両側から包み込んだ。

 彼はそのまま、優しい微笑を浮かべて──。


「──"接続(コネクト)"」


 深い青の魔法陣が、彼の指先から浮かび上がる。

 私の内側に、フィンの魔力が、静かに流れ込んでくるのが分かる。

 温かな魔力が、じわじわと私の身体を流れる。


「あ、あの……」

「教えて、ルナフィア。俺のことって……まったく意識してないの? 恋愛対象として」

「そ、それはずるい! 質問が! ずるいわよ!」

「だって……ルナフィアが他人のプライベートなことは、思い浮かべないようにしないと」

「ううう……」


 熱っぽい視線に射抜かれて、私は何も言えなくなった。

 フィンを異性として意識してないか──そんなことは、ない。

 美しい顔。温和で優しい性格。少しいたずらっぽいところ。素直に思いを伝えてくれること。

 私はフィンと恋をしようとは思わない。

 だけど、──異性として全く意識しないなんて無理だ。

 私にその気がないのなら、勘違いしても、お互いに困るだけ。


(そういう対象だと思ってない、そういう対象だと思ってない、そういう対象だと思ってない! こう伝われ、伝われ──!)


  そういくら考えても、私の中にある“気持ち”はもう、はっきりしてしまった。


「──へぇ。意識してないわけじゃ……ないんだ」

「な、なんで読み上げるの!? やめてってば!」

「心の中で言うだけなら誤魔化せる、って思った?」

「だってぇぇぇ!」


 フィンは、ふっと笑って──私の頬を、つまむ。


「だーめ。出し抜こうとしちゃ。正直に答える癖をつけて」

「う、うぅぅ……」


 フィンは毒気を抜かれたようにため息をついた。


「次。──君が昨日、話したのって……アストリス? それともシリウス?」

「あ、……アストリス……だけど……」

「……! ……そう。二人の会話内容を聞く気はないよ。一旦離すね」


 そう言って、彼の手が離れる。

 頬に残る余熱が、私の胸をじんわり焦がす。

 心臓がドキドキと鳴っている。


「ねぇ、ルナフィア──」

「な、なに……?」

「……アストリスと、“添い寝した”って……本当?」

「そ、それ、見えるの!?」


 私は思わず一歩、詰め寄ってしまった。

 フィンはむくれたような顔で、小さく呟いた。


「……聞く気なかったけど……見えちゃったから、仕方ないよね?」



ストックがなくなったため、一度2章完結まで書いてからまた更新再開します! よろしくお願いします!✨

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