表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/65

賭けましょう。①

 シリウスとアストリスが、こそこそと会話している。


「……ガチャ?」

「貴族がやってる賭け遊び。知らない? 宝石を買って、それをくじに換えるんだよ」

「……? なぜ宝石を?」

「現金をそのまま使うのは違法だから。“景品”を経由すればグレーゾーンってわけ」

「なるほど……。──それって本当に当たり、入っているんですか?」


 その瞬間、横からひょいと声が割って入る。


「あはっ、気になる? 入ってないよ〜。だって、遠隔操作されてるもん!」


 レオ・グランヴェルだった。

 満面の笑みで、悪びれもせずに話に加わってくる。

 アストリスが眉をひそめて低く言った。


「……話に入ってくんなし。てか、それならやらない方がいいよ」


 紡がれた言葉は、アストリスにしては珍しく正論だった。


「あは。欲しいものほど手に入らないんだよね。

 “物欲センサー”って言ってさ。絶対確率なんて信用できない。きっと魔法で操作されてるんだよ〜、ぜったいに!

 ──シリウス・スノーホワイトだよね? 興味あるかい?」

「え、今の話を聞いて興味が湧くと……?」

「え、湧いた!?」

「あ、申し訳ございません、はっきり言わなくて……。湧いてません」

「なんだ湧いてないのかぁ」


(……れ、レオって、こんな人だったっけ?)


 胸の奥に、既視感のような違和感がじわりと広がる。もう何度も、この感覚を味わっている気がする。ゲームの登場人物はみんなどこかズレているのだ。


 原作のレオも、確かに似たようなことはしていた。

 でも、それは“魔法使いへの恨み”から来る冷笑だったはず。

 目の前の彼は──もっと軽くて、もっと無邪気な感じだ。


(……ヴェルノクの病も、ソリオ曰く、私の小さな思いつきで収まったって言ってたし……。レオのお母さんも無事だったって聞いた)


「──あの、レオって、ソリオの同室なんだよね? 私、あの子の姉のルナフィア・セレシア」

「ん? ああ、君が……。試験の日会ったよね」


 レオは目を細めて、軽く口笛を吹いた。


「へー、お姉さん、全然ソリオと似てないね。血、繋がってないんだっけ?」

「そうね」

「顔かわいいもんね。ソリオも過保護になるわけだぁ。お姉さんの方から、『レオくんは私を襲ったりしないから』って言っといてよ」


(ソリオ……一体なにを吹き込んでるの!?)


 頭を抱えたくなる。あの弟、やっぱり油断ならない。

 私は小さく息を吐いて、少しだけ笑った。


「……はぁ。じゃあ、ねえレオ。せっかく出会ったんだし、仲良くしない?」

「するする。仲良くするよ。

 ──ひと勝負、終わったらね?」


 レオはにっこりと笑い、人差し指を立てた。


「皆は魔法属性のレア度って知ってる?」

「そんなものあるの?」

「希少度の高い順番で、記憶魔法、精神魔法、光魔法──ですね。

 珍しいだけで、どれが強いとか、そういうのは特にありませんけれど」


 私の疑問に、シリウスが答える。


「そう。その宝箱の解錠条件にはレア魔法が3つ入ってるんだよ。激アツだと思わない? 俺、ずっとその条件で開く宝箱を探してたんだよ」

「"激アツ"ってなんですか?」

「縁起がいいってこと!」


 レオは笑顔で人差し指をシリウスに向ける。シリウスは少しびくりとしてから、そっと私の後ろに隠れた。アストリスは納得した様子で呟いた。


「ま、レアな宝箱は簡単に開けられたくないだろうし、解錠条件が厳しくてもおかしくはないか。

 ……ははーん。あんた、要は賞品を独占したいわけだぁ。それで鼻つまみ物の俺たちに声をかけたと」

「そう! 大当たりの内容は、ウワサによると食堂無料券1年分だとか、金一封だとか、貴重な魔石のアクセサリーだとか……それが4人分だよ?」


「──食堂無料券1年分……?」

「──金一封……?」


 二人が割と真剣な声で反応した。なんで私の知り合いってこう、みんな欲望に忠実なんだろう。

 私は慌てて笑顔を取り繕って言った。


「ねえ、それ、みんなで分け合った方が良くない……? 私、争いになるの嫌よ」

「甘いねルナフィア! 1つでも嬉しいものが4倍貰えるんだよ? 賭けるしかなくない?」

「その考え方私にはよく分からないなぁ!?」

「ルナフィア、俺、在学中の三年分あればいいから、一年分はいらないよ。だから手伝ってよ。

 ……なんだっけ? "決闘"で決めるんだっけ?」

「嫌よ! 教室黒焦げになるじゃない!」

「わたくしは……学園生活については、元々旦那様にお金を出していただいていますし……現金以外ならいりませんけど……お嬢様は?」


 シリウスは私を伺うように目線をこちらにやった。私は辟易としながら答える。


「なんでもいいわ。というかいらないわ! 私、恨みっこなしがいい……普通に仲良くしたい……!」

「じゃあそうしましょう。お嬢様か、もしくはわたくしが勝ったら全員に賞品を分配します。それで構いませんか? 授業時間も残り少ないですし……」

「シリウス……!」


 シリウスの言葉に感動していると、レオが少しつまらなさそうに言う。


「別にいいけどさぁ。リスクが少なくてイマイチ燃えないかな」

「じゃあ……レオ様。負けたら一年間お嬢様の"奴隷"に……いえ、お友達になってください」

「シリウス!?」

「いいね! 楽しそう! じゃあ俺が負けたらルナフィアの奴隷兼友達になろうじゃないか!」

「ああっ、私の友達になることを罰ゲームみたいに言わないでほしいなぁ!?」

「だったら俺も追加注文! ──俺に負けたらさ、ルナフィア。俺とデートしてよ」

「え?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ