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6.差し出された手

 



 やっと来てくれた。


 ずっと待っていたの。


 ずっとずっと、長い時間待っていたの。


 あの部屋でずっと。


 きっと来てくれると思ってた。


 どうして私を一人にしたの?


 もう独りぼっちは嫌。


 絶対離れないから。


 ずっと一緒にいてね。


 でないと…。




 胸が締め付けられる様な深い感情に揺さぶられ、苦い苦しみを感じた途端、晶は夢から目覚めた。



 心臓は暴れるように鳴っていて、まるで全力疾走でもしたかのように全身に汗が滲んでいる。


 (―――今のは、何の夢?)


 さっきまで見ていたはずなのに、よく思い出せない。ただ、切ないような、苦しいようなやりきれない思いが残滓となって今だにその心を揺さぶっている。


 そしてふと、前にも似たような夢を見たことがある様な、そんな気がした。


 いつ見た夢なのか思い出そうと視線を上げると、晶は自分が見ている天井が、いつものオンボロアパートのものとは違っていることに気が付いた。


 やけに天井が高い。おまけに透明なクリスタルがいくつも天井で煌めいて、部屋を明るく彩っている。


 「わぁ…綺麗…。じゃなくて、ここどこ!?」


 急いでベッドの上に起き上がると、そこは見たこともない部屋だった。


 室内を見回すと、大きな窓らしき場所には深緑色の重厚なカーテンが引かれ、部屋の内装は、蔦の柄入りの薄いグリーンの壁紙とチャコールグレーの絨毯という落ち着いた色合いの組み合わせ。部屋の隅にはアンティーク風の小さな机があり、その上に小さくて可愛いらしい白い花が繊細な花瓶に活けてある。


 すぐ横にはもう一つ空のベッドが置かれていて、晶が寝ていたのも同じく高級ホテルにでも置いてありそうな豪華な作りだ。


 一体ここは何処なのか?そう考え始めた途端にぐらりと視界が揺らぎ、晶は片手で額を庇って俯いた。


 あまりの気分の悪さに、晶は再びベッドに仰向けに寝ころぶ。その反動でベッドが大きく波打った。晶が横になったベッドはかなりフカフカで、しかも晶が大の字になってもまだ余裕がありそうなくらい広々としている。


 まるで19世紀の英国貴族の世界にでもタイムスリップしたかような部屋の様子に、晶の頭は混乱を極めた。


 「まさか、これも夢?」


 独り言のように呟いた時、小さくドアをノックする音が聞こえた。


 驚いてドアの方を振り向くと、ドアを開けて入ってきた人物に晶は目を丸くする。


 「おや、お気づきでしたか。ご気分はどうです?」


 そう言って入ってきたのは、ダークグレーのスーツを品よく着こなし、ロマンスグレーの髪を綺麗に撫で付けて穏やかな笑みを湛えた紳士だった。手に水差しとコップを乗せたトレイを持っている。


 「…えっ、き、昨日の!?」


 晶はベッドから飛び起き、まじまじとその紳士を見つめる。目の前に立つ彼は、先日晶に傘を貸してくれた男性その人だった。


 どうして彼が今晶の目の前にいるのだろう。この状況に理解が追いつかず、晶は再び目眩を覚える。晶の頭はこれ以上ないほど混乱していた。


 そんな晶の様子を見て、彼は眉尻を下げて微笑みながら、持っていたトレイをテーブルに置いた。そしてベッドに近づくと、折り目正しくお辞儀をする。


 「まだ名乗っておりませんでしたね。私はこの家の執事をしております堀越という者です。どうぞお見知りおきを」


 「…ヒツジ?」


 聞き慣れない言葉に、晶の思考が一時停止する。


 ヒツジとはもしかして、執事のことだろうか?あの英国貴族の家とかにいる?やはり自分はタイムスリップして英国貴族の館にでも迷い込んだのだろうか。


 「執事って…?というかここは何処なんですか??」


 「驚かれるのも無理はありませんね。私の主人が、再び倒れた静野様の容体を非常に心配しておりまして、誠に勝手ながら当家にお連れした次第です」


 「…主人?当家??」


 ますます訳が分からず、晶の頭の中は疑問符で埋めつくされようとしていた。そこに再びノックの音が聞こえる。


 堀越と名乗った彼がドアの方に返事をすると、入ってきたのは何と香月青年だった。


 晶は香月の登場に驚くと同時に、彼のいでたちに釘付けになってしまった。


 香月は出会った時のジャケット姿とは違い、今は洒落たデザインの白いシャツを着ているが、その胸元のボタンを少し開けて程よく着崩していた。


 そのちらりと覗く綺麗な鎖骨と首筋に、何だかいけないものを見てしまったような、小娘には刺激が強すぎるのではないかと思うほどの色気がある。


 見惚れていた晶は、その溢れ出る色香に当てられて今度は目のやり場に困ってしまった。


 (何だろう…美しいものを見ているはずなのに直視出来ない…。せめてシャツのボタンをちゃんと留めてほしい…)


 そこまで大胆に開いているわけではないが、その微妙な加減が却って目に毒だ。目線を泳がせまともに目を合わせられないでいる晶の様子にはまったく気付かず、彼は起き上がっていた晶の姿を見るなり安堵したように息をついた。


 「気が付いたんだね。気分はどう?」


 「は、は、はい!大丈夫です!…もしかして、私はまたご迷惑をおかけしてしまったのでしょうか?」


 恐縮している晶に、香月青年は穏やかな声で言った。


 「いや、体調が悪い君を連れ回してしまったこちらに非がある。申し訳なかった」


 「いえ!そんな…」


 慌てて返事をした拍子に、ついその美しい顔を直視してしまった。胸の鼓動を抑えるため無意識に胸に手を当てて晶は平静を装う。


 (うう…美しい…!それに綺麗な瞳がキラキラしてる…この人本当に心臓に悪いわ…)


 過度な美しさも目に毒だなんて知らなかった。そんなことを思う晶の気も知るよしのない香月は、そのまま晶のいるベッドに近づいてくる。すると、堀越が近くにあった椅子を引いた。香月は当然の様にそこに腰を下ろし、長い脚を優雅に組んで肘掛けに肘を付いた。堀越は後ろに下がると笑顔で一礼して部屋から出て行ってしまう。


 その様子を見ていた晶は、不思議に思って首を捻った。


 「あの、堀越さんと香月さんはどんなご関係なんですか?」


 「そういえば、堀越とは初対面じゃなかったんだね。そうだな…簡単に言えば、主従関係ってやつかな」


 「主従関係?」


 今の時代に聞き慣れない言葉を耳にして、少し戸惑う。つい、中世の騎士が王様に忠誠を誓うような場面を想像してしまった。或いは武士社会のアレだ。


 「主従って…まさか、香月さんの方が堀越さんのご主人様?」


 「そういうこと」


 穏やかな顔に微笑を浮かべたまま、何でもないことのように答える香月に、晶は驚愕の目を向ける。


 (この人…一体何者なんだろう?)


 霊能者でイケメンで、ロマンスグレーの紳士を従える若いご主人様?そんな設定、今まで読んだ漫画や小説の中でだってお目にかかったことがない。


 自分の想像を遥かに超えてきた存在を、晶は改めてまじまじと見つめた。


 (世の中には、色んな人がいるんだなぁ…)


 今まで生きてきた自分の世界がいかに小さいものだったのかがわかる。しみじみと思っていると、香月が話を切り出した。


 「ところで、また君は気を失ってしまった訳だけど、その時何が起こったか思い出せる?」


 そうだったと、晶は自分が置かれている状況を思い出した。再び申し訳ない気持ちでいっぱいになるが、迷惑をかけた分何とか力になりたい。晶はその時のことを正確に思い出そうと懸命に記憶を手繰り寄せる。


 しかし、思い出そうとすればするほど何か靄がかかったように、何処までが現実だったのかはっきりとは思い出せない。


 「確か、迎えの車が来た時ですよね?…雨が降ってきて、傘を差したところまでは覚えてます。けど、あの時から急に体調が悪くなって…その後から、よく覚えていません」


 まるで役に立たない自分の記憶に恐縮していると、香月は顎に手を当てて考えるような仕草をした。


 「そう…。実はその後、車から堀越が出てきたんだけど、その時君は急に『お父さん』って叫んだんだ」


 ―――え?


 晶には全く身に覚えがなかった。堀越氏は雰囲気こそ父に似たものがあるが、顔かたちや背格好は父とは全く別人だ。


 「どうしてそんなこと言ったんだろう…」


 全くの他人を父親呼ばわりするなんて、自分はどうかしてしまったのだろうか。


 首を捻る晶の様子を香月は静かな眼差しで見つめていたが、やがて、徐ろにこう切り出した。


 「それはわからないけど…、一つだけわかることがある。君は、どうやらあの部屋の霊に取り憑かれてしまったようだね」



 「…へっ?」



 あまりに唐突な発言に、晶の頭は思考を停止した。


 今、何と言った?霊に捕り憑かれてる?私が?


 「そ、それって、どういうことですか⁉」


 停止した脳を無理やり再起させて、晶は香月の発言の意味を考える。あの部屋の霊というと、あの思い出すことを全身が拒否するほど恐ろしいアレのことだろうか。


 その事実を想像しただけでも身の毛がよだち、晶は顔が真っ青になった。


 「体が勝手に動いたり、今まで見えなかったものが見えたり、これまでの君に起こったことを考えるとその可能性が非常に高いんだ」


 香月は、晶をこれ以上混乱させないようにか、ゆっくりと落ち着いた声で話し始めた。


 「それに…実は今までのあの悪霊の被害者に起こった事故は、君に起こったことと類似することが多いんだ。―――その類似点の一つが、自ら死のうとするところ」


 香月の言葉に、晶の背筋がゾクリと冷たくなる。


 「…自ら…それって、自殺…ってことですか?」


 恐る恐る確認すると、少し眉を顰め難しい顔をしていた香月は軽く頷き、長い脚を組み替えた。


 「そう。あの部屋に関わった女性は、死んでいてもおかしくないような重大な事故に巻き込まれているケースが多い。そしてその女性達は大体が、事故に巻き込まれる直前に情緒が不安定になって、身体が勝手に動いたと証言している」


 「身体が勝手に…?」


 言われてみると、確かにあの時赤信号を無視して車道に飛び出そうとしたが、それが自分の意思だとは思えなかった。身に覚えがある以上、冗談とは流せない。晶は眩暈を覚えて片手で額を覆う。


 「…確かに、車道に飛び出そうとしたあの時は、自分の意思とは関係なく勝手に身体が動いた感じがしました。…それに、香月さんに助けてもらうまで何故かとっても不安でいっぱいになってて…」


 そう言って俯いた晶は、自分を冷静に見つめる彼の視線には気付いていない。


 「…もしかして、自殺のことが頭を過った?」


 話していない心の内を言い当てられて、晶は思わずびくっと肩を揺らす。


 「そ…そうですね、あの時はほんの少しだけ考えてました。でも、本気で思ってたわけじゃないですよ?」


 そう言って苦笑いで誤魔化した晶だったが、もう何度も父親の元に行ってしまおうかと考えたことがあるのは事実だった。


 人と関わるとこで少しでも楽しかったり、嬉しいと思うことがあると、独りになったときにその落差に毎回苦しむ。恋人や友達を作ったところで、その関係が永遠に続く保証はないし、相手がもし自分より先に逝ってしまえば、またこの苦しみが繰り返されるのかと思うと、晶は想像するだけで耐えられなかった。


 その苦しみから解放されるためには、もう人との関わりに喜びを見出さないように極力関わらないようにするか、この世から去ることだと思い始めていた。


 しかし、晶は今のところ本気で行動に移すつもりはなかった。


 (それなのに…)


 「うん。それがこの霊の特徴。捕り憑いた人間、主に女性をその気にさせて自殺に追いやろうとする。君はとても厄介な悪霊に捕り憑かれてしまったようだ」


 「…噓でしょ…」


 冗談じゃない。あんなモノが自分の中にいるなんて想像しただけでも気味が悪いし、それに理由も分からないまま殺されそうになっているなんて。晶は途方に暮れて自分の顔を両手で覆った。


 「そんな…一体どうすればいいの…?」


 自分は悪霊に取り憑かれたこともなければ、退治したこともない。そもそも霊を見たのだって昨日がはじめてだ。


 一体自分が何をしたというのだろうか?父親との死別から、慎ましく独りで生きてきた。それなのに、住んでるアパートは追い出される寸前で、訳の分からない悪霊には取り殺されそうになる。


 こんな仕打ちがあるだろうか?この世に神様なんていないのだろうか。晶は自分の不運を嘆き、本当に泣きたくなった。


 「―――そこで提案なんだけど、静野晶さん」


 涙こそ何とか堪えていたが、鬱々とマイナス思考に沈んでいた晶に、香月が口調を改めて切り出した。


 「君に、僕の悪霊退治のパートナーを努めてもらいたいと思っているのだけど、どうだろう?」


 「…へっ?」


 予想もしていない発言に、晶は勢いよく顔を上げ香月をまじまじと見つめる。そして、彼が言った台詞を頭の中でもう一度反芻してみた。悪霊退治のパートナー?どういうことだろう?


 「パートナー…って?」


 「つまり、幽霊退治に協力してほしい」


 そう言って香月は椅子から立ち上がり、室内をゆっくりと歩き始める。


 「この悪霊は、その場、つまり今回の場合あのマンションの部屋だけど、そこを清めても効果がなかった。つまり、捕り憑いた人間を介した除霊をしないといけないらしい。だから、今回のターゲットである君に協力してもらわないと、この霊を退治することは難しいようなんだ」


 そういうものなのか。晶はよくわからなかったが、場の雰囲気に呑まれて軽く頷いた。


 香月は晶のベッドの傍まで来ると、その端に腰かけ長い足を優雅に組む。そして体を寄せるようにして晶の肩に軽く手を乗せ、魅惑的な笑みを浮かべた。それにつられるように彼の顔を見ると、その美しくも取り込まれそうな深い瑠璃色の瞳が間近に迫る。


 「君も、このまま訳の分からない霊に取り殺されてはたまらないよね?」


 耳元で極上の低い声色で囁かれ、痺れる様な震えが全身に伝わる。


 ただでさえ直視するのを躊躇われるほどの美青年だ。肩に触れられて耳元で甘く囁かれるなんて、普通なら瞬殺ものだろう。


 でもそれは内容が半分脅しを含んでいなければの話。美青年に甘い声色で脅されるなんて、かなりの迫力である。晶はどちらに震えたのか自分でも判断ができなかった。


 「そっ…それはそうですが、私なんかがお役に立てるとは思えませんよ?」


 彼の雰囲気に圧倒され、恐々そう言うと、彼は綺麗な笑顔で首を横に振った。


 「実は八方ふさがりだったところに光明が見えて、こちらも助かったんだ。それに人手不足だったしね。もちろんそれなりの報酬も身の安全も約束する。君にとっては悪い話ではないと思うんだけど?」


 確かに考えてみれば、晶にとってもそれしか助かる道はなさそうだった。自分ではどうにもできない相手に立ち向かう方法など皆目見当もつかないし、何より『サイキック・アドバイザー』なる職業を謳っているこの道のプロである香月の近くにいた方が、早期解決の近道になる。それに、いつ何時も死の危険が自分に降りかかるなんて怖すぎるし、そんな時に頼れる誰かがいてくれたほうが良いに決まっている。


 事故に見せかけた悪霊による殺人の被害者なんて、そんな不毛な死に方は、死んでも願い下げである。それに報酬はとてもありがたい。こんな状態ではまともに外にも出られないと思っていたので、バイトに行けない分、少しでも生活の足しになれば大助かりだ。


 晶は同意を込めてしっかりと頷いた。


 「…わかりました!引き受けさせていただきます。でも、実際にパートナーって何をすればいいんですか?」


  晶は純粋な疑問を口にする。幽霊退治の相方なんて実際何をすれば良いのか想像すら出来ない。


 すると香月は、その細い指を顎にあて思案するそぶりを見せた。そんな仕草一つ取っても絵になるからたまらない。晶が密かに見惚れていると、徐ろに香月が口を開いた。


 「…そうだな、その計画もこれから考えていこうと思っているけど…」


 そう言って再び立ち上がり、体を屈めて晶を覗き込むように顔を近づけた香月は、悪霊も裸足で逃げ出すような天使の微笑みを浮かべて言った。


 「まずは、この家で一緒に生活しようか」


 「…はぃ??」


 何を言われたのかすぐには理解できず、晶は彼を見たままポカンとする。


 そして、徐々にその意味を理解し、目を白黒させて狼狽えた。


 「一緒に生活って…じ、冗談ですよね?」


 今度こそ揶揄われているのでは。そう思ったが、彼の方は本気か冗談か判別できない微笑みを浮かべたままだ。


 「もちろん本気の提案だよ。このまま君を独りにしていては、いつ悪霊に殺されるか分からないし、それならボディーガードが必要だ。僕がパートナーとして君を危険から守るナイトの役目を果たすよ」


 そう言って香月は自然に晶の手を取ると、自分の口元まで引き寄せた。彼が何をしようとしているのかわからない晶は、そのままポカンと成り行きを見守る。


 次の瞬間、香月が晶の手の甲に唇を軽く押し当てた。


 まるでおとぎ話に出てくる王子のような仕草を目の当たりにして、晶は頭の天辺からマグマが噴き出したかのように顔に血が昇って真っ赤になった。そして次第に顔と言わず全身の隅々まで真っ赤に染まる。


 「なっ、なっ、ななななにを…」


 蚊の鳴くような声でそう言ったままカチコチに固まる晶の様子に、当の王子はニコリと邪気のない笑顔を向ける。


 (キ、キ、キス!!!手の甲に!!)


 取られた右手が熱を持つ。人生経験の少ない小娘である晶は、王子を前にただ固まるだけでどうすることもできない。真っ赤になったであろう自分の顔を隠すように、ぎこちなく俯くのが精一杯だ。


 (危険から守るって…私は姫か!そんなガラじゃ無いっての!)


 晶は自分に突っ込みを入れて、舞い上がりそうになる心をどうにか抑え込んだ。


 深呼吸をしながら、冷静さを取り戻すため彼の提案したことについて考えてみる。確かにこのままではいつ死の危険が訪れるかもわからないし、アパートで孤独死も洒落にならない。晶もできることなら早急にこの悪霊から解放されたい。


 そう考えると、彼の提案は今の自分にとってとても有難い申し出だと思えた。


  (それに―――)


 「僕の提案、受けてみませんか?」


 香月は晶の手を取ったまま、微笑みながらじっとこちらを見つめてくる。


 それを見て晶は真っ赤な顔のまま一瞬たじろいだ。しかし、思い直して覚悟を決め、香月を見返す。


 「…はい。宜しく、お願いします」










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