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立てば芍薬座れば牡丹歩く姿はケシの花

今日も私達Revi部は部室にだらだらとたむろしていた。

普段はやることがあまりないという割と深刻な状況なんだが。

そんな時、あや先輩が勢いよくドアを開けて入ってきた。


「やったにゃ!! みんな、今回は校内美化運動の一環で、お花を育てることになりました!! ゴミ拾いと同じくらい地味だけど、地道な活動は実を結ぶと思うんだ!!」


彩先輩はポジティブだなぁ。陰キャにはまぶしすぎるぜ。

爪のあかせんじて飲む気力もねぇな。

先輩の持ってきたチャンスだが、Revi部の反応はいまいちだった。


「花は嫌いではないが、こだわりがあるわけでもない。力仕事でしか役に立たんと思うぞ」


あ〜、なぎさ先輩は花贈ってもあんまよろこばねぇタイプだな。

思い込み男性キラーじゃんよ。

多分、知里子先輩も似たようなもんだろ。


「植物も生物学の範囲だから、育てる自信はあるよ。でもデザインセンスは無いから……」


ほれーみろー。そんなこったろうよ。

翼先輩はどうだろうか。意外と乙女だったりしてな。


「花ァ? そんなもん食えもしないだろ。腹の足しにもなんないよ」


すっげードライだな。翼先輩は興味あるもの以外はそんなもんらしい。

彩先輩がこっちに振ってきた。


「愛ちんはどう? お花育てるのは?」


自分としてはなぎさ先輩と翼先輩を足して2で割ったようなスタンスだ。

要するに、あまり興味がない。


「じゃあ、櫻子さくらこちん頼みだね。今日は久しぶりに屋上かなぁ……」


屋上? あそこカギかかってて出られないんじゃなかったか?

彩先輩は不思議そうに思う私に目をやってきた。


「そっか。愛ちんはまだ知らなかったね。前は屋上が園芸部の活動場所だったんだ。ヤバい不祥事ふしょうじで廃部する前は……ね。せっかくだし、愛ちんも見に行ってみてよ」


先輩にそう言われたら断るわけにも行かない。

けんども私、櫻子さくらこ先輩、ニガテなんだよなぁ。

言動が本気か冗談かわからないし、つかみどころもない。


何を考えてるかわかんねぇし、本当にヤバい植物を育ててそう。こわい。

しかも誰もそれに関して否定しないだもん。

個人的には部の暗部だと思っている。


気が乗らないまま屋上の扉の前に着いた。


あ〜うわぁ〜行きたくねぇ〜〜。


渋々ドアを開けるとそこには花畑が広がっていた。


「ほあぁ………」


あまりの美しさにため息が漏れた。

聞き耳を立てるとなにかつぶやいているのが聞こえてきた。


「仲のいい仲間にかこまれて、お花畑を作り始めました。でも、仲間はいなくなってしまいました。かなしいかなしい。かなしいかなしい。あまりにも泣きすぎて泣くことを忘れてしまいました。心が壊れて……だからいつもニコニコ笑っているのです」


なんだかとても悲しい話をしている。


「もしかしたら仲間が戻ってくるかもしれない。そう信じて花畑を作り直したのですが、だぁれも戻ってきません。新しい仲間ができましたが、また同じ思いをしたくない。だから新しい仲間と距離を置こうと狂人の仮面を被ったのです……」


間違いない。これは櫻子さくらこ先輩の自白だ!!

いつもニコニコ笑っているのも、変人に見えるのも全部、わざと理由があってのことなんだ!!

思わず私は背後から先輩に声をかけた。


櫻子さくらこ先輩!! すいません、私、櫻子さくらこ先輩のこと、誤解してました!! 先輩がそんなに思い詰めているなんて!! 私、私ッ!!」


境遇の不憫ふびんさや、申し訳ない気持ちで思わず泣けてきた。

振り向いた先輩は不思議そうな顔をしていた。


「ウフフ……あら? 愛ちゃん? なんでそんなに泣いているの?」


先輩はニッコリと笑みをうかべていた。ああ、やっぱり感情が壊れて……。

涙が止まらない私を櫻子さくらこ先輩はベンチに座らせて落ち着かせてくれた。

落ち着くと私は改めて謝った。


「ん? なんのお話?」


「えっ、だって先輩、自分の事を独り言で……」


「???」


あれ、なんだかヘンだ。話が噛み合わない。

すると納得がいったように先輩は手を叩いた。


「あぁ、あれ? 私の大好きな絵本の話よ。いいお話でしょ? お姫様は仲間の妖精とお花畑をつくったの。だけど、妖精さんたちは人間界に追放されてね……」


心配した私がバカだった……。馬鹿みたいじゃん。

情けなくなってワシャワシャ頭をいていると櫻子さくらこ先輩が肩を叩いた。


「ウフフ。心配してくれてありがとう。私は大丈夫よ。それに、今は皆がいるから毎日すごく楽しいの。これからもよろしくね。あ〜いちゃん。フフフ……」


ドゥヒヒヒッ……。

それ以来、先輩には優しくすることにした。

他の先輩方が怪しい櫻子さくらこ先輩にやけに寛容な理由がわかった気がする。


Revi部全員の努力によって校内美化運動は順調だ。

なぎさ先輩が培養土やプランターの運搬。

知里子ちりこ先輩が種植えと観察。


翼先輩が水やり、そして櫻子先輩が監修を担当した。

あや先輩と私は広報係ででポスターなどを作ったりした。


とても大変だったけど、その甲斐あって学校中に綺麗な花が並んだ。


さほど花に興味がなかった私だが、自分達の育てたものだけあって感動も一入ひとしお!!

なぎさ先輩も、あの翼先輩でさえ、花への認識を改めたみたいだ。

この調子で美しい花を咲かせていけば園芸部の復活も近いかも……。


とか、一瞬思ったがヤバい草とかヤバい花を確信犯で育ててた部活が復活するわけねぇだろ!!

でも、よくよく考えると櫻子さくらこ先輩はとんだとばっちりなんだよなぁ。

ああやって1人屋上の花畑を整備してると思うと物悲しいものがあるな。


ある日の昼休み、櫻子さくらこ先輩、部室にいねぇじゃん。

ため息をついてると彩先輩が何かをつまんでる。


「実はね、屋上のスペアキーを櫻子さくらこちんは置いていくんだよ。だからみんな時々、屋上に顔を出してるんだ。あ、これはナイショね。本当は屋上は閉鎖中だから」


放課後に早速、屋上に行ってみると熱心に櫻子さくらこ先輩が花壇かだんを手入れしていた。


「せ〜んぱい!! 精が出ますね!!」


シャベルを持った先輩はほんわかした表情を浮かべた。


「ウフフ。あ〜、愛ちゃ〜ん? ゆっくりしていってね〜〜フフフ」


「それにしても、すごくいろんな種類の花がありますね!!」


スマホの画像検索で花々を調べつつ、ぼんやりと種類名を追っていった。


「わぁ。なんだかこの花、背が高いですね。綺麗な白い花だなぁ……!!」


「あ〜、それ〜? 河原かわらに生えてたの〜。キレイでしょお? ウフフ」


好奇心からその花の種類を検索した。

これケシの花じゃないですかぁ!!


「どぉしたの愛ちゃん。そんなにあわてて……」


マジでこんなんどうしたらいいかわかんねェッ!!

こ、こんなの先生に報告したら誤解される!! 停学、いや、最悪、退学!!


「もぉ〜〜先輩〜〜!! 河原かわらの花はやめてくださいよホントに〜〜!!」


「あらあら。ウフフフ………」


野生のケシをみかけたら通報しましょう……というお話でした。

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