表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/20

お願いPhoenix‼

昼休み、Revi(リヴァイ)部の面々は部室でまどろんでいた。

そんな中、誰かが勢いよくドアを開けた。おっ、彩先輩じゃん。


「みんな!! ビッグニュース!! ビッグニュースだよ!!」


何事かと私達は身構えた。

嫌な予感がする!! いや、嫌な予感ばっかじゃないか……。


「あのね!! この間のボランティアが認められて、新入生歓迎会でライブ演奏していいって!!ここでRevi(リヴァイ)部の活動をアピールできれば一気に復活に近づくかもしれないんだヨ!!」


すぐさま(つばさ)先輩が声を上げた。


「イェーイ!! ライブだライブ〜〜!!」


続いて櫻子先輩(さくらこ)先輩も余裕ありげに笑っている。


「あらあら〜〜。ウフフフ〜〜」


なぎさ先輩は小難しそうな顔をしていた。


「う〜む……楽器なんてリコーダーくらいしかやったことがないぞ」


こんな感じの人が居ないと私の立つ()がないだろォ⁉

知里子(ちりこ)先輩はうつむいていた。おお、心の友よ!!

彩先輩(あやせんぱい)は申し訳無さげに頭をペコリと下げた。


「ゴメンねぇ。私も手伝いたいところなんだけど、生徒会の仕事があってさぁ。Revi(リヴァイ)部の5人でやってもらうことになりま〜す。この部でライブなんてやったことないけど、頑張ってね!! じゃあね〜」


こうして彩先輩は部室から出ていった。

さてさてライブライブ……って、ガチに出来る楽器がねぇ!!

私は思わず頭を抱えたが、すぐに翼先輩が仕切り始めた。


「うっし!! それじゃあ……そうだなぁ。櫻子はピアノ経験あるからキーボードだな。なぎさは直感で筋肉に刻むドラムで。知里(ちり)はあんまり目立たないしベースな。ヘーキだよヘーキ。ある程度がんばれば目立たないしさぁ!!」


さすが音楽経験者だけあって、それらしい配役だ。


あれ? 私は……?


翼先輩はにっこりと笑いながらこちらを向いた。


「愛っちは……ボーカルな!!」


「えっえっ、あっ……どどっ、どうして私なんです⁉」


思わず素が出てキョドってしまった。いや、そらしょうがないよ。

ホントにマジでなんで私なんだ。この中でボーカルつったら一番に音感のある翼先輩でしょ!!

そう言い返したかったが、私にそんな度胸あるわけないじゃん。


「そうだなぁ。あたしが思うに愛っちはとても綺麗な声色(こわいろ)をしてる。この中ではボーカルには最適だぜ!!」


おっ。思いがけないところで()められた。

()め慣れてないので照れてしまう。ついクセで後頭部を()いちった。


(何これもしかして主人公補正とか言うヤツ?)


ぼんやりしていると翼先輩が呼びかけた。


「うっし!! さっそく練習だぁ!! みんな〜いくぞぉ〜!!」


こうして放課後にRevi(リヴァイ)部の面々が音楽室に集まったんだ。


「ほんじゃまぁボーカルの発声練習からいくぞ〜!! 愛っち、あたしのコーラスに続けて歌ってくれ!!」


音楽室に力強さと繊細(せんさい)さを兼ねた歌声が響いた。


「あ〜え〜い〜お〜う〜〜〜」


(うっしゃあ!! 綺麗な声色(こわいろ)、聞かせてやんぜ!!)


「ゔぁーえーびーーーうぶぅ〜〜〜!!」


あれ、なんでだ。皆なんで黙ってんの⁉

翼先輩は苦笑いしながら仕切り直した。


「ま、まぁまぁ。声はいい声は。もっかいやってみ」


私はコクリとうなづいてリズムを思い出した。


「あ゛〜↑あ〜↓おぉ〜〜ぐッぐぅ〜〜」


またもや音楽室は静まり返ってしまった。どういうこと⁉

そんな私に先輩方は率直な感想を投げかけてきた。


「愛、おまえ音痴(おんち)だな」


「確かに声はいいけど、音程がね……」


「ウフフフ。まるで潰れたカエルの声みたいですねぇ。ウフフフ……」


さんざんな言われようである。主人公補正はただの思いこみだったのか。

微妙な空気が流れかけた時、翼先輩が喋り始めた。


「確かに音程は酷い。酷すぎる。壊滅的だよ。ありえない!!」


そんなクソミソに言うンじゃねぇよ!!

だけど、話はそこでは終わらなかったんだ。


「だけど声自体は間違いなく美しい。あたしよりも透き通った声をしてると思う。あたしが面倒を見るから愛ちんにボーカル、任せてやってくれないか?」


少しの間のあと、部員たちは拍手(はくしゅ)でそれに答えてくれた。

ただ、翼先輩は釘を刺すように言った。


「期待の1年坊だからってチヤホヤするわけでも、ソンタクするわけでも、ましてや主人公補正でもないからな。本気で食らいついてきなよ!!」


こうしてその日からボーカルの猛特訓が始まった。

びっくりしたのは翼先輩の自室は防音加工だった事だ。

楽器も一通りのものが揃っているし。


私は本番まで毎日、翼先輩と音程合わせや歌詞の暗譜、そして発声の練習をした。

皆に迷惑をかけたくないという一心で、もうこれがとにかく必死。

その甲斐あってか、翼先輩曰く、みるみる上達した らしい。


他の部員たちも私の歌声に太鼓判(たいこばん)をおしてくれた。ありがてぇ。

練習にも熱が入り、チームワークもバッチリ!!

自分でもそれなりに手応えを感じることが出来たんだ。


でも翌日にライブを控えた夜、私は違和感を感じていた。


「喉が……イガイガする……まさか……」


これは喉を痛めたくさい。まだ発声出来るが、ライブが終わるまで持つかはわからない。


(どうする……? 翼先輩に声をかけるか? いや、もうここまで来たんだ。下手な心配はかけられないッ!!)


そして当日がやってきた。

喉のことを忘れるくらい私はガチガチにキンチョーしてしまった。


一方、先輩方はまったく緊張している様子がない。

知里子(ちりこ)先輩でさえだ。あるぇ⁉ 皆、本番に強いタイプなの⁉


気づけば私はマイクの前に立っていた。


「イェーイ!! 期待のルーキー!! アイっち〜〜〜!!」


いかん。体が動かん。


「や、やほ」


陰キャ丸出しのリアクションだ。


「キャ〜〜〜!!」


「あ〜いちゃ〜〜〜ん!!」


黄色い声援が上がった。


「じゃ、Revi部のオリジナル曲"お願い Phoenix(フェニックス)"!! 聞いてくれよな!!」


なぎさ先輩がスティックを打ち鳴らすと心臓が爆発しそうに高鳴った。

櫻子(さくらこ)先輩はキーボードを撫でるように旋律を奏でていく。

知里子(ちりこ)先輩はたどたどしいながらも必死にベースを弾いている。

翼先輩はバンドに勢いをつけてエレキをかきならした。


そして私は皆との特訓を思い出しながら歌い出した。


「わ〜た〜し〜をリヴァイブしてよ!! おね〜が〜い〜Phoenix!! Phoenix!! ハイ!!」―――


耳が麻痺まひするほどの声援を浴びてふっきれた私は完璧に歌い上げることが出来た。


翌日、教室に入ると昨日のライブに感動したらしいクラスメートが集まってきた。

こんなにクラスの人々にもてはやされるのは始めてだ。うわ恥っず!!


「ねーねー、愛ちゃん!! もう1回、歌ってよ」


私はいい気になった。今度こそ主人公補正である。


「ヴァーダジオリヴァヴ〜!! ヴォ〜デーガァイ!! オーデーガイ!! ヴォニッ!!ヴォニッ!! ヴォイッ!!」


そう、私の喉は限界を超えて怪しげな呪詛(じゅそ)のような低音に変わり果てていた。

あれ、なんだかみんな引いてんじゃん。どしたどした?

何が悪いのか全くわかんねぇ。


どうやら私の酷い音痴おんちまでは改善しなかったようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ