表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/20

乱れ咲きボランティア

確かに私は"異文化交流会"を復活させるためにこのRevi(リヴァイ)部に入部したはずだった……。

それなのに、なぜかお花見会場でひたすらゴミを拾わされていたのだ。


「ご、五色(ごしき)先輩、なんでこんな事に……」


ホントだよなんでこんなことになってんだ。

それを聞いたピンク髪の五色(ごしき)先輩は苦笑いしながら答えた。


「にゃはは……。Revi(リヴァイ)部はまだ設立したてだから先生方からの信頼が足りなくてね。なんでもやりますって言った結果、ゴミ拾いが回ってきたんだよ。あと、この部活は下の名前で呼ぶことになってるよ!! 私は(あや)。あ〜いちゃん!!」


下の名前で呼ばれたことなんてないんだから、顔を赤くして目線を落とすしかないだろ。

どうせ、他の部員もイヤイヤやっているに違いない。

しかし、彩先輩あやせんぱいは汗をかきながら熱心に缶を回収していた。


青髪をポニテに結ったなぎさ先輩も熱心にゴミを拾っている。

この人、見るからに真面目だしな。


「くっ、いいぞ!! この動作の繰り返し、ハムストリングス筋に乳酸が溜まっていく!! プロテインを飲んできて正解だったな!!」


割と常識人なんだけど、なんだか大事なとこがズレてんだよなぁ。


一方の黒髪の知里子(ちりこ)先輩はちらちら桜を見上げながらもボランティアに取り組んでいる。


「ソメイヨシノの原理ならクローンを産むことが可能!! 本人×クローンの禁断のやおい恋!!」


それを聞いて思わず全身が震えた。

やおいとか古くね⁉

しかし、私はあくまでノンケである。そこは譲れない。


あれ? 翼先輩(つばさせんぱい)櫻子先輩(さくらこせんぱい)の姿が見当たらない。

いくらなんでも堂々とサボるってことは……いやサボってるし!!


茶髪のショートカットの翼先輩(つばさせんぱい)は見知らぬグループに混ざっていた。

しかもどこからかマイクを借りてきてカラオケを熱唱していた。

その圧倒的な歌唱力のため、花見客のウケは非常に良かった。


「うっわぁ……無駄に上手いんだよなぁ」


どんどん人が集まってきた。これは間違いなくカリスマというやつである。

なんとも言えないジェラシーを感じた。


会場を見回すと綺麗な金髪の櫻子先輩さくらこせんぱいも知らない花見客に囲まれていた。

ニコニコと笑いながらオレンジジュースを飲んでいる。


「う〜ん。櫻子先輩(さくらこ)先輩も可愛いからなぁ。そりゃチヤホヤされるよな」


またもやなんとも言えないジェラシーを感じた。

その時だった。いきなり櫻子先輩(さくらこせんぱい)が立ち上がった。


「ぱんぱかぱ〜ん☆ 私ぃ、脱いじゃいま〜す☆」


上着のすそを掴むと先輩はガバっとそれを脱ぎ捨てたのだ。

上半身下着の美少女のあられもない姿が公開されてしまったッ!!


「うおデッカ!!」


そんな馬鹿なことを言っている場合じゃないって!!

すぐに彩先輩が立ち上がった。


「まずい!! 櫻子(さくらこ)ちんはオレンジジュースで酔っ払っちゃうんだよ!!」


知里子ちりこ先輩は謎の銃を取り出した。


すごく嫌な予感がするよ!!


「ジュウウウウッッッーーーー!!!!」


謎の音波が櫻子さくらこ先輩を直撃した。

すると先輩はトローンとした表情を浮かべて気を失ってしまった。


「まったく、しょうがないやつだ」


なぎさ先輩は櫻子先輩さくらこせんぱいに駆け寄って受け止めた。

おっかなびっくりで私は知里子先輩に歩み寄った。


「あ……あのぉ……。なんですかそれ……?」


やおい恋先輩はフチをクイッとあげた。やたら得意げ。


ASMR(エーエスエムアール)。早い話が音フェチのツボる音を流してゾワゾワしたり、リラックスを促すものだよ。これはそれを発射するスピーカーガン!!」


えっ、ひみつ道具とかそういうのはいいから。

続けて知里子(ちりこ)先輩は解説し始めた。


「ずばり、これはステーキを焼くときの音なんです!! 櫻子(さくらこ)は日頃、これを聞きながら眠っているらしい。だからステーキ音で反射的に寝てしまう!! 万一に備えて用意してあるのです!!」


そもそもステーキ音ってなんだよ……。

ツッコミどころが多すぎて、ツッコミ気質の私でも流れに乗り遅れてしまった感がある。


なぎさ先輩は眠った櫻子先輩に上着をかけるとひょいっとおぶった。

いくら華奢(きゃしゃ)な女子高生とは言え、ここまで

軽々と持ち上げられるとビビらざるを得ない。

なぎさ先輩の身体能力の高さに呆れる、いや、感心するばかりだった。


いや、褒めてんだよ? 褒めて。

するとなぎさ先輩が声をかけてきた。


「彩先輩。私は櫻子(さくらこ)を送っていきます。皆は?」


彩先輩は額の汗を拭って返事をした。


「ふぅ。そろそろ潮時(しおどき)かにゃあ。なぎさちん。私達も切り上げて帰るよ。櫻子ちゃんをお願いするね」


いい匂いがしそうな紺色のポニテを揺らしてなぎさ先輩は軽やかに駆けていった。


「さて、知里子ちん、愛ちん。片付けして帰ろっか」


1人足りないがいいのだろうか。


「あ、あのぉ……翼先輩はいいんですか?」


心のなかではずけずけとツッコむが、外に出てくる言葉は陰キャそのものである。

根っこがそうなのだからしょうがない。

すると(あや)先輩と知里子(ちりこ)先輩は首を横に振った。


「ダメだね。翼ちんはああなったら人の話を聞かないんだから。満足するまではずっと歌ってるよ。好き勝手にやらせておくしかないね」


一方の知里子先輩は眉をひそめた。

あぁ、やっぱめんどくさいやつだなと思ってるんだろうな……。


「まったく困った人です。ただ、音楽に対する情熱は本物。私も見習わなければならないですね」


あれ以外とリスペクトしている。もしかしてこの部活は案外フレンドリーなのか?


彩先輩も首を縦に振った。


「うんうん。そうだね。あれくらいの勢いがないとRevive(リヴァイブ)なんて出来ないからね。さて、と。じゃあ2人とも、お夕飯を食べて帰ろうか」


ウチは特に厳しいわけでもなかったので先輩のお誘いを受けることにした。

ファミレスに着くとみんなが疲れのあまり、どっかりとソファーに座った。

とても女子高生の仕草とはおもえねぇぜ。


渇いた体にドリンクバーがひどく美味しい。

そしてメニューを囲みながら先輩たちと楽しい一時を過ごした。

彩先輩(あやせんぱい)はいろんなジャンルに精通していて、何を話していても退屈しなかった。

マニアックなオタクカルチャーにも着いてくるとはなかなかやる。


知里子ちりこ先輩は変わり者ではあるが、根底では私と同じ血が流れている。間違いない。

ノンケは譲れないが、趣味が共通する部分も多かった。


そんなこんなでこの2人とはすぐに打ち解けることが出来た。

少からず入部に不安を感じていた私は救われた気分になったんだ。

そんな中、ふと私は窓の外に目をやった。


「あ……あの、あれ、なぎさ先輩では?」


たしかに先輩が窓の前を横切った。櫻子先輩を背負ったままだ。

思わず顔がひきつった。


「……電車ありますよね? もしかして解散してからずっと……?」


マジかよ!!きっとナントカ筋がナントカとか言ってんだろうなァ……。

彩先輩と知里子先輩はやれやれとばかりにため息をついて、首を左右に振っていた。

ありゃあねぇぜ……。

思わず私達はなぎさ先輩の脳筋ぶりに笑ってしまうのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ