1人の少年と僕
第一章 定義
自分の部屋のベッドに寝転びながら、恐る恐る【ひきこもり】とググってみた。
今日は月曜日。
悪夢を見て目を覚まし、スマホを手に取り時間を確認すると[11:32]だった。
今朝は同居をしている祖母に
「お腹が痛い」
「気持ちが悪い」
と、体調の悪いフリをして学校を休んだ。
学校を休めることに安堵をし、まだ温かさの残るベッドへと再び潜り込んだ。
僕は中学2年生。
中肉中背…いや、背丈は人並みだけれど体型は細身かも知れない。
顔は…不細工ではない。
顔はカッコいい、所謂 モテ顔だ!
と言い切れる程の見た目ならば良いのだが残念ながら、ひいき目に見ても中の上といったところだ。
勉強の方は、国語は得意。
英語は…まあ、まあ。
いや、苦手になりつつあるかな。
学校を休むことが多くなり登校をしても出された宿題は先ずやらないし、塾へも行っていない。
当然、家でも勉強は全くしないので苦手になるのは当たり前だ。
その他の科目も、ある程度の点数は取れていたのだが苦手科目になりつつある。
数学は特に苦手だ。
男女の脳の違いなのか女子は文系が得意で、男子は理系が得意だと言われているが
僕にはその法則は当てはまらないらしい。
まあ、このまま怠惰な学校生活を送り続ければ
全ての科目が苦手科目になるのは時間の問題だということは自分が一番分かっている…
というか、誰の目にも明らかだ。
そんな僕が、ふと気になっていた【word】を検索エンジンにかけてみた。
《ひきこもり》
[ ひきこもりとは、仕事や学校へ行かず家族以外の人との交流を殆どせずに6ヵ月以上続けて自宅にひきこもっている状態 ]
とある。
一応、定義があるらしい。
ぬくぬくと温かい毛布を口元まで引き上げながら、僕は少しだけホッとしていた。
今のところ、僕はその定義には当てはまってはいない。
学校は休みがちだが、1週間の内 3日間位は登校をしている。
だが…
《ひきこもり》になる可能性は高い…な。
自分の部屋の天井を、ぼんやりと見つめながら僕は自分の行く末を想った。
死んでしまえば楽になれるのだろうか。
目を閉じて、僕は大きく息を吸った。
肺の中に酸素が多く取り込まれるのを感じ、そして ゆっくりと息を吐く。
その直後、僕の部屋の窓際に1人の小学生くらいの少年が立っていて
こちらを、じっと見ていることに気がついた。
「っつ ぎゃああっあ!!!」
僕は、声にならない声を上げて跳ね起きベッドから転げ落ちた。
『こんにちは』
小学校高学年くらいに見えるその少年は、良く通る声で僕に挨拶をし
唇の右端のみを少し吊り上げて、微笑んだ。