ゴーストハンターの日常 【月夜譚No.148】
ゴーストの目撃例が後を絶たない。
――そう聞いていたから、どんなに雰囲気のある場所なのだろうと思っていたのだが、実際に来てみると普通のアパートだった。期待外れに、青年は道路の端に立ったまま肩を落とした。
顔を上げて道の先を見遣ると、数メートル置きに細い電柱が夜を照らしている。住宅街なので当たり前だが、繁華街ほど明るくはない。が、特段暗いわけでもない。
ゴーストは基本、闇を好む。個体にもよるが、多くは陽を嫌い、夜の活動が活発になる。人工の光も嫌うから、この場所でゴーストが多発することはまずあり得ないのだが……。
青年は顎に軽く握った拳を当て、うーんと考えた。そして数秒、うんと頷いて今一度アパートを見上げた。
分からないものは、幾ら考えても分からない――それが彼の結論だった。
それだけ目撃例があるのなら、三晩ほど張り込めばゴーストの姿を拝めるだろう。
青年はまだ見ぬゴーストの姿を思い描きながら、軽い足取りでアパートの敷地に足を踏み入れた。