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異世界転生モノ 鎌倉蓮の場合  作者: むしやろう
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人と人をつなぐ少年

1章「主人公になりたい」


天界、魔界、人間界。この世界はたった一つだけどゲームをやっていれば誰だって夢想する。この世界には天使が居て、悪だくみをする悪魔が居て、そしてなんの変哲も無い人間つまりボクらが居て。


でもそんな中でゲームで言えば主人公、何かの中心になっていつもトラブルが起こるけど持ち合わせたカリスマと才能でみんなを笑顔にする。そんな主人公になりたい。高校3年の春、次の人生はそんな風がいい。


と希望を胸いっぱいにしてボクは包丁を胸に当て、風船を割るように思い切り突き立てた。


「やぁ」


光る人形がボクにしゃべりかけてきた。いやいや勘違いかもしれない、周りをよく見てみろ。ボクの後ろの人に話しかけたのかもしれないぞ。


「あぁ、ごめんごめん。君だ。鎌倉蓮くん」

「あ、ハイボクですか。人違いじゃないですか?知り合いに全身が光る人なんて居ませんよ」

「おや?これがどんな状況かわからないかい?俗にいう異世界転生というヤツさ」


「マジですか。あんなのアニメとか小説の中だけだと思ってましたよ。ところで何か条件とかあったりします?それともボクに超パワーとか」


「ははは、コヤツめ。ははは。まぁやって欲しいことはあるんだが正直期待してないよ。むしろ聞きたいんだが君の人生、つまり死ぬまでに満足出来たかい?」


少し胸に手を当てて考えてみる。とゆうか死んだときの格好のままなのか。でも心臓までの服に穴は開いていないし、空色と白のボーダーシャツは血にそまって赤くなってもいない。しかし包丁は持ったままだ。


「割と希望を持って死ねましたよ。まぁ悪くないのでは?」

「あんなもの希望とは言わないよ。もっと狂信めいた何かさ」


心当たりがないと言えば嘘になる。必死で取り繕って塗り固めて、その場しのぎに作ったまやかしだ。そこで一つ引っかかった。


「ではなぜボクを呼んだんです?こんなこと忘れたいから死んだのに。ボクの努力が水の泡ですよ」


「そんな努力犬に食わせてしまえ。ともかく君には望む力を与えもう一度青春を謳歌してもらう。ボーナスステージのようなものだ。さて君はどんな力が欲しい?どんな力を望む?今までの世界が窮屈過ぎたんだ。君はこの世界でどんな八面六臂の活躍をしたい?」

「……主人公になりたい」


ずっと思っていたことだ。ボクはいつ主人公になれるのだろう。ついにはなれずに幕を閉じてしまったが。


「そんな事でいいのかい?欲が小さいね。もっと大きなことを願いなよ。一度死んだんだぜ?それこそ死んで生まれ変わったんだぜ?今本気を出さないでいつ本気になるんだよ」


「ずっと本気だよ。精一杯だ。なんというかもういっぱいいっぱいでボクの中の歯車がどこかで砕けてしまった。だから主人公になりたい」


すると光で全身を満たされた人は、少し困ったように、いや、表情は見えないが


「……んー。あー。漠然としすぎているんだ。大抵の人間は未練を持ってここにくる。君はある意味満たされているんだ。他人に消費されることで心の一片まで使い潰されてしまった。具体的な願いもないのに、持って生まれた未練もないのに、ただ不公平だと言うだけで迷い込んでしまった」


「というかアナタの事直視してると目の痛みが止まらないんですけど光り方加減できないんですか。いまどきスマホですら画面調光してくれますよ?」

「いや、これは君のほうの初期設定でね。人生において後ろめたいことがあるだけボクの事がまぶしく見えるように出来ているんだ」


つまりある程度ここで転生者を振るいにかけているのかどんな振るいかは想像もつかないが。


「ふむ決めた。君の力は誰かとつながる力だ」


するとボクの体も光り始める。


「え?何これ。ボク自分自身も後ろめたいの?」

「ははは、違う違う。『そろそろ行け』ってことさ。言い方を変えるなら時間切れ。もっと言い方を変えるなら異世界に行くまで長すぎ。ってところかな?」


「まだ序盤だからしっかり読んでくれるよ。ホラこういうのって掴みが大事って言うじゃない?」


するともう光る人は「いってらっしゃい」とばかりに手をふりふりしていた。


「ちょ、待ってまだ説明……」


そしてボク、鎌倉蓮の異世界転生は始まった。


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