序
‥‥‥‥‥‥ん? ‥‥え? どういう事?
窓から朝日が入り、ぼんやりと明るくなってきた部屋の中。
目が覚めて上半身を起こすと、ベッドの横に虎がいた。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥トラ?
厳密には虎ではないのかもしれない。 何しろ真っ白で、あの縞模様が無い。
とにかく猫科の大型獣だ。 ライオンのようなたてがみは無く、からだ全体の毛足が長い、普通の虎よりも長いように思う。
ホワイトタイガーもびっくりデスヨ‥‥‥‥‥。
って! 現実逃避してる場合じゃない!
お座りして、つぶらな瞳でこっちを見てる。 なんか、か、かわいい‥‥‥が! でかい! でっかいよ!!
襲い掛かってくる感じは全くないが、こちらは『蛇に睨まれた蛙』状態で冷や汗ダラダラだ。 こっちが動くとあちらも動いてしまう気がして、顔は動かさず目だけで周囲を見てみる。
うん。どう見ても家の中だ。 外でも動物園でもないのに、なぜにトラ?
それに家にも何か違和感を感じる。 はて?ウチはこんな感じだったっけ?
そう思った瞬間、自分の手が目に入った。
‥‥‥‥‥え。 何、これ?
自分の手があるはずの場所には小さな手があった。 どう見ても幼い子供の手。
変だ、私は大人だ。
そっと手を動かしてみると小さな手が私の思う通りに動く。
心臓がドクンと跳ねる。
なんで‥‥‥どうなってるの‥‥
そう思うと同時に、私の中で、もう一つの意識が訴えてきた。
だって、子供だもん!
頭がギリッと痛む。 頭の中に響いた声への驚きと、頭部に走った痛みに混乱しつつも、そうだ。と思った。
私は子供だ。 4歳になって両親に祝ってもらったのは、つい先日だ。
でも、おかしい。 変だ。 ‥‥‥私は4歳だが‥‥‥‥‥‥36歳なのだ。
地球の日本に生まれ育った、36歳の女だ。
私の頬に、はらりと髪がかかる。 髪は白かった。
36歳の私の髪は小学生の頃から若白髪が少しあったとはいえ、染めてもいなかったから黒かった。
ファンタジー小説好きの36歳の私が思う。
これは‥‥‥‥‥もしかすると、もしかして、‥‥‥‥‥‥異世界転生‥‥‥ですかね‥‥‥。
混乱と頭痛の中、意識が遠のいていく。
白い虎に見守られながら、私は再び夢の世界へ旅立った。
あーーーー。
ついに始めてしまいました。
初小説、初登校。の暴挙です。
よろしくお願いいたします。
楽しんで頂けたら幸いです。