エリーちゃんの冒険
初投稿です。
エリーは動けなかった。口からは血があふれ、足ももう使い物にならない。なぜ彼女はこんなことになったのか。これは、エリー自身が望んだが、やはり後悔していたことかもしれなかった。こんな目に合う羽目になったのは、とあるお客がきっかけだった。そいつ、いや、その人と出会ったのは、閉店間際の出来事だった。その日、エリーはもう客もいなくなったので片付けをしようと山積みのワイングラスを片付けようとしたところ、入り口の鐘が鳴った。客が入った証拠だ。
「はいはーい!」
エリーはすぐさま入り口に向かった。そこには、フードをかぶった、怪しい人間? がいた。
「ワイン一つ。」
その客はそういうとカウンターに座った。エリーは
「こんな遅くにか、、、まっ、利益上がったからいいよね。」
と、特に気にすることもなくワインをグラスに静かに注ぎ、客の隣に座った。ここは別にキャバクラやホストクラブではないのだが、エリーは客のことがやはり気になったし、何より暇だったのだ。だが、エリーが隣に座った時、客はエリーが話すよりも先に訳の分からないことを話し始めた。
「エレオノーラはもういない。だから、このカップスクーゲルとフェアデヘルデはソイエスガルデルにより破滅し、新たな世界が誕生する。そこにはエルフも人間もいない、狂気のせかいがあるのみ。」
「やっぱり、このお客は少し狂っているんだ。」
エリーはそう思った。
「大抵、夜遅くに来る客は薬が入っているか酒飲み。」
けれども、エリーは関心を持ったのか、
「まっ、そのエレなんちゃらを探すたびに私もついて行ってみようかな。」
と、冗談めかすように言った。そしたら、客はさっきの態度と打って変わって
「本当?すぐに用意して。ここで待っているから。」
とまるで世界を救う勇者の手助けをするヒロインのような感じでエリーに言ってきた。
これにはさすがのエリーも驚いたが、その言葉に便乗したかのようにエリーは二階に行き、支度をした。
旅行鞄にありったけの服、食料、武器を詰めた。
その後、羽ペンで紙に
「しばらく休みます。」
とだけ書いておき鞄と紙を持って下に向かった。
「準備はできた?じゃあ出発しよ。」
客が言った。
「うん!」
エリーも返事した。
外は、なぜか明るかった。しかし、エリーはそんなことも気にせずに何らかの呪文を唱え、さっき書いた紙をドアに張り付けた。
まるで二人は遠足へ行くようだったが、客はこの世界に気づいていた。明るいふりをしていたのは、エリー
を何としても協力するためだった。けれども、エリーはそんなことも判らず、彼女の髪と同じ、栗色の瞳を輝かせていた。この世界の狂気も知らずに……。