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魔女の覚悟の追憶

今回はめちゃめちゃ長くなりました。

 私は砂煙の中、自身が持つ杖を力強く地面に突き刺した。


 だが、結局何も起こらない。


 私の周りを漂う砂煙も払い除けることができないし、魔法陣だって現れない。


 しかしそんな私を見て、ゲンケイはやれやれと頭を振った。


「無駄なあがきをするのだな」


 はるか上空で、失望も含めた笑みをゲンケイは浮かべた。


「何をどうしようとお主の固有魔法は戻ってきん。それに、仮に戻ったとしてどうする? お主の固有魔法ではこの国を救うことはできん。せいぜい新たな問題を引き起こすだけ」


 あぁ、そうだ。


 仮に私の魔法が、なんらかの間違いで発動してしまったら、確かに今の状況を覆すことができるだろう。


 しかし、それでもこの国は滅びてしまう。


 ゲンケイは未遂として扱われ、代わりに私が主犯として世界から疎まれることになる。


 そうなったとき、仲間たちは私をどう思うだろうか。


 一緒に罪を背負ってくれるだろうか。


 ……ううん。


 そのときにはもう……私はまた一人ぼっちか。


「……それでも」


 私は小さく呟いた。


「……それでも、アンタなんかにこの国を滅ぼされるくらいなら――っ!」


 ――私は悪魔にでも、魔王にでもなってやる!


 そう言おうとしたそのとき、私の記憶の片隅から声が聞こえた。


 儚い、けれど力強い声が。




 ★☆★




 サイモンを、この国の人々を救うにはアレに頼るしか方法がなかった。


 あの選択が間違っているとは今でも思わない。けど、それでミヌスという国が本当に救われるとも、今も昔も思っていなかった。


「……何をするつもり、ケイラさん?」


 力強く地面に突き刺した杖を、サイモンは訝しげに見つめた。


 地面に刺した杖を中心に、透明なガラスのような線が国中に描かれていく。


 けれど、それ以外に何か変わった様子は見られなかった。


「何をしても、もう止まらないよ?」

「いいえ、止めるわ」

「……そっか。残念だな」


 サイモンは悲しそうに俯くと、周りに転がっている人達に対して叫んだ。


「死ぬこともできずに苦しんでいる皆に朗報だよ! 救ってあげるよ!」


 それを聞いた人達が苦しそうな呻き声とともに顔を上げた。


 その顔にはどれも、恐怖が浮かんでいた。


「苦しくて、苦しくて仕方ない皆を殺してあげる。そのための条件を与えよう!」

「ぅ、ぁ……」


 この苦しみから抜け出すためならなんだってしよう、と言わんばかりに国の人達の顔に僅かながらの生気が宿った。


「僕の目の前にいる女性を、ケイラさんを……殺してくれ」


 一瞬の躊躇いの表情の後、サイモンはそう言った。


 人々は私とサイモンの関係など知らない。


 いや、知っていても彼らは今と同じように、私に刃を向けていただろう。


「不幸なケイラさん。助けるべき人達を敵に回しちゃうなんて」


 それは悲痛の叫びのようだった。


「みんな不幸なんだ。僕だってそう。好きな人を自分の手で殺すなんて……最悪だよ」


 サイモンの顔はとても悲しそうなのに、声色はとても明るい声だった。


 不幸だ、不幸だ。と、何度かぼやいていたサイモンだったが、突然、ハッと私を見た。


「そういえば、どうやってケイラさんはここに?」


 当然の疑問だろう。


 今、この国には謎の病然り、負の感情や、災厄が蔓延している。


 どれも死ぬより苦しく、しかし、死ぬことができない。サイモンが今までで味わってきた過去を体現するような事象に、この国は陥っている。


 この国に足を踏み入れただけで、普通であれば、数十秒と立っていられることはできないだろう。


 にもかかわらず、私だけが今もこうしてサイモンと対峙できている理由。


 それはいたって簡単で。


「それが私の固有魔法だからよ」


 杖から溢れた透明な線が国の隅々まで行き届いたことを感じ、私はようやく口を開いた。


 決して常時型の固有魔法ではない。


 しかし、そもそもが強力すぎる固有魔法であることに加え、私自身の魔力の多さが影響し。


 それは普通とは異なり、身体から無意識のうちに発せられるようになってしまった。


 その現象は、私が学園にいたときの研究テーマでもあった。


「……ごめんなさい」


 その謝罪は必ずしもサイモンだけに向けられたものではなかった。


「何を――」

「領域展開」


 サイモンが私に何かを尋ねようとしたそのとき、杖から今度は透明な線でなく、巨大な植物のような根が這い出る。


 ともすれば幹とも間違われそうなその巨大な根はみるみると成長し、あっという間にミヌス全体に根を張った。


 ようやく止まったと思えば、今度は私の金属製の杖が形を変え、性質を変え、小さな木になった。


 そして先ほど同様、成長を始め太く高くせり上がっていく。


「なに……これ? ど、どうなってるんだよ!?」


 それはこの不可思議なものに対する反応だけではない。


 気付いたのだろう。


「魔法陣が消え始めてる……? いや、吸収されてる!?」


 人々の感情を吸収する魔法陣が、その魔力ごと吸収されていることに。


 正直、張本人である私ですら驚きを隠せなかった。


「この魔法を使ったのは初めてよ」


 生まれたときからこの魔法を知っていたが、一度たりとも使ったことはないからだ。


「【妖精の大樹(ユグドラシル)】」


 それが私の固有魔法にして、私を独りにさせた理由の一つ。


「その根は領域。その領域内にある自分以外のすべての魔力と、エネルギーをすべて吸収して成長する伝説の樹。しかも、発動したら最後。枯れるまで私でも止められない」

「そ、それって……まさか」

「えぇ、そうよ」


 生身の人間はおろか、無機物の建物などもそう。空気中に漂う魔力、正体不明の病も例外ではない。この樹はすべて自身の栄養とする。


 すべてを吸い込み、他に何もなくなったとき、用は済んだとばかりに枯れる。


 まさに、私そっくりの、お似合いの魔法だ。


「じ、自分以外って……」

「……」


 絶望の表情を浮かべるサイモンを、私は黙って見つめた。


 あぁ、そうだ。自分以外、とはそういうことだ。


 苦しみ続ける人々の魔力もエネルギーも、生命も、すべてを吸い尽くす。


 例外はない。


「この国はサイモンが滅亡させるんじゃないわ。()()()()()()()()


 ガラッ、と私の後ろに建っていた家の端が崩れた。


 崩壊が始まる。


 数分もしないうちに、この地は跡形もなく消えるだろう。


 人も物も。


「き、樹を切り倒すんだ!」

「無駄よ。この樹には、すべての魔法が通じない」


 サイモンの命令に従って、人々が魔法を樹に放つがかすり傷一つつけられずに、飲み込まれるように消失する。


 もちろん、魔法を使わなかったとしてもエネルギー自体が吸収されるのだから意味はない。


 ……だから。


「もう……終わりよ。サイモン……」

「は、ははっ……」


 それはこの事件に対してではないことに、サイモンはすぐに察した。


 自分がずっと恋い焦がれたものであるから。


 結局のところ、サイモンが不幸であり続けるのは自身の固有魔法のせい。


 その魔法すら無視した私の固有魔法でなら、唯一サイモンは死ぬことができるだろう。


「なんでだよ。……なんでだよ、ケイラさんっ!」


 サイモンは地面に膝を突き、自分を支えるように手をついた。


「どうして!? どうして今なんだよ……!」


 しかし、それも次第に体力を吸われ、サイモンと人々は、バタッとうつ伏せに倒れた。


 樹は空高く成長を遂げ、葉を付け、ぷっくりとした蕾たちが今にも花を咲かそうとしていた。


 ……あの花一つ一つが誰かの魂だとすれば。


 あれが咲いたとき、樹は完全体となって、国とともに枯れていく。


「どうしてっ。もっと早くに僕を殺してくれなかったんだよ……」

「っ……」


 私はサイモンを見れなくなっていた。


 会わせる顔がない、というのはまさにこういうことだ。


「カミュラ……ごめんね。やっぱりひどいものだったよ」


 初めてカミュラに会ったとき、私は彼女が苦手だった。嫉妬と言ってもいい。


 同じ植物の魔法でありながら、私は孤独に、彼女はみんなを幸せにしていたから。


 私は植物が嫌いだったのに、カミュラは植物を愛していた。


 何もかもが違って、でも、だからこそ。


 私が嫌ったこの魔法を、カミュラは褒めてくれたのだ。


 人を傷つけまいと自ら封印した人の魔法が、きれいな植物を咲かさないはずがない、と。


 実際にその花を見ることができないことは残念だけど、できないからこそきれいな花だってわかる、ってカミュラは言っていた。


 その言葉があったからこそ、この魔法を使わないように自分を律してきた。


 本当はこの花が醜いものだったって知られたくなくて、知りたくなくて。


「……ケイラさん」


 サイモンが顔だけ向けて、私の名を呼んだ。


「僕はずっと不幸で、何をやっても失敗ばっかりの人生で、きっとこれも失敗するんだろうけど」


 その優しい笑みは、かつて私が見たものと一緒だった。


 心の底から幸せそうに、楽しそうに笑っているその姿は。


「あなたに出会えたことが僕の幸福で、あなたの幸せが僕の幸せなのは本当のことだから」


 ごめんね、サイモン。


 あなたの気持ちが痛いほど伝わってくるのに、あなたの顔が見れない。


「だから最後に、これだけ言わせて?」


 あなたの顔を通して見えるのは違う顔だった。


「あ、あれ……?」


 気付けば私は涙を流していて。


 ……あぁ、そうか。


 私が本当に会わせる顔がない相手っていうのは。


 アンタが笑うだけで、私の中の何かが満たされていたこの気持ちは。




「僕と付き合ってください」




 最後の最後まであなたを不幸にしてしまう私を許して、なんて言えない。


()()()()()()()()

「……うん」


 サイモンはそれでも笑っていた。


「わかってたんだ。久し振りに会ったときから、その姿を目にしたときから。昔とは変わっていて、きっと僕じゃない誰かを見ていたんだって」


 それでも、なんとかして振り向かせたかった。


 私でない誰かを見ているときの顔が、雰囲気が好きだったけど、それが自分に向けられるものだったらと思ってしまった。


 サイモンの気持ちが今になってようやくわかった。


「あなたが私を幸せにすることはできないけど、私の幸せがあなたの幸せに繋がるなら」

「……ぅんっ」


 サイモンは地面に頬をつけた。


 もう顔を上げる体力も残っていないのだろう。


 だけど、その地面が濡れてることから泣いているとわかった。


「あなたの分まで私は幸せになるわ。誰よりも、絶対に」

「……」


 サイモンは何も返さない。返せない。


「っ……」


 頭上を見上げる。


 巨大樹の花が一つだけ咲いていた。


 サイモンを始めに、これからどんどん花が咲いていくのだろうと思うと、私は身を切りつけられる思いだった。


 こんな私を誰が好いてくれるだろう。


「幸せ……か」


 サイモンにはそう言ったけど、果たして私にそんな権利があるのだろうか。


 いくら仕方ないとは言え、これから無実の人々の命を根こそぎ散らすというのに。


「……私にも似合わないみたいね」




()()()()()()()()()()()()()()




「えっ?」


 その声に驚き、振り返ると、そこにいたのはここにいるはずのない二人。


「やっぱり運命を越えた何かなんだって!」

「お前、この状況でそれ言う? 空気読めよ、マジで」


 久し振りに見た二人は、以前と変わらず互いに言い合っていた。


「つうか、なんだよこれ?」

「木の神様だって言ったじゃん!」

「それがわかんねぇっての」

「なんでわかんないの!?」

「自分は神と話せます、って言われたら普通は頭がおかしいやつだと思うぞ?」

「え、頭おかしいんじゃない。リオン?」

「お疲れ様でした。俺は実家に帰ります」

「なんで敬語!? なんで帰るの!?」

「すいません、不審者とは関わらないようにしてるので」

「不審者! どこ!?」

「話が通じない系の不審者だったか」


 なんとも空気の読めない二人の掛け合いに呆気にとられていた私だったが、ハッとすると、焦った声を出した。


「どうしてここにいるのよ!? 死にたいの!?」


 なぜこの二人がここにいるのかはわからない。


 けど、今ここにいるのはあまりにも危険だった。


 しかし、二人は逆に首を傾げた。


「今死にそうだったのはお前だろ?」

「わ、私は!」

「あ、リオン! 鞘持っていれば大丈夫だと思うから。はい」


 私が反論する前にセラフィは白く輝く剣を抜き、その鞘をリオンに渡した。


「皆もリオンの近くにいれば、まだ助かると思う」


 気付けば私達の周りにはサイモンに操られていた人達が集められ、心なしか顔に生気が戻っているようにも見える。


 疑問ばかりが尽きない私を放っておいて、リオンは興味なさそうにセラフィに尋ねた。


「やるのか?」

「仕方ないよ。私の責任だから」


 私にはわかりえない話が二人の間で交わされる。


「私の決断が遅れた結果がこうなっちゃった。声はずっと聞こえていたのに」

「勝手に挫折して、勝手に立ち上がりやがって。ホント気持ち悪いやつだよな、お前」

「え、ひどくない?」

「……何分かかる」

「一分。悲しいのはもう嫌だと思うから」

「……なんて言ってるんだ?」

「ありがとうって」


 二人のよくわからない話はそれで終わり、リオンはため息をつきながら地面に座った。


 何を呑気に、と言うこともできないほどに自然な仕草だった。


「やっちまえ」

「言われなくても!」


 リオンの指示に、セラフィは力強く地面を蹴ると、【妖精の大樹(ユグドラシル)】を重力を無視して垂直に駆け上った。


 すると、大樹から無数のツタが生え、セラフィに襲いかかった。


「……なに、あれ?」

「……さぁ?」


 リオンはこんな事態にもかかわらず、今にも眠ってしまいそうな瞼をこすったり、あくびをしてセラフィを見ていた。


 しかし、私はそれどころじゃなかった。


 あのツタはなんだ、とか。どうしてあの攻撃を躱せるのか、とか。さっきの話について、とか。


 いろいろな疑問が湧いて出ていた。


 しかし、そんな疑問を置き去りに、セラフィは大樹を相手に斬撃を飛ばし、ばっさばっさと切断していく。


 この傷つくはずのない樹を当然のように切る。


「……あれが聖剣っつうこともあるが、アイツに斬れねぇものはない」


 すると、ふとリオンが言った。


「聖剣?」

「……不幸なことにアイツに選ばれちまった」

「聖剣がセラフィを……?」

「……逆だ。セラフィがあの聖剣を選んだんだ」

「どういうこと?」

「……俺が知りてぇよ」

「……?」


 またよくわからない話が飛び出し困惑していると、リオンはゆっくりと背伸びをしながら、ゆっくりとセラフィを指差した。


「……ほら、もう終わりだ」

「え?」


 私が、リオンが指した方向を見たときには、辺りが真っ白に光り、気付けば大樹が真っ二つに割れていた。


「……嘘」

「……嘘であってほしいと思うくらいヤベェやつだろ? アイツ」


 リオンが呆れたような笑みを浮かべると、割れた大樹のてっぺんからセラフィが飛ぶのが見えた。


 セラフィは軽い音で着地すると、リオンをムスッとした表情で見た。


「私が頑張ってる中、なんで休んでるの?」

「やることねぇから」

「不公平だ!」

「そうか。それが嫌なら、俺を早く解放してくれ。実家に帰らせろ」

「あ、また言った! 一緒に冒険者になるって約束したじゃん!」

「いや、してねぇから……」

「はい、帰るよ!」

「聞いてねぇし……」


 セラフィはプンプンという擬音が似合う様子で先に帰るが、少し進んだところで「早く!」と私達を呼んだ。


「強引すぎんだろ」

「……なんなのよアンタ達」


 ひょっこり現れては、ひょっこりと何事もなかったように解決して。


 私の頑張りはなんだったのかと言いたくなる。


 するとそこで。


「……これは」

「どうした、なんかあったのか?」


 真っ二つに割れた大樹を見ると、大樹は光に包まれ、空気に溶けるように光の粒となって消えていた。


 それと同時に感じる私の中の変化。


「私の固有魔法が、消えていく?」

「……は?」


 光の粒が消失する度に、私の中にあるはずの固有魔法の気配も消えていくような感覚がした。


 そりゃそうだ。


 私の固有魔法はこの大樹そのものなのだから。それを斬られたということは。


「あ~……」


 私と大樹を見比べて、なんとなく事情を察したであろうリオンが申し訳なさそうな顔を向けた。


「すま――」

「いいのよ」


 しかし、その言葉を口にする前に、かぶせるように私は言った。


「どうせこんな魔法、もう使わないから」


 実際に使ってみてよくわかった。


 今回はたまたまセラフィがいたからよかったけど、セラフィがいたとしてもこの魔法はもう使ってはいけない。


 危険性もそうだが、これは私の心を折る魔法でもあることがよくわかったから。


 だから、いいんだ。ちょうどよかったんだ。


「帰るわよ」

「お、おう……」


 固有魔法と決別して、いつまでも座っているリオンを立ち上がらせようと、手を貸そうとしたそのときだった。


「……っ、アンタ!?」

「あ……やべ」


 リオンはやってしまったとばかりに自嘲気味に笑った。


 セラフィの鞘に軽く触れた瞬間、自分の魔力が吸われたことに気付いた。


 つまりそれは、リオンがずっと鞘に魔力を吸い続けられていたということで。


「まさか……最初から!?」

「……あらら」


 思えば、先ほどからずっと眠そうにあくびをしたりしていた。


 まさかずっと座っていたのもそのため!?


 驚く私に、リオンは気まずそうに言った。


「アイツには言うなよ?」

「な、なんでよ!?」

「別に。アイツがそれなりに頑張ってんのに、俺は何もしねぇで。負担だけをかけるわけにはいかねぇだろ?」

「だからと言ってねぇ!」

「別にすぐに死ぬわけじゃねぇし」


 確かに、原理は不明だが、大樹に魔力を吸われていたわけではない。


 しかし、魔力を吸い続けられていれば、命の危険は多少なりともある。


 そんなの子どもでもわかってるはずだ。


 それでも。


「アイツが失敗するなんてありえねぇんだよ」


 リオンは遠くを歩くセラフィを見てそう言った。


「天地がひっくり返ろうとも、死んだ人間が生き返ったとしても、アイツは失敗しねぇんだよ。誰一人傷つけずに救っちまうやつだ」


 どうして、と聞くことすら愚かと思えるほどリオンは誇らしげに語っていた。


 それを口に出してしまったらきっと否定されるだろうけど。


「俺の予想を上回る結果を出し続けるのがアイツ。だったら、俺だってそれなりに頑張らねぇといけない気になるだろ?」


 リオンの予想を上回る結果を出し続ける。


「……いいわね、それ」

「は?」


 セラフィの生態については、少し気になることではあるけど、セラフィに少しでも近づけば、リオンにこんな風に見られるのかと思うと、負けてたまるか、という気分になる。


「越えてやるわよ」

「な、なにが?」


 私の宣言に、リオンは嫌そうに眉を寄せた。


「な~んか、見たことある顔してるんだが?」

「いい褒め言葉ね。ありがとう」

「感謝されたくないんだが。つうか、待て。マジで怖いんだが!?」


 この日から私にはずっと決めたことがある。


 それは。




 ――リオンの中の私を越えること。




 ただ、それだけだ。



ようやくラストスパート!

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