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とりあえず俺にすべてを任せるのひどくない?

お久しぶりです。

三月には5話分できてましたが、キリのいいところまで書きたかったのと、単純に書き直してました。


ということで、ようやく今回の章が終わります。

 コイツがこんな顔をするのか、と俺が驚いていると。


「ということで、リオン。手伝え」

「……え」


 は、はぁ!?


「いやいやいやいやっ! え!? いや、え……はぁ!?」


 どう考えても今の流れおかしくない? ねぇ!


「おかしくねぇよ」

「おかしいだろ! ……いやさらっと心の内を読むなよ!」

「テメェは顔に出やすいんだよ」

「どっからツッコめばいいかわからん!」


 いきなり現れたと思ったら、勝手に宣言して、かと思ったらまだ俺に戦えと!?


 いろいろなことが起きすぎて、パンクしそうな、というかすでにパンクしている頭を落ち着かせるために、ゆっくりと深呼吸をする。


 ……ふぅ。オーケーオーケー。


 うん、とりあえず状況を飲み込んで、一つずつ整理しようか。


「なんで、はこの際置いておこう。いつからいた?」

「最初から。テメェがボロ雑巾になる前から」

「最後の一言はいらねぇな。次、なんでわざわざ俺を燃やした? お前なら燃やす以外の手だってあったはずだ」

「……つい出来心で」

「ダウトだこの野郎ッ! そして最後っ、なんで俺も戦うことになってんの!? 俺もうボロボロだよな。ボロ雑巾ってお前も言ったよな!? 認めたくねぇけどそうだよ!」

「テメェはバカか。俺だけで勝てる相手かよ。ちっとは協力しろ」

「いやそれならさぁ!」


 ヴォルガの時に協力してほしかったんだが、と思ったが、きっとそれはヴォルガが許さなかっただろう。


 それについては仕方ないと割り切ろう。


 だが、今はどう考えても、一人でやります、っていう雰囲気だと思ったんだけど間違ってるかな!?


「わかってんだろ。俺は直接戦闘をするやつじゃねぇって。魔力の少ない俺じゃ、多少の格闘センスはあっても勝てやしねぇよ」

「魔力はともかく、多少の格闘センスってなぁお前――」

「時間がねぇんだ。それはお前もわかってんだろ」

「……はぁ」


 そういうことらしい。とやかく言ったところでもう無駄だな。


 俺は呆れるように息を吐くと、改めて右手の剣を構えた。


 さっきは一瞬の気の緩みを突かれたが、今度はそう簡単にはもういかせない。


「カミュラさんの魔法はわかってるんだよな?」

「この世に存在しない種子を生み出し、それを攻撃に使う。当然だ」

「そうかい」


 固有なんやらの拡張とやらを使ったものらしいが、要はそういうことだ。


 さっきの大きな口の植物も、俺を縛りつけた植物もこの世には存在しない。


 だが、カミュラさんの中では存在するものとして生み出すことができる。


 この世に存在しないものを自由に生み出せるなんて、自由性がありすぎて下手すればヴォルガよりも厄介かもしれない。


 そんなことを考えてるうちに、カミュラさんが動いた。


「たとえシエンくんが相手でも容赦はしないよ」

「……そうかい」

「……?」


 一瞬、シエンの表情が曇ったように見えたが、それを確認する前にカミュラさんが俺達に向かって種子を投げつけた。


 今度は何やら少し大きめの種子に見えるが……。


「バカ野郎! 確認する前に逃げろ!」


 シエンが種子から距離を取りながら叫ぶ声に、ハッとしたときにはもう遅かった。


「【種子栽培】――ボムセンガン」


 ボンッ、という小さな爆発音とともに飛び出してきたのは無数の小さな弾。


 爆風に押されるように、あっという間に俺のもとまで届いて……。


「しまっ……!」


 咄嗟に顔と胸を腕で守ろうとしたが、そこで無慈悲な声が届いた。


「無駄だよ。だってそれは――」

「ッ!」


 その続きを聞く前に、俺の目の前に飛んできた弾が爆発した。


 小さな爆発でそこまで威力はない。が、小さくても爆発は爆発。


 俺の周りで無数の爆発が起きれば、先ほどの戦いでのケガもある俺にとっては、それはきっと手榴弾と同じだった。


「っはぁ……」


 傷口のすぐ近くで、しかも無数の爆発が起きれば、身体は悲鳴をあげる。


 悲鳴をあげている身体は、次の動きに移れない。


 またしても、その一瞬を突かれる。


「早く楽になった方がいいですよ、リオンさん」

「い、つのまに」


 爆風の中から俺の腹へと手を伸ばしていたカミュラさんは、静かに呟いた。


「【種子栽培】――タケミカヅチ」

「うおぇっ……!!」


 鉛のような恐ろしく硬い何かが俺の腹を強く打った。


 腹から口に胃液が逆流するほどの強い衝撃。


 一瞬、意識が飛んだ。


「ぐほぇ。ぐぶっ。おえぇ」


 無様に転がって、無様に嗚咽を吐く俺はとてつもなくみっともないだろう。


 だが、このまま気絶しなかったことを誰か褒めてほしいものだ。


 なぜなら。


「さっさと立て! 次、来るぞ!」


 どうしてこうも世界は俺に厳しいのか。ちょっと泣きそうなまである。


 しかし、泣いている暇なんてものはなく、俺はすぐさま立ち上がり何かを見たわけでもなく横に跳んだ。


 シエンの焦り様から、自身の危険を察知しただけだ。


 こういうときは、確認してからでは遅いことを俺は知っている。


 ドスンッ、と俺がいたところに何かが突き刺さる音がした。


 一瞬、大木かと思ったが、よく見れば少し違う。……あれは竹だ。


 おそらく、俺がさっきくらったのもあれだったのだろう。よく気絶しなかったものだと思う。


 先は尖っており、地面に馬鹿でかい釘を打つかのように竹が突き刺さっている。俺の腹に風穴が空かなかったのは本当に奇跡だったとしか言い様がない。


 ……よく生きてたな、俺。マジで。


 と、自分の頑丈さに恐怖すら覚え始めてきたときだったが、すると今度は地面に突き刺さった大木の下から、黒い茎のようなものにょきにょきと現れた。


「【種子栽培】――ブラックジャック」


 そんな不気味な茎は俺にねらいを定めたようで、迷うことなく俺へと向かってくる。


 まるで地面が浸食されるように黒く変色していき、真っ黒な煙がモクモクと立つ。


「一体何だってんだよ!」


 横や後ろに飛んで振り切ろうとしてみるが、まるで意志を持っているかのように俺の動きに連動する。


 しかも少しずつだが加速しているようで、少しずつ距離が縮められている。


「くっ」


 やむなし、と剣を【置換】させて、斬り伏せようとしたその瞬間。


「ヒット、チェック」


 その声で、黒い茎は消え、そして入れ替わるように現れたのが。


「シエン!?」

「攻撃したら殺す!」

「はぁ!?」


 どこからともなく現れたシエンの声に焦るものの、俺の腕はもう止められない。


 今からどう修正しても、シエンに刃が届いてしまう。


 このまま斬ってしまった方が結果的には自分のためになるのでは、と一瞬。一瞬だが! 思わなくもなかったが、そんな冗談(?)を言っている場合じゃない。


「頼む。避けろ!」

「ちっ、この役立たずが」


 俺の叫びでシエンはイラついた表情を見せると、身体の体勢をひねった。


 そして、俺の剣を右手に吸い込ませるような体勢にしたとき、俺の剣はシエンの右手の数センチ前で突然動きを止めた。


 まるで壁を殴ったようなこの感覚は。


「【障壁】か!」

「……からの」


 驚きと安心を込めた俺の言葉に続くように、シエンはぼそりと呟いた。


 そして、ひねった勢いを利用して俺の懐に潜った。


「おら、イってこい」

「おまっ、ふざ――おうぇ!?」


 俺の胸に手を当てたと思うと、全身を揺さぶるような痛みが俺を襲う。


 何かに弾き出されるように吹き飛ばされた俺は、冷静に今の現象を分析していた。


「ブ、【無壁(ブレイクスルー)】!?」


 これを受けて気絶しなかったということは、シエンが手加減をしていたのだろう。


 が、なぜこれを俺に!?


 しかし吹き飛ばされた方向を見て、シエンの本当のねらいに気付く。


 仲間の俺ですら予想外の攻撃、敵であるカミュラさんが予想しているはずがない。


 シエンは俺をカミュラさんのもとへ吹き飛ばすために、俺に攻撃したわけか。


 もっとやり様はあったはずだろ!


 そんな文句を言おうと思って、シエンを見るが、シエンは謝罪どころか、一切の悪気も見せずただ一言。


「さっさと終わらせろ」


 この人間の形をした悪魔め!


 いや、悪魔でももうちょっとしてやったり顔とかするはずだ。それすらもないなんて、コイツやっぱり人間じゃねぇ。


「ちょっとは俺を労れよ!」


 思わずそう恨み言を叫んだ俺は、右手に普通とは違う力を込める。


「っ」


 カミュラさんの息を飲む音が聞こえ、俺の右手はカミュラさんの中心を完全に捉えた。


 そして、グッと足に力を込め、着地と同時に右手の力を解放する。


「【無壁(ブレイクスルー)】!」


 ヴォルガのときとは違ってきちんと手応えもあった。


 核の魔力を捉えた実感もあったし、俺の技と勢いもあって、カミュラさんには内側からの攻撃と同時に、外からのダメージも入ったはずだ。


 ――それなのに。




 目の前のカミュラさんは呻き声を上げるだけで、まったく動かなかった。




「ま、マジかよ……」


 俺ですら手加減したシエンの【無壁(ブレイクスルー)】に吹き飛ばされたのに、カミュラさんはまるで地面に根強い根を張っているかのように動かなかった。


 ダメージがないはずはない。


 カミュラさんの魔力を確実に捉えたし、苦しそうな声も聞いた。


 それなのに。


 目の前のカミュラさんは苦しそうな声、表情を見せるだけで終わった。


 だが、すぐに変化は訪れた。


「うぅぅぁぁぁぁああ!」


 到底表せない悲鳴のような雄叫びをあげたカミュラの右拳が、俺の頬を完全に捉えた。


 まるで女性から放たれたものとは思えないほど硬く鈍い音がした。


「ぐふっ……」


 驚きによる気の緩みもあって、ノーガードでくらった俺は視界が揺らぎ、脳の処理が追いつかず、地面を転がる痛みが全身を駆け抜ける。


 気付いたときには、俺は空を見上げていた。


 ……やられた。完全に芯を取ったつもりが、逆に取られた。


 全身に、力が入らない。


「な、なんだってんだ……。今のは」


 やっとこさっと吐き出した言葉がそれだった。


 のっそりと身体を持ち上げようとするも、腕や足が震えてうまく立ち上がれない。どころか、動くことすらままならない。


 ヴォルガとの激戦のダメージも合わさって、身体は本当に限界だ。


「おい、倒れるんじゃねぇぞ」


 誰かが俺の身体を後ろから支え、シエンの声が後ろから聞こえた。


 シエンが俺を持ち上げて、無理矢理立たせようとしているのだ。


 なんでそこまで、と思ったが。


「見ろ」


 シエンがどこかを指差したみたいで、ぼうっとした頭で目を向けるが、ぼやけてしまってよく見えない。


 ……なんだってんだよ。


「今の攻撃でカミュラの身体にはかなりのダメージが入ったはずだ」

「そんな、わけあるかよ。全然吹き飛ばなかったぞ」

「……見えてねぇのかよ。仕方ねぇな」


 口調はいつも通りだったが、どこか俺を心配しているような声がシエンに似合わなくて、思わず吹き出してしまいそうになった。


「カミュラの全身、内部から植物みたいなものが浮き出ている。おそらく自分自身の身体に植物を植えて、無理矢理身体を動かしていやがる」

「【無壁(ブレイクスルー)】は魔力そのものにダメージを与える技だぞ。そんなことできるわけが」

「魔法で作られた植物だが、植物自体に魔力は備わってないんだろ。だが、その植物は自分の意志でカミュラを動かしていると考えられる」


 なんだよ、それ。まるで自分自身を、マリオネットにしているってことか。


「……まさか、さっきの俺への攻撃も?」

「内部の植物が無理矢理強度を上げたんだろう」

「くそったれ」


 ことごとく【無壁(ブレイクスルー)】が通用しない相手ばかりだな、今回は。


「……今の意味がわかるか?」


 シエンの言葉に俺は「当たり前だ」と頷いた。


 確かにヴォルガもカミュラにも、【無壁(ブレイクスルー)】は決定打にはならない。


 しかし、そのヴォルガと決定的に違うのは、カミュラ自身にはダメージが入っているということ。


 おそらく今はまだ意識があるだろうが、この先、カミュラが意識を失ったとしても、カミュラは止まらない。


 自分が生み出した植物に操られ続けられるのだから。


 自分が死んでも、動き続ける身体。動かされる続ける身体。


「時間を、稼げれば、別にいいんです」


 しかし、それはカミュラ自身が自身に課した責任への謝罪と覚悟の顕れでもあった。


「すべてが終われば、私は、この国の人々は永遠の一部となって消滅します。それまでの我慢です」




 ――それに、皆さんにひどいことをした私がこれくらいじゃ生ぬるいくらいです。




 その言葉に俺もシエンも「ふざけるな」と口を揃えた。


 俺も俺の仲間も、カミュラも、親友(アンタ)に死んでほしくないからここに来てんだ。


「おい、ここで死んだら俺がテメェを殺すぞ」

「ひでぇやつだなおい、と言いたいが奇遇だな。俺もお前に言おうと思ってたんだよ。俺がこんなにも頑張ってるってのに、俺より先に死んだら地獄で殺してやるって」


 俺もシエンもお互いを鼻で笑った。


 今にも倒れそうな自分をたたき起こすように、自分の両手をたたき合わせた。


 使い物にならない左手が熱を出してくれるおかげで、俺はまだ頑張れるのだと思う。


 シエンは自力で立ち上がれるとわかった俺から離れると、ポキポキと首を鳴らした。


「こっからは全力だ。ついてこれねぇとは言わせねぇぞ?」

「お前こそ。ブランクとか知ったことじゃねぇぞ?」


 さぁ、救い出してみせろ。


 この、自分自身に押しつぶされそうな少女を。




ここからが本当に書きたかったところ!

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