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とりあえずここからは任せた方がよくない?

ふぅ……間に合ってない

 トーカの出した答えに俺は、「無理だ。できるはずがない」とは言わなかった。


 認めるのは癪だがバカ馴染みの言うとおりだ。


 やらなければ未来がない。殺るしかないのは事実。


 だが、それだけでもないのも事実。


 トーカとはまだ日が浅いが、トーカの分析能力の凄さは俺の身で実感している。


 そして、他の奴らも同様に、誰も彼もが規格外であることを、俺が誰よりも知っている。


 別に空中で巨大な龍の猛攻を青い鳥と協力して防ぐバカ馴染みだけじゃないんだ。


 他の奴らともまぁまぁな時間を過ごしてきたのだから。


「リオン」

「……準備はできたか?」


 トーカの合図に質問を返すと、トーカは黙って首を縦に振った。


「か、かなり複雑な魔法陣なので、ほ、本当に気を付けてくださいね!?」


 トーカの隣で一番不安そうな顔をしているシュリ。


 トーカの分析力でもっても、シュリの時魔法は異質だったのだろう。


 トーカの顔に僅かな疲労が見えなくもない。


「テッド、地図に不備はないんだな?」

「改めて確認されると緊張しちゃうんだけど。大丈夫だよ」


 先ほど俺も少しだけテッドの地図を見たが、かなり正確だとは思った。


 だが、思っただけで本当に正確かどうかは俺にわかるはずがなく。


 とにかく、今回の作戦で最も重要なのはテッドなのだ。


 重要な部分を任されるのは大抵テッドで、申し訳ないと思いつつも、なんだかんやってくれるのは本当に助かっている。


「イグス、お前も大丈夫だよな?」

「細かいことをやるのは好きじゃねぇが、できないわけじゃねぇ。余裕だ!」


 安心していいのか、注意すればいいのかわからない返答だが、コイツに話は通じない。


 できると言うからにはやってもらわなくては困る。


「まさかこんな大がかりな作戦を思いつくなんてね」

「珍しいな。ケイラがそんなことを言うなんて」


 ケイラが他の人に対して純粋な敬意を示すのはかなり珍しい。


 トーカがいなかったとき、作戦はいつも俺とケイラで考えていた。


 俺の作戦は凡の考えだったから、ケイラの作戦が採用されることの方が多かった。


 それもあって、珍しいと感じてしまったのだろうか。


「別に。私だって自分にない考えを持つ人を否定するわけではないわよ」

「そうなのか」


 ……最後に、フェリアに目配せをすると、フェリアも「こちらも準備はできました」と目を閉じた。


【統治】は無事成功した。あとは自分の意志を届けるだけだ。


 フェリアの仕事はたったそれだけのことだが、しかし、島の人々すべてに自分の意志を飛ばすのだ。


 魔力とは別に、精神力も削られる作業になる。


 目を閉じたのは、最も集中しやすい方法だからだろう。


「失敗は許されない。私のタイミングをしっかり合わせて」


 そんなフェリアをさらに追い詰めるかのような言葉を吐いたトーカだが、フェリアは笑みを浮かべた。


「安心してください。リオン様の前で不甲斐ない格好は見せられませんから」

「……そう」


 なにやら変な火花が飛び散ってるような気もしなくもないが。


 ……というか、待て。俺、今回も何もしてなくないか? 大丈夫だろうか。


「始めるよ」


 そんな俺の無駄な考えを無視して、トーカは一枚の紙をイグスに渡した。


 それはテッドが書いた正確無比な地図。


 島の形はもちろん、凹凸までもが正確に記されたこれ以上ないと言うほどのこの島の地図。


 その地図の島には、シュリの時魔法の魔法陣が大きく書かれており、ところどころに文字が書かれている。


 この部分の線を具体的な数字を用いて地面を削ってほしい、など。


 トーカ曰く、これはスクロールで言うところの魔力の濃度の調整。


 魔法陣を書く際に気を付けるべきは魔力の調整。


 シエンがよく俺に怒ってそう言っていた。


 濃度を変えることで、魔法陣はまったく別の魔法陣になる、やら。なんとか。


 先日のトーカにもそういえば言っていたような。


 普通の魔法陣はすべて同じ濃度だが、超一流となるとあえて濃度を変えることで、通常と変わった魔法を作ることができると。


 シュリの魔法陣もおそらくその類いのものだったのだろう。


 魔法陣を描く線のところどころにオリジナルの変化をつける。


 その変化を、トーカは島の凹凸で再現しようとしているのだ。


「まったく。島の本当の形も見ないで、線を書くことになろうとはな!」


 そう言ってイグスは、地面にバンッと手をつくと、手のひらに魔力を集めた。


 イグスの固有魔法である【凝縮】だ。


 本来、ある一点を中心に物質を集める魔法なのだが、イグスともなればそれだけではない。


 説明を省いて簡単に説明すると、イグスはこの魔法を応用することで、触れたものに自由に線を書くことができる。


 つまり、今イグスは地面に触れているわけだから、この島に自由に線を書くことができるのだ。


 その証拠に、島全体からゴキュリ、ゴキュリと不気味な音が聞こえてくる。


「……すげぇ」


 不意に、ヤンバがそう漏らした声が聞こえた。


「使いようによっては地割れすらも引き起こせるからな。気を付けろよ」


 そう言ってやると、すぐにギョッとした顔を見せて睨みつけくる。


 縁起でもないこと言うな、とでも言いたそう顔だが残念。


 俺がもう経験済みなんだ。


「終わったぞ!」


 イグスが汗を拭ってそう叫ぶと、トーカはケイラとフェリアを見た。


 そして上空で戦っているバカ馴染みも。


「タイミングは私が。王女様はそれにすぐ反応して。ケイラと皆は合図から二秒後に」

「「了解」いたしました」


 まさか本当に地面に、島全体に一つの魔法陣を書くことができるとは。


 最初に言ったように信じていなかったわけではないが、信じられないという思いもある。


 だが、それでもこの方法に一つだけ欠点があるとすれば。


「向き、か」


 島全体に魔法陣を書いたことで、魔法陣が向く向きが決まってしまうこと。


 しかも、この島は過去の遺産によって、魔法陣が真上ではなく斜めに描かれてしまっている。


 その正しい方向に、赤い龍を移動させなければいけないわけだが。


「なにぶん大きすぎて、赤い龍の場所が正確に掴めないし。そもそも文字通り雲の上の存在で、物理的に姿が見えない」


 俺達から見えるのは真っ赤な空と、それに対抗する青い鳥と白い光。


 どれだけトーカの分析力がすごくても、姿が見えないのならどうしようもできない。


「……っ」


 現に、トーカがタイミングを決めあぐねているかのような表情。


 チャンスは一回きり。


 外すことはできないのだから、むやみに合図は出せない。


「どうしましょうか?」

「厄介ね」


 フェリアはともかく、ケイラも焦りの表情を浮かべている。


 打つ手なし。


 ここまできて、さぁどうしようか、ってところか。


「ふむ」


 さて、この状況。


 俺ならどうする? 俺はどうするべきだと思う?


 答えは簡単。


 というか、答えはあってないようなものだ。




「セラフィ! ()()()()()()()!」

『え!? なんだって!?』




 よし、これで大丈夫だろ。


「トーカ、やっちまえ」

「え、でも……」

「アイツがなんとかしてくれるって信じろ。いや、責任を押しつけとけ」

「え……、え?」


 どうするかは知らんけどこういうのはすべてアイツに任せてしまえばいい。


 赤い龍を魔法陣の方向に無理矢理移動させてもいいし、島まるごとを持ち上げて赤い龍に向けるのだとしても。


 とにかくうまくいくのならなんでもいい。


 ここまでうまくいかなかったら、アイツが悪い。アイツだけが悪い。


 皆は頑張った。だけどもアイツは頑張れなかったで済む。


 良く言うじゃん?


 皆は一人のために(オール フォー ワン)一人は皆のために(ワン フォー オール)


 そんなもんだ。


「え、ほ、本当にいいの?」

「やっちゃえ、やっちゃえ」

「この状況でそんな気楽な態度を取れるのは貴方だけよ」

「さすがはリオン様、と言うべきですか?」

「違ぇっての」


 俺は呆れた笑みを浮かべると、トーカの背中を押した。


 迷う必要はない、と。


 トーカもそれで覚悟を決めたようだった。


「王女様、ケイラ準備して」

「本当にやるつもりなの?」

「ケイラ様、もうやるしかありませんよ。こうなったら」

「……なんなのよ、まったく」


 ケイラが頭を押さえ、フェリアが目を閉じる。


 トーカが小さく息を吸った音が聞こえた。


 そして。




「魔力を込めて」




 その言葉を合図に、フェリアが島の人々に合図を飛ばし、その二秒後にケイラが魔力を込めた。


 魔力を込める先は地面に描かれた魔法陣。


 この大きな魔法陣、魔力を込めるのは一人ではどうやっても無理。


 だからここは分担することにした。


 ケイラは三分の二を、他の人が残りの三分の一を。


 ケイラの魔力保有量はどれくらいなんだと、ツッコみたい気持ちはわからなくもないが今は我慢して俺も魔力を込める。


 さて、ここまでやったんだ。


 うまく発動しませんでした、は本当にシャレにならないが……。


「杞憂だったようだ」


 島全体が光り輝く。


 無事発動に成功した。


 あとは敵の位置、もしくは向き。


「別に俺は何もすごいことはしていない」


 作戦を練ることも。


 時魔法を編み出すことも。


 地図を正確に書くことも。


 地面に魔法陣を描くことも。


 膨大な魔力を持っているわけでも。


 島の人々を背負う覚悟を持っているわけでも。


 俺にはなんにもない。




「俺は何もしない。何もできない」




 そんな何もない俺だが、一つだけあることがある。


 俺とは真反対の、なんでも持っているバカがいる。


 それを俺は人より少し知っているだけだ。


 だからさっきも言っただろ?


「できなかったらお前が悪いって」


 そう笑ってやると、空から悲鳴のような、泣きそうな声が聞こえた気がした。


 ……いい気味だ、と付け加えた。


『おりゃぁ!』


 魔法陣の光はその向きのまま上空に向かったが、その声と同時に光がグニャリと、まるで鏡で反射されたかのように軌道を変えた。


 なるほど、そう来たか。


 もともと魔法を斬るバカだ。軌道を変えることもできるってわけか。


 ま、やったのは初めてだろうけど。


 さぁて。


 俺の予想どおり、作戦は功を奏した。


 赤い龍は魔法を直撃した。


 さぁ、いったい何が起こる!?



三時間も遅れてすみません

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読んでいただきありがとうございます
よければ、ブックマークと評価
☆☆☆☆☆ → ★★★★★
をして頂けると幸いです
― 新着の感想 ―
[良い点] いつもバカって呼ぶし悪態を吐くけど、誰よりもセラフィのことを一番信頼してるんだなぁ [気になる点] めっちゃ動きの速いテッドの固有魔法が気になるところ
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