とりあえず王様に会うってことを思い出さない?
城の門の前に着くと、門番が俺達を見て「あっ」と声をあげた。
「お待ちしておりました! 『神の心臓』様方!」
「あら、もうギルドから連絡が?」
「いえ! あなた様方を知らない人なんてこの国にはいませんから!」
「あっはは! お世辞がうまいね!」
絶対お世辞では言ってねぇだろ。
これだけ目を輝かせてお世辞なわけがない。
この門番もコイツらの強さだけに盲信してしまった人か。
可愛そうに。
「王から話は伺っております。今、門を開けますので」
「おいおい! 堅苦しいな、おい!」
おいおい、うるせぇよ。俺達冒険者と違って、相手には立場ってもんがあるんだよ。
心の中だけでそうツッコんでいる間に、門番は門の隣にある、ちんまりとしたドアの中に入っていくと、門がゆっくりと開かれていった。
あの門番を見るのは初めてになるが、この門をくぐるのは何度目かになる。
が、相変わらず緊張がほぐれることはない。
「やぁ、今日はどこを回ろっかなぁ~!」
「わ、私も子どもたちへのみやげ話のためについていきます!」
……この自由人達が何をしでかすか、気が気でないからだ。
テッドはこういういかにもな所にはいると、盗賊時代のことを思い出していつも探検しようとする。
ダンジョンや、洞窟とかならまだしも、王城だけは本当にやめてほしい。
「それじゃ、行ってきます!」
「し、失礼します!」
返事も待たずに城に潜入した二人の背中を呆然と見送ると、俺はゆっくりと門番に向き合った。
「うちのバカ達がすいません」
「いえいえ! 王は別に構わないと言っておられましたし」
「すいません……」
「いえいえ!」
あぁ、これはもう王に諦められたということで間違いないだろう。
後で、ちゃんとあの二人に注意しておこう。
「ささっ! どうぞ、こちらへ!」
思い出したように門番の兵士は俺達を中へと招き入れた。
★☆★
王城に入ると、当然のことだが、いかにも王がいる場所としてふさわしい景色が広がっていた。
見渡す限りの中庭を縦に真っ直ぐ切る広い歩道。
中庭には、二羽の鶏が……コホン、数匹のニジクジャクが歩いているのが見える。
ニジクジャクとは、夜中の二時になると虹色になることから、二つの意味で名付けられた鳥のことだ。ちなみに、飛ぶことはできない。
主に観賞用として買われる動物だが、その買い取り価格は高く、一羽でそれなりの家を買えるほどだという。
「お、あれって俺達が前に捕まえたやつらか?」
「あ、はい。そうです。王がとても喜ばれていましたよ」
「悪い。ちょっとここで抜けるわ」
イグスは見た目通りの豪快な性格の持ち主だが、実は動物が好きという一面も持っている。
動物たちもそれを本能でわかっているのか、イグスはやけに動物に懐かれる。
「面会が終わったら呼んでくれ」
そう言ってイグスはニジクジャク達へと走って行った。
どいつもこいつも勝手なことばかりしやがって。
「私も行きたい!」
「ダメに決まってんだろ」
目を輝かせてイグスの後ろをついていこうとしたバカの首袖を掴むと、引きずるように王の下へと向かう。
まったく……。お前が受けたクエストだろうが。
「た、大変そうですね」
「まったくです」
門番の同情の目を受け止めながら歩いている間も、バカは「リオンのバカ」と言い続けている。
「いいじゃん。別に!」
「黙れ」
「む~!」
可愛いふくれっ面を見せて許しを請おうとしているのかもしれないが、幼馴染の俺にそんな攻撃が通じるわけもなく。
「どうしてもついてこねぇと言うのなら、ここで俺はパーティを抜けてやるからな」
「……仕方ないなぁ」
「ちっ」
舌打ちしたもの、こんなので抜けられるのならとっくに抜けているか。
「ここからは中の者がご案内いたしますので」
「ありがとうございます」
門番に別れの挨拶を告げると、彼は「いえいえ」と軽く頭を下げると、門へと帰っていった。
すると、間もなくすぐに城の戸が開いた。
開いた扉の奥にいたのは、ビシッとした執事服を着た歳の老いた男性だった。
先ほどの彼が、もう連絡をしていたのだろう。
「この度はご依頼を受けていただきまして、誠にありがとうございます。さぁ、王が上でお待ちです」
「さて、鬼が出るか蛇が出るか」
「鬼と蛇がいるの!? 大変じゃん!」
「お前は黙ってろ」
城の中にはいる時点で、人数が半分に減ってしまったがいつものことだ。仕方ない。
王様もこれくらい予想していたはずだし大丈夫だろう。
それに。
「……? なによ?」
「いや、お前がいてくれるだけで俺は十分だ」
「な、何言ってんのよ!? こ、この……リ、リオンの……ばか」
「なぜだか悪口が返ってきたんだが?」
「ケイラ、顔が真っ赤だよ?」
よくわからんが、怒らせてしまったらしい。
自分に何でもかんでも頼るな、という意味だろうか?
そういうことはむしろ俺が言いたいくらいだけどな。
「と、とにかく! さっさと行くわよ!」
「おう」
「わかった~」
俺、セラフィ、ケイラの三人は執事に案内されて、王の間へと向かった。
ときどき聞こえてくる、テッドとシュリの「わあわあ」といった声は俺の気のせいだと思いたい……。




