とりあえず叫ばない?
遅くなりました。
なんどもデータが消え、最初に考えた話とは僅かに違いますが、ボリューム、質と高めになったと思います。
「いったい全体どうなってんだよ、おい!?」
よくわかんねぇ海を相手にしていたと思ったら、今度はなんだ!?
例の地震が起きたら、今度はこの島を流してしまうほどの爆発だって。
「おうおうおうおう!!」
……盛り上がってきたんじゃねぇか!?
興奮を隠せない俺を、ケイラが呆れた目で見てくるとこう言った。
「ちょっとイグス、これは遊びじゃないのよ?」
しかしケイラよ。果たしてお前にそれを言う権利があるのか?
「そう言うケイラだって、興奮してんじゃねぇか? 顔が赤いぞ」
「ちょっ、誤解招くような言い方はやめてくれる!? 私は新しい魔法がアレに通じるのか検証したいだけよ!」
「同じようなもんじゃねぇかっ!」
俺達にとって、未知の相手ほど嬉しいものはない。
俺達が知っている程度の敵など、どれだけ数がいたところで相手にはならないからだ。
数の暴力というのは確かに驚異であるが、絶対的な差の前には無力でしかない。
それはただの流れ作業のようなもの。
だからこそ、俺達は未知の相手を常に求める。
未知の相手というのは、俺達にとっての希望のようなもの。
俺達よりも強い可能性があるということは、俺達の全力をぶつけてもいい可能性があるということ。
少なくとも俺はそう思っている。
俺の親父が昔、こんなことを言っていたのを憶えている。
『自分自身の限界を知ることは、自分自身の限界を更新するチャンスなんだ』
その言葉が正しければ、俺達はまだ誰も限界を行進したことがない未熟者ということ。
だからこそ、未知の相手にはその分だけ期待を寄せてしまう。
「それで、セラフィどうするの?」
俺達の視線がリーダーであるセラフィに向けられる。
ここにリオンがいれば、リオンの指示を待っていたのだが、残念ながらリオンは何かを調べている最中。
俺には到底できそうにない。頭を動かすというのは苦手というわけではないが性に合わないのだ。
まったく。リオンという男をまったく理解できない。
理解できないと言えばもう一つ。
先ほどセラフィが「リオンが私達に何か言っている」と言って、テッドをリオンのもとに向かわせた。
セラフィとリオンは見えない何かで、確かに繋がっている。
そう思わせてくれる言動だった。
しかし、セラフィに関してはこれ一つではないのだから、俺の興味は尽きない。
「う~ん。よくわかんないけど、たぶん敵はコッチじゃなくて、アッチだと思うな」
「その心は?」
「う~ん……勘?」
セラフィの勘だ。
セラフィ自身もわからないそれは『勘』という言葉だけで片付けられる。
それでも毎回当たるのだから信じないわけにはいかない。
それは俺以外の奴らも感じていることだろう。
「セラフィが言うからにはアッチを相手するのはいいけどよぉ」
とりあえずはアレをなんとかすることはわかったが……。
「さて、どうしたものかねぇ!?」
「だから嬉しそうに言わないでくれる?」
これが俺達の日常である。
★☆★
「いったい全体どうなってんだよこの島は、おい!?」
背中の痛みをそっちのけで叫ぶ俺に、テッドは些細なことであるかのように軽く笑った。
「ホント人生、何が起こるかわからないよねぇ」
「こんなんわかるか!」
海の件が解決したと思ったら、今度は空だと?
ふざけんな。
「リオン、話はまだ終わってないよ」
怒りと焦りでどうにもならない俺に、静かに図書館から出てきたトーカが言った。
「この島のすぐ下にあった海底火山が噴火する前兆として地震が起きて、その噴火を止めるために協力を仰いだ青い鳥」
そうだ。だから青い鳥は敵じゃない。
それを伝えようとしたところでこの水蒸気爆発。
爆発だけならまだいい。だが、その後に見えるこの赤い空について。
海底火山が爆発しただけでは説明がつかない現象。
「うん。だから、まだ残ってるよね? 伝承に登場するもの」
ほかに伝承に登場したものってまさか……。
「赤い蛇のことか!?」
「うん」
トーカはそう言って頷くと、遠くに見える赤い空を見据えた。
「リオン、伝承にあることが全部本当だとしたら、最後に噴火したのはいつだと思う?」
「いつ?」
「少なくとも私とリオンが調べた期間、過去八〇〇年間にはなかったよね」
「あ、あぁ。地震という記述すらなかったわけだしな」
「そして、赤い蛇は火山口に投げられ火山と一緒に封印された」
「それがいったいどうしたっていうんだ!?」
「この蛇がもともと熱に強い蛇だったのか、封印されたことで生き延びれたのかはわからないけど。もし生きていたとしたら……」
「生きていたら……なんだよ?」
トーカの変に思わせぶりな話に、汗が止まらなくなってくる。
もしかしたら噴火の熱が伝わってきているのかもしれない。
腕で額の汗を拭うと同時に、トーカは結論を述べた。
「リオン、蛇は一〇〇〇年経てばどうなるの?」
その瞬間だった。
『ぐbkっdsぎyぎぇnおlwルァァァァァァ!!!!』
言葉にできない、しかし怒りの感情だけが伝わる金切り声が島中に響き渡った。
思わず耳を塞いだ俺の目に映るのは、赤い空のさらに上から舞い降りてくる伝説の生き物。
蛇のように長い身体に、魚のような鱗。
トラのような力強い腕から伸びる、鷹のように鋭い爪。
一般的に言われるドラゴンと同じ種として扱われながら、まったく別の生き物としても扱われる生き物。
竜とは異なる龍。
俺もそれこそ、伝説で聞いただけで実物は見たことがなければ、存在するとは今このときまで思ってもいなかった。
しかもなんだ、あれは。
島よりも大きいのではないかと思わせるほどの巨体もさることながら。
「鱗が、燃えている?」
「違うよ。鱗がマグマなんだよ」
「あれはもはやマグマが一つの生命体みたいだよね」
笑えない例えだ。
ずっとマグマの中で封印されていた故なのか、はたまた龍になったことでマグマに対する耐性がついたのか。
はたまたその両方なのか。
どちらにせよ、どうやら元々の赤い蛇という設定を飛び越して、マグマを纏う龍となってしまったらしい。
「それにしても急に周りの気温も上がったね。大丈夫?」
「大丈夫なわけねぇだろ」
俺の隣で畑仕事を追えた老人のように、気楽に額の汗を拭くテッドに強めに答える。
しかし、これだけ離れた距離にいるにもかかわらず、その熱が伝わってくるとなると、いよいよ危険が増してくる。
熱の前にはイグスのような防御は意味をなさない。
どれだけ頑丈な武器であろうと、熱で溶かされてしまえば他の武器と変わらない。
「つうか、距離はともかく、相手がマグマでは攻撃も届かないんじゃねぇのか?」
「届かないわけではないかな。ケイラのように魔法で攻撃したり、僕みたいに熱が伝わる前に戦線を離脱するようにすればできないことはないよ」
逆に言えば、ケイラの攻撃以外は効かないということか?
……二つ目の方は知らん。
そんなことを考えているときだった。
「リオン様っ!」
「フェリア!? なぜ!?」
声に驚き辺りを見渡すと、肩で息をする一国の王女の姿が目に映る。
皆から見られるためのせっかくのドレスが、ところどころ汚れている。
普通であれば、そこまでして俺に会いに来たという事実は嬉しいことなのかもしれないが、今の状況を冷静に判断した結果、俺は厳しくも叫ばずにはいられなかった。
「どうしてここにいる!? 護衛の奴らは!? どこでもいいから家に避難していろ!」
俺には調べることがあり、フェリアの護衛を島の人たちに任せていた。
その護衛がいないということは、誰も守ってくれない状態でここまで来たということだ。
それがどれだけ危ういことなのか、フェリアが知らないはずがないのに。
聞きたいこと、言いたいことを簡潔に述べて危険を伝えるが、俺の考えに反してフェリアは首を横に振ってこう答えた。
「ここに来たのは、リオン様と合流するため。リオン様が図書館に向かわれることは聞いていましたから。護衛の皆さんは先ほどの衝撃から私を庇ったことでケガをしてしまったので、私だけでここに」
「別に俺のところに来る必要はないはずだろ!? さっさと安全なところに――」
行け、という前にテッドが肩に手を置いた。
「いやいや、リオン。口を挟むようで悪いんだけど。たぶん安全なところはないって」
「っ――!」
確かにそうかもしれないが、危険というのはいつどこからやって来るのかはわからないものだ。
この混乱に乗じて、フェリアを亡き者にしようとする奴らだっているかもしれない。
「なら、なおさら頼れるリオンのところに来たことは悪いことじゃないよ」
テッドの言い分は間違っていない。
だが、どこか腑に落ちない。
「はい。それにどうせ死ぬのならリオン様の近くにいたいじゃないですか」
「はははっ。前から思っていたけど、王女様って結構淡泊だよね。冒険者に向いてるよ」
「今はそんなくだらない会話をしている時じゃねぇよ!?」
そうか、わかった。
コイツらは結果だけ見れば正しいことをしているが、過程を見るとくだらない理由なんだ。
だからコイツらの言い分には納得できないのか。
「今は遊んで――ッ!?」
――いる場合ではない、と叫ぼうとしたところで視界の端でトーカの肩がピクリと動いたことに気付いた。
そのおかげで、トーカが口を開く前に咄嗟に動いた。
「え、リオン様!?」
「喋るな、舌を噛むぞ!!」
「は、はい!」
フェリアを守るように抱きかかえた瞬間だった。
『jpyギュbdルwガァtァァァァッッ!!』
マグマの怪物が雄叫びを上げ、口から何かを島に向けて発射した。
その撃ち出されたその何かは、尋常でない速度で島へと向かってきており、それが何かは俺にはわからない。
だが。
「リオン。アレはダメ。マグマの塊だよ」
「具体的には!?」
「あの一撃だけでこの島の四分の一が消滅する」
「馬鹿げてる!」
トーカに当たったところで何も変わらないとわかっているはずなのに、それでもきつめの口調になってしまったのは勘弁いただきたい。
だが、そんなことはどうだっていいのだ、今は。
「テッド!」
「面白くなってきたね!」
「空気を少しは読めバカ野郎!」
「大丈夫だって。たぶん、あれならなんとかなるって」
「どうやって!?」
「今にわかるよ、ほら」
テッドが安心させるかのように、親指でマグマの弾を指差すと、それが合図だったかのように島全体に防御陣が張られる。
シュリの防御魔法だ。確かにあれなら防げるはず。
しかし、その予想はあっさりと裏切られる。
数秒間だけ受け止めた防御魔法だったが、逆に言えば数秒で打ち破られた。
多少勢いをなくしたとは言え、その灼熱の塊には落下したときの衝撃など大した意味をなさない。
問題はあのマグマをどうするか、だ。
だが、そう思ったのも束の間。
「僅かな時間を稼げれば十分だよ」
空中に五重の魔法陣が浮かび上がり、その魔法陣がまるで網のようにマグマを受け止めた。
と、思った直後。
「なんだよあの魔法は!?」
「……凍った?」
マグマであったそれは、魔法陣にくるまれたかと思った次の瞬間、トーカの分析が追いつく間もなく氷の塊へと変貌した。
「凍ってしまえば後は簡単だよね」
氷の前に立ちはだかるは大男。
熱には負けるが、氷というある意味物理的な攻撃では、あの男に傷一つつけることは敵わない。
しかしそれでも、大きな盾とはいえ、その数十、下手すれば百倍以上の大きさを誇る巨大な氷。
本当に受け止められるのか。
そう一瞬よぎったが、男は身体ごと盾をふり回すことで巨大な氷を海へと投げ飛ばす。
なんとか一撃は防ぐことはできた。
「やりましたね!」
「……」
腕の中のフェリアが嬉しそうな声をあげる中、俺は冷や汗が止まらなかった。
それもそのはずで。
「三人でようやく一撃を防げるってマズいだろ……」
「……ま、そうだねぇ。今回ばかりはねぇ」
規格外のアイツらでさえ、一発の攻撃を防ぐのにギリギリな状況。
これからさらに攻撃が強まったら……と思ったときに限って。
そういった悪い予感はいつも当然のように的中する。
『gdyふぁrykhxジャmッッッ!!』
攻撃を防いだことに対して怒っているのか。
これでならどうだと言わんばかりに、長い図体を震わせて天高く飛翔する。
それはまるで、雲という滝を登っているようで。
いったいいくつの逸話を再現しようというのか。
「リオン、来る」
「何が!?」
「さっきと同じ攻撃だけど、すごい数。それに今度は垂直に」
「それは無理だっ!」
イグスの防御でも、横からの攻撃を逸らすので精一杯だった。
なのに今度は垂直。イグスの馬鹿力でもさすがに無理だ。
というか、普通に数で負けてる!
「まるで、この世の終わりみたいだね」
「冗談にならねぇんだよ!」
伝わってくる熱波。
そして雲から落ちてくる無数のマグマの弾。
……。
頭が、真っ白になった。
これはきっと絶望を越えた先にある諦め。
……クソッ。
こんな感覚は久し振りだが、何度経験しても不愉快だ。
だが、今回ばかりは仕方ない。
「……ちまえ」
禁断の言葉を口にする。
「やっちまえ、セラフィィィィィッッッッ!!」
恥も承知で名前を叫んだ次の瞬間。
――やっちゃうよ。
そんな幻聴とともに、島から一条の光が空に登る。
その光は真っ赤な空を染め直すように白色を放すと……。
さっきまで降り注ごうとしていたマグマ達はどこにやら。
跡形もなく消え去っていた。
雲の上にいるであろう真っ赤な龍も、これにはさぞかし驚いたことだろう。
……だから。
「ねぇねぇ、リオン。久し振りに私のこと呼んだんじゃない?」
俺はこう吐き捨てる。
「テメェのことなんてお呼びじゃねぇんだよ」
おかげさまで、少しずつ評価され始めてきました。
これからも頑張っていきたいので、ブクマ、評価、感想、質問、意見等よろしくお願いします。
意見は「こんな話が見たい」とかですね。そのまま書くわけにはいきませんが、参考に話は作るかもです。……といっても、本編はほとんど完結まで細かいところはまだですが、シナリオ自体はできあがっているのですが。
けれどもSS、番外編として作るかもなので何かあれば遠慮せずよろしくお願いします




