とりあえずお前らの普通をなんとかしない?
新しい仕事~、とってきたよ~!
という一声に、嫌な予感を感じながらも渡された紙を受け取ると、こんな文章が目に映った。
『至急! このクエストを受容されたときをもって王城に来られたし! 王城にて詳しい説明を行う』
…………軽い気持ちで受けるような仕事ではないと、なぜわからないのか不思議でならない。
「お前さ、この文の意味わかってる?」
「あ! 馬鹿にしないでよ、リオン! 私だって文くらい読めるんだよ!」
そういうことじゃねぇよ。
「そうじゃなくてだな。お前がこの文の意味を――」
「私が文字を読めるようになったのは昔からだからね!」
「……知ってるよ、それくらい」
お前が文字を読めるようになったのは、一歳の時。
その話を他の人が聞く度に驚いて、それに対して俺が何回隣で頷きを返したと思っているんだ。
「意味がわかってんの?」
「意味ってなにが? だから王城に行けばいいんでしょ? 招待されたんだよね?」
「文字は読めても、文は読めない奴はそういない」
「え?」
「いや、もういい」
こんな勇者の幼馴染であるという肩書きを今すぐのでも消したい。
そして、いつかはこのパーティから抜けたい。
「王城に今すぐ向かえっていうことは、それほど緊迫した状態ってこと。つまり、このクエストは国にとっても重大なことっていうことよ。そうでしょ、リオン」
遠い目をしていた俺を現実に帰すように、後ろからケイラが現れた。
そして、俺の持っているクエストの紙を後ろから覗き込んだあと「なるほどね」と何かに気付いたように頷いた。
「この文字、国王の書いた文字ね」
「そうなの?」
「えぇ、間違いないわ」
と、ケイラは言っているが、彼女は国王様の書いた字を実際に見たことは一度もない。
にもかかわらず、どうして国王様が書いたものだとわかったのか。
理由は簡単。何度も言っているが、コイツらに常識を当てはめてはいけない。
ケイラは、あらゆる文字や図形から、相手が一体何を思って書いたのか、何を意味しているのかを瞬時にくみ取ることができる。もちろん、誰が書いたのかだって当然わかる。
そんな特技を彼女は持っている。
意味がわからないだろう?
でも、事実だ。
事実なのだが、こんなのはまだ序の口。
コイツらはその程度の器でないと、何度言えば正しく理解してくれるだろう。
「この文字から察するに、焦っているのは間違いないけれど、どちらかというと……怯え、かしら?」
「おいおい。これはまた物騒な仕事になりそうだな」
「王様が怯える仕事かぁ。ちょっと楽しみだったり」
「油断はいけないですよ、テッドさん」
どうやら買い出しに行っていたイグス、テッド、シュリの三人がちょうど帰ってきたようだ。
三人の手の袋には、次のクエストに行くための道具が揃っている……と思うだろ?
違うんだぜ。コイツらの言う『買い出し』ってのは――
「今日は大量に【オルゴンリザード】が手に入ったぜ? 食ってからいくか?」
コイツらにとっての『買い出し』は『狩い出し』なんだよ。
しかも、今狩ってきた【オルゴンリザード】だって、クエストの内容だからな?
これでお金と食材の両方を手にしてきたわけだけど、これのどこに『買い出し』要素が含まれているのか俺にはさっぱりわからない。
それと。
「至急だって言ってるだろ……」
相変わらずこのイグスはバカだ。
それでも知識テストを行うと、そこそこ頭がいいというのだからよくわからない。
「とりあえず王城に食材を持っていくのはアレだから家に置いて、それから向かうとしましょう」
「え、別によくない? ね、リオン?」
「なぜそこで俺に訊いた? 普通によくねぇから」
この幼馴染がなんでもかんでも俺に訊くせいで、俺までそういう輩だと思われたらどうするつもりなんだ。
「あ、ならついでに教会の子どもたちにもお裾分けしていいですか? お腹を減らしているかもしれないし」
「いや、だから急ぎの用件だって言ってるだろ。そういうのは後回しにしてくれ」
「それくらいはいいじゃない。子どもたちが可愛そうじゃない」
「まぁ、僕達は冒険者なわけだし。ちょっとくらい王様に逆らってもいいと思うんだけど」
「いいわけねぇだろ。お前ら国王様をマジで何だと思ってんの?」
それに教会の子どもたちなんだが、少しくらい飯を与えないくらいでなんだって言うんだ。
これをほかの人が聞けば、俺という人間がたいそう無慈悲な人間だと思われるかもしれないが、当然、俺にも言い分がある。
シュリがいつも行っている教会。
確かにあれは、昔はお腹を空かせた親のいない子どもたちの集まり場だった。
見るからにやせ細った身体をしていた。
だけど、今はどうだ。
ほぼ毎日お裾分けをした結果、あの細々とした以前の面影はまったく消えて、今ではそこらの一般庶民以上に膨れあがったお腹をしている。
そのお裾分けだって、そこらの人達が食べるものとは価値が違いすぎる。
俺はあの教会をニートの住む建物としか思えないんだけど。
そして、子どもという名の洗脳をかけられたようにしかお前らを見ることができないんだが。
ここはお前達のためにも、子どもたちのためにも、距離をもう少し取るべきではなかろうか。
「ほら、さっさと飯を置いて行くぞ、王城に」
「は~い」
「リオンがそこまで言うなら仕方ないわね」
だからさ。
一応お前らのリーダーはこの幼馴染だよな?
「お前も少しはしっかりしてくれ」
「えぇ~、別にリーダーが皆をまとめる義務はないわけだしいいじゃん」
暗黙の了解というものを知らねぇのか。
「はぁ……」
「ため息は不幸を呼びますよ、リオンさん」
「あぁ、そう……」
不幸だからため息をつくのだと俺は思うけどな。
どっちでもいいよ、別に。
「それにしても」
国王様から直々のクエスト。
今からでもわかる。
「嫌な予感しかしねぇ」
コイツらとの日常はこんなのばっかりだ。
イグスの防御と同じくらいの鋼鉄のメンタルを持っている気でいます。
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