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とりあえずこれでハッピーエンドじゃない?

最後は短めです!

 ――いろいろ、悪かったな」


 王様との交渉が終わった帰り道、俺はバカ達にトーカを家まで案内させて一人、城の裏に来ていた。


 城の周りは城壁に囲まれており、城の裏であってもそれは例外ではない。


 にもかかわらず、俺は誰もいるはずのない城壁の向こう側に向かって、壁に寄りかかりながら真っ先に謝罪の言葉を口にした。


「いいえ。大丈夫ですよ」


 返ってきたのはさっきの会合で最も活躍した人物、フェリア王女の声だ。


「と言ってもな……」

「私が気にしていないと仰っているのですから、リオン様もお気になさらないでください」

「そう……だな」


 フェリアにはいつも借りばかりを作っているようで本当に申し訳ない。


 今回のことにしたってそうだ。


「どうもお前に頼ってしまうな。王様と会うときは毎回」

「ぜひ頼ってください。お爺さまだって人間ですから。嫌いな相手方との話では喧嘩しますよ」

「今回の一件で、俺への好感度がまた下がっちまったようだしな」

「いえいえ。私の中のリオン様への好感度はうなぎ上りですよ?」

「お前じゃなくて王様の好感度だ」


 結局、俺が宣戦布告をした後、フェリア王女がこう言ったのだ。


『これは私がお願いしたお依頼となっていたはずです。ですから、ここは私の顔を立ててはもらえませんか? お爺さまとリオン様』


 あの状況では仕方ないと言えば仕方なかったんだとは思うんだけどさ。


 いかにも俺が代表みたいな感じでは言わないでほしかったな。


 何度も言うけど、俺達のパーティのリーダーはバカ馴染み(セラフィ)だから。


『こういうのはどうでしょう?』


 フェリア王女が俺達の中間の意見を提示した。というかさせたんだけど、俺が。


 まずは、これはもはや俺達が宣戦布告する前に決まっていたことであるオメルガとの同盟交渉をこれから行っていこう、ということ。


 そして次に、トーカについての処分だが。


『私達は兵力増強のため、オメルガの技術を何としてでもほしい。けれど、そのためにトーカ様の安全を損なうようであればリオン様達は私達を容赦なく殺してしまう。要約すればこれで間違いないですよね?』


 まぁ、殺すとまでは言ってはないけど。


 けど、俺じゃなくてアイツらだったらやるかもしれないよな。


 いつになってもアイツらの面倒を見るのは疲れる。


 現にアイツらのことを一瞬でも考えただけでこんなにもため息が出てるわけだし。


『では、トーカ様の安全を損なわない限りで、私達に協力してはもらえないでしょうか?』


 そのフェリア王女の案に、俺はこうして乗った、というわけだ。


 つまり、トーカが知りうる情報をすべて国に渡すことになった。


 自分のことくらい、自分だったら知っているだろう、ということ。


 まぁ、その辺はね。


 俺との戦闘中に自分の中身を解析して、暴走を自ら止めたわけだし。自分の身体のつくりをトーカは当然知っている。


 しかし、トーカは自分の秘密を隠すかもしれない。


 そこでフェリア王女は。


『では、リオン様方の誰か一人を人質としてはどうでしょう?』


 定期的にトーカは王国の技術局に顔を出して検査する。


 もちろん、そこでは悪いことは一切しない。カウンセリングと感情のテストを行う程度。


 そのとき、人質として誰か一人王城で待機する。


 もしトーカが途中で裏切るような行動、もしくはテスト結果が出た場合、その時点で人質に手をかける。


 とまぁ、こんな感じだ。


『その人質は……。そうですね……』


 そこでフェリア王女が唇を舌で舐めるという王女らしからぬ行動で指名して相手が……。


「なんで俺なんかにするかねぇ」

「リオン様しかいませんよ」


 いや理屈はわかるよ。


 確かにアイツらを人質にしたところで、アイツらが死ぬことなんてあり得ないし。


 そもそもトーカのテスト中、アイツらが黙って待っていられるとは思えない。


 セラフィとイグスは絶対何か壊すに決まってるし、テッドとシュリは何か盗るのかもと気が気でならないし。


 必然的に俺しかいないわけで。俺が一番適した人質であることもわかってはいるんだけどさ。


「なんで俺にするかねぇ」


 同じ言葉を二回繰り返すと、壁の向こうでクスクスとフェリア王女が笑う声が聞こえてくる。


 そんなにおかしいことを言ったか?


 フェリア王女は笑いながら、俺に言う。


「待っている間、私とお話しできますよ?」

「あぁ。それは……まぁ」


 悪い話ではない。


「お前みたいな可愛いやつと話せるのは得だな」

「お褒めに預かり光栄でございます」

「それは皮肉でよく使われる言い方じゃねぇか。なに? 嫌なの? 俺に褒められるの」

「まさか。むしろ顔が火照ってしまったくらいですよ」


 そういうのを平然と言うから本当かどうかよくわかんねぇよ。


 でも楽しそうに笑っている声だけははっきり聞こえるから、マイナスの感情を抱いているわけじゃないのはわかる。


「これで前よりも多く話せますね」

「……まさかと思うけど、それを狙ってたわけじゃないよな?」

「どうでしょう? 少なくとも、会合が始まったときにはもうそうなるだろうとは思ってましたよ」


 少なくとも、ってことはまさか。


「クエストを依頼した時点で? いや、王様が依頼を出す前から?」

「さて、どうでしょうね」

「怖ぇよ、お前」

「お褒めに預かり光栄でございます」

「それは皮肉か!? どっちだ!?」


 クスクスと笑う声が抑えきれなくなってきたのか、少しずつ大きくなってきている。


 あぁ、もう。どいつもこいつも俺を振り回しやがって。


 意図的か無意識にかの違いだけだ。どっちも変わんねぇよ、まったく。


「……」


 宙を見上げると、きれいな月が俺達を照らしていた。


 その光が、目印の光という名を持つ少女を思い浮かばせた。


 ……そろそろ行くか。


「もう行ってしまうのですか?」


 俺が壁から背を離した途端に、悲しそうな声が聞こえてきた。


 なんだよ。どうせまたすぐに会うだろ。お前が提案したとおりに。


「帰りを待っているバカ達がいるからな」

「そう、ですよね」

「安心しろ。お前もバカだから」


 王女にこんな暴言。王様にはもちろん、兵士にも知られたら打ち首もんだな。


「……はい」


 それでもこうして嬉しそうな返事を返してくるのがこの王女(バカ)だ。


「リオン様」

「ん?」


 俺が数歩踏み出したところで、少女は言った。


「今、幸せですか?」


 その言葉に俺は鼻で笑ってこう返す。


「いいや、不幸だな」


 俺の返事に満足したように、壁の向こうの気配が遠のいていく。


 ……まったく。


「とりあえず帰ってさっさと寝るか」


 平凡な人間はそんなもんだ。



とりあえず区切りよく次に幕間を挟んでもよくない?


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