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とりあえず俺に頼るのはやめない?

書きたいこと書き殴ってたらいつの間にか長くなってた……。

 それから数日。


「せっかくオメルガに来たんだし、最後に観光でもしないか?」


 そう言ったイグスの言葉を俺達は。


「「「却下」」」


 この一言で黙らせて帰りの車に乗った。運転手は毎度のことながら俺。


「え、いいじゃん! しようよ! 私達はずっと追われてたんだよ?」


 一人イグスと同じようなことを言っている空気の読めないバカも置き去りにして。


 だいたいお前らが最初に壁を破壊しなかったら、俺達はもっと静かに潜り込むことができたんだ。


 お前らが遊べなかったのはお前らの責任。


 それに、この国の裏はどうにかなったが、お前ら二人に関しては表の兵士らが未だ捜索中だ。


 捕まることはなくても騒ぎになるのは間違いない。


「リオン」


 ただ、行きと違うのは、俺の隣、すなわち助手席にトーカが座っているということ。


 トーカが俺達の国に行きたいって言うから乗せたんだけど、これは拉致という扱いになってないよな? 大丈夫だよな?


 今さら何を、と思うかもしれないが、俺にとって前科はいろいろマズいんだよ。


 このパーティを抜けたあとの就活が大変だからな。


「本当にいいの?」

「それは俺達の国に行くってことが、か?」

「うん。私はだって……ほら」

「他に行く場所なんてないんだろ?」

「それは……」

「他に行く場所がないってなら、来るだけ来ればいいんじゃねぇの?」


 トーカはどこか納得していないようだが、俺の言い分も少しはわかってくれているらしい。


 それからは大人しく俺の隣で座っていた。


 ちなみに後ろの方では。


「あ、私トランプやりたい!」

「いいわね。何にする?」

「男は黙ってブラックジャック!」

「イグスはいつもそう言うけど、一度も勝てた試しがないよね」

「うるせぇ! 今日は勝てる気がするんだよ。勝てる空気が俺を包んでいる!」

「それ、前も言ってたよね」

「わ、私は皆さんの好きなものだったらなんでも」

「それならトランプタワーだね!」

「この車の中でやる遊びじゃないわよ……」

「いや、待て! その不可能を可能にしてこその神の心臓(ゴッドハート)!」

「うん、それ面白そうだね」

「わ、私の魔法でなんとかできるかもしれません!」

「私がタワーを建てるからね!」

「仕方ないわね。私も少しだけ力を貸してあげるわ」

「……はぁ」


 お前らは少し黙るってことを覚えろ。


 車の中でも騒ぎ方題しやがって。運転中だから、何かあっても俺は何もしてやれねぇからな?


 少しでも危ねぇことしやがったらその場で叩き出すからな。


「……」


 チラリと、助手席のトーカに目を向ける。


 トーカは無表情で後ろの席を覗いていた。


 悪いな。うるさくて。けど、これがアイツらの日常なんだよ。


 そう言おうとして、その前にトーカが。


「……私もやりたい」


 ……マジですか。


 ★☆★


 オメルガから帰国して、俺達はそのまま王城へと向かった。


 相変わらずバカ二人が帰ってくるなり、久し振りにあの店に行きたいなど、武器を作りたいなどと自由奔放極まりないことを口走ったが黙殺した。


 そして、今、王城にて。


 王様の前に跪く俺の前で、トーカを除く他五名がいつものように王様と口論を始めていた。


 これが「いつものように」と表現できてしまえる時点で、無礼極まりないことであり、俺の心中を察してほしい。


「なぜオメルガをそのままにしてきた!?」

「滅ぼすほどの理由はないでしょう?」

「あるであろう! この国のためにもだな!」

「オメルガの裏で行われた研究がこの国を脅かしていたのであって、その研究を潰した以上、オメルガを危険視する必要はないと思うけど?」

「しかしだな……!」


 こっちが売り言葉で、相手が買い言葉。


 どうして王様とあえて喧嘩しやすいような言葉を選ぶの?


 お前一応、前は違う国の賢者として仕えていたはずだろ。


「それに、メリットはあるはずよ」


 喧嘩は売っても、交渉をきちんと持ちかけるところは賢者らしい。


「メリットとは?」

「オメルガと同盟結べばいい」

「……ほう」


 王様が少し笑ったことに俺も、そして当然ケイラも気付いていた。


 この交渉は間違いなく乗ってくれるだろう、と。


「オメルガの魔動具開発の技術をこちらに伝授させる。この国にも魔法がうまく使えない人は大勢いるわけだし、魔動具を取り入れるだけで国民からの支持は急激に上がるでしょうね」

「あっちはこの同盟に賛同してくれるのか?」

「あっちは兵器もないし、開発の頭も失った。自分達を守ってくれる者がいないのよ。今、同盟を申し込めば簡単に首を縦に振ってくれるわね」


 それに、フリースナイが死んだことを知っているのは現時点で俺達だけ。情報が出回る前だったら同盟を結ぶのはそう難しくない。


 逆に、遅くなれば遅くなるほど、他の国がオメルガを取り入れようと、最悪そこで戦争を起こさなくてはならなくなる。


 そう説明するケイラの話を王様が「なるほど」と頷く。


 これはもう間違いないだろう。


 俺とケイラは互いに「やったな」と目を合わせて頷く。


 しかし、王様の次の行動は「わかった」という返事ではなく、トーカを指差した。


 それに対し、トーカがビクリと肩を揺らし、俺の背中に隠れようとするが、残念なことに俺は腰を落としているので、うまく隠れられない。


 あと俺の後ろに隠れられても……。紙防御だから。


「なら、それ(・・)もいいであろう?」


 トーカをそれ(・・)と呼んだのは明らかに意図的だった。


「それ、とはなんですか?」


 ケイラもそれに気付き、鋭い視線を王様に向ける。


 いや、本当。お前らって王様を何だと思ってんの? そこらのおじいちゃんじゃないんだぜ?


 けれど、王様もそれなりの経験をしてきているのか、まったく怯む様子がない。


「兵器はおぬしらが壊してしまった。つまり、残った兵器はそれ(・・)しかない。それを技術局に渡して解体すれば、我々も魔動兵器を手にすることができる」

「それはつまり、オメルガのように人間を材料にする、ということで?」

「まさか。人間を材料にする気はない。しかし、それ(・・)をまずは解体しないうちは兵器を開発できないだろう? さぁ、それ(・・)を寄こせ」

「お断りよ」

「……なに?」


 きっぱりとした拒否に、王様が眉を細める。


 それに対し、ケイラは眉尻を上げて怒りの表情を見せていた。


「一つ聞くけれど」

「なんだ?」

「トーカを解体したら、トーカはどうなるのかしら?」

「すみずみまで調べさせてもらうんだ。どうなるか言う必要が?」

「……そう。なら、なおさら渡す気はないわ」


 ケイラが俺を含め、トーカを守るように前に出た。


 ケイラ、俺、トーカ。


 おぉ、初めて俺が一番安全なポジションにいる気がするな。戦闘中も含めて。


「何のつもりだ?」


 王様が問いかける。


「別に。渡す気はない。それだけのことよ」

「だからそれが何のつもりだと言っている!」


 憤慨しているのは王様やケイラだけではなかった。


「悪いが、今回はこっちにつかせてもらうぜ?」

「ま、今の発言は聞き逃せないね」

「わ、私も少しカチンと来ました!」

「うん、ちょっと私も許せないね!」


 イグス、テッド、シュリ、セラフィ。パーティメンバーが戦争をおっ始めようというかのように、ケイラとともに立ちふさがる。


 だが、それだけでは収まらなかった。


 周りの兵士やお偉い役職の方々もだ。


 王様の命令は絶対と思っている方々にとって、王様に逆らうことは、自分達に逆らうよりも重罪。その罪を咎めようと全員が全員、怒りの声をあげ始めた。


 マジで戦争かもしれん、とボソッと思う。


 トーカが恐怖を感じて俺の袖を強く握るのも感じていた。


 この中で唯一冷静なのは、俺とフェリア王女だけかもしれない。


 フェリアの場合は、こういうのをどこか遊び半分で見学している気がするけど。いや、どっからどう見ても遊びじゃないんですけど。


「それにさっきからあなたはトーカを何だと思っているの?」

「それはただの殺人兵器だろう! まさかおぬしらはそれを人間だと言うつもりか!?」

「当然よ! トーカは心もある。感情がある! どう見ても人間よ!」

「ふんっ! 心があるから人間だと? そんな不確かなもので定義されるものではないわ!」

「心は不確かなものじゃない! 心は確かに存在する!」

「賢者とあろうものが非科学的なものを信じてどうする!」

「賢者は科学者じゃないのよ! 非科学も科学も私はすべてを肯定する!」

「話にならん! それ(・・)は解体し、情報をこちらに与えるためのただのものだ!」

「違う! トーカは人間よ! ずっと苦しんできた人間に、再び苦しみを与える気はない!」

「いいや! そんなものは人間ではない!」

「人間よ!」


 口論が白熱していくのを俺は黙って見ている。


 ケイラや王様だけじゃない。他の奴らも参戦して口論がさらにさらにと熱を増していく。


 それを、俺は黙って見る。



 コイツらはいったい何を言っているのか、と。



「リオンからも何か言ってやってよ!」

「……んあ?」


 ぼうっとしていたせいで、セラフィの頼みに一瞬反応が遅れた。


 そして気付くと、仲間達が一斉に俺のことを黙って見つめている。


 俺だったらなんとかしてくれる、と脅迫じみた信頼を押しつけて。


「……リオン」

「トーカ」


 トーカも俺に何かをすがっていた。


 別に俺に何の力もないというのに。


「はぁ……」


 ゆっくりとため息を吐く。


「仕方ない」


 その吐いた息を戻すように大きく息を吸って全体に言い放った。


「さっきからいったい何を言っているんだ、お前らは?」


 さっきから水掛け論ばかり。


 トーカが人間だ、人間じゃないとか。


 心がある、心は関係ないとか。


 地位や役職だとか。


 黙って聞いていれば、ケイラは理屈を含んだ論、いわゆる理論で。王様はそれを否定する理屈のない空論。


 理論vs空論。


 この構造はどう考えても水掛け論になるとなぜわからないのか。


 そもそもお互いの土俵が違うのに、どうして土俵で戦おうとしているのか。俺にはまったくわからない。


「どいつもこいつもバカしかいねぇのか、ここには」


 あえて全体に喧嘩を売るような口調をする。


 全体に俺の話を聞いてもらうために。


「揃いも揃って論点をずらしやがって。面倒くせぇ」


 ケイラの唱える理論は確かに正しいのかもしれない。心がなければ人間とは言えないのかもしれない。


 理屈の伴った理論には説得力が生まれる。


 なぜなら理屈が論の中に入っているからだ。当然だ。


 しかし、理論にはある弱点もある。


 理屈を無視、もしくは、排除されてしまった場合、それは理論ではなくなる、ということだ。すなわち、中身のないただの空論になってしまう。


 机上の空論、という言葉を知っているだろうか?


 どんなに机の上で並べた理屈も理論も、実際の場では役には立たないという意味だ。


 ケイラがさっきから言っているのはそれと同じだ。


 それどころか、机の上で並べてすらもいない。そんなもの空論ですらないかもしれない。


 結局、ケイラはただの空論を理論の場に並べて、空論を空論の場で並べて口論する王様達に挑もうとしていた。


 理論の成り立たない空論より理論を無視した空論が強いのは自明の理。


 根本である理屈が破壊されているんじゃ、根本が空論である王様の空論にはどうやっても勝てない。


 なら、どうすればいい? なに、簡単なことだ。


 まずは土俵を合わせるところから。


「人間か人間じゃないかとか、心がどうとか、役職とか地位とかを話にきたわけじゃねぇんだよ、俺は」


 土俵を合わせたら、その土俵にあった論を出す。


 今出すべき論は理論じゃねぇ。相手が空論ならこっちも空論を出すだけだ。


 嬉しい、楽しい、悲しい、憎たらしい、とか。理屈がそもそもない空論をだす。


 そういう空論ほど相手は否定できない。当然のことなんだ。誰が人の想いを否定できる?


 想いはその人だけが感じられるもの。他人が否定できるわけがない。


「俺達はオメルガと同盟を結んだらどうかと提案しにきただけだ」

「今さらそれを言われなくても――!」

「俺は、トーカを仲間だと思っている」


 王様が初めて苦虫をかみつぶしたような顔をした。反論ができないから。


 空論を出したら、次はそれを理屈で補強する。空論を守るために理論を使う。


 だが間違えるな。


 決して空論の中身を補うためじゃない。外側を守るんだ。根本はあくまで空論だ。


「確かに、あんたらの言い分もわかる。俺だってトーカが人間かと言われれば「人間とは言えない」と答えるかもしれない」


 相手の理屈で外側を守れば、相手はそうやすやすには崩せない。崩したら、自分達の守りも崩れてしまうからだ。


「だが、それがどうした? 俺はトーカが人間だから守ったんじゃねぇよ」


 人間じゃなくても人は命を張れる。


 他人にとってはただのぼろっちぃものも、人によってははそれを宝物と思う人もいる。


「さっきも言ったが、あんたらの言い分は百も承知だ。だから、あんたらが俺達からトーカを取ろうとしてもなんら構わねぇよ」


 仲間を傷つけるやつは全員敵だ。冒険者は仲間との繋がりを最も大切にするバカだ。


 俺が腰から剣を抜くと、それに反応して周りの兵士達も身構える。


 だが、関係ない。


 俺は剣先を王様に向けるとこう宣言した。


「だが、そのときはこの国が滅ぶことを覚悟しろよ?」


 これはある意味宣戦布告。


 この王様を、この国に喧嘩を売ったのだ。ただの平民が。平民とその仲間達が。


「っ……!」


 後ろでトーカが息を飲む音が聞こえる。


 そして、俺を中心にバカな奴らが武器を構える。


 いつでも来い、と言わんばかりに。


「さぁ、どうする?」

「な、なっ。なっ……!」


 王様の顔がみるみる真っ赤に染まっていく。


 あぁ、ヤバい。マジでキレさせちゃった。後悔はしてないけど……後悔はしてないけど、やっちまったぁ、と反省はする。


 うわぁ。別に王様は嫌いじゃないけど、王様により嫌われたいわけじゃなかったのに。


「さすが、リオンだね!」


 うっせぇ、バカ。誰のせいでこんなことになったと思っていやがる。


 王様はわなわなと震えた後、俺達を睨みつけて叫ぶ。


「この反逆者共を捕らえ「少しお待ちいただけませんか!?」――ッ!?」


 王様の声を遮ったのは、またしてもフェリア王女だった。


 うん、そろそろ参加してくると思ったよ。


 というか、参加してもらわないと本当に戦争だったから。


 フェリア王女は王様に見えないように俺に軽くウィンクすると場を落ち着かせるような声で言った。


「では、こういうのはどうでしょう?」


 と。


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