とりあえず勝てるわけなくない?
何かわかりづらい表現がありましたら遠慮なくどうぞ!
特に戦闘の描写は難しく、わかりづらい可能性が高いのでぜひ!
作者は執筆するのに夢中で、意外とそういうミスが多いものなんです……。
俺は通路を走りながら後方を振り返る。
トーカの姿は見えないが、一直線の道は危険だ。できるだけ早く広い部屋に移動しないといけない。
最後のリュックの中から次の道具を取り出す。
最後、というのはそのままの意味だ。
あらかじめあの広い部屋にたどり着くことがわかっていたんだ。トーカを救出する前に各所に道具を分担して置いていたのだ。
それもあってトーカの救出も少し遅れたのだ。
「これで終わりか」
後ろに古びた紙を投げると同時に、光線が俺に襲いかかってきた。
もう来たのかよ。相変わらず早すぎだろ。
トーカの解析力は俺の想定をはるかに超えていた。
魔動具関連のことは当然頭に入っていると思っていた。
だから昔ながらの道具であればトーカは情報もないし、ある程度の時間を稼げると思ったのだが。
「まさか自分の知らないものにまで完璧に対処しちまえるとは」
今までの俺の行動から、こういう道具を持っているだろう。そういう道具があるかどうか知らなくても、あると考えれば怖くはない。
そんな感じの思考回路だろうか。怖ぇな、ホント。
もしかしたらトーカほどの解析力があれば、それ以上の道具を自分で作ることも可能なのだろうか。
一直線に向かってきた光線だったが、突然壁に憚れたように打ち消された。
俺が最後に投げた紙の効果だ。
狭い範囲に見えない壁を作る魔法を込められた紙、いわゆるスクロールというものだ。
その壁はかなりの強度を誇る。
しかし、無敵というわけでもない。
三つほどの光線を防いだ壁だったが、次の瞬間に、そのスクロール自体を光線が撃ち抜いた。
そう。壁は丈夫でも本体はただの紙。簡単に破られる。
そして、スクロール自体に少しでも傷が入ってしまったら壁は消える。
壁が持続していた時間、僅か一秒足らず。
「だが、もういい」
思った以上に時間稼ぎができなかったが、なんとかここまで来ることができた。
「ここで迎え撃つ」
そこは観客席のない闘技場のような場所だった。屋内にかかわらず地面がある。人工的に作ったものだ。
ここはトーカが実験としてたびたび使われていた場所だ。
地面を見ると、誰かの涙のような跡があり、他にも血の染みのようなものまで見える。
ここでどのような実験をしていたのか、レポートの中では知っている。
しかし、きっとそれ以上の苦痛をトーカに与えてきた場所でもあるのだと、ここに実際に来て感じていた。
「人間を作るやつが人間をやめてどうすんだ、って話だよな」
人間をやめるのはアイツらだけで十分だってのに。
「もう、逃げられないよ」
「そうだな」
ここは行き止まり。逃げられないし、そもそももう逃げるための手段はない。
ここですべての決着が着くのを待つ。
「ここまで早く追い詰められるとはさすがに思っていなかったが問題ない」
「どうして?」
「アイツらも俺の想定以上の結果を出すからだ」
「そう」
質問してきたのはトーカの方だっていうのに、なんとも素っ気ない返事を返されたもんだ。
できることならこのまま会話を長引かせたいところだが。
「……そうは、いかねぇよな」
トーカはもう戦闘準備を整えている。
その戦闘態勢は先ほどまでとはまるで違う。
魔法による遠距離戦でなく、物理による近距離戦闘の構え。
その方が早く片付けられると解析したのだろうか。
「ふぅ……」
それに応えるように、俺も剣を構える。
「……」
「……」
トーカと目が合った。
「……」
「っ……!」
一瞬にして距離を詰めたトーカの拳を、顔面スレスレで躱すと同時に、剣を持っていない左の掌底で顎を狙う。
だが、その間にさらにトーカのもう片方の手が割り込んだ。
「くっ」
「……」
互いの手のひらの感触が伝わると、トーカの手のひらが一瞬だけ光った。
「やばっ!」
素早く横に飛ぶと、トーカの手のひらから光線が打ち出された。
飛ぶのが一瞬でも遅れていれば俺の左手には大きな穴が空いていたことだろう。
いや、左手が残っているだけでもいいほうかもしれない。
しかし、そんなことを考える暇はなかったのだ。
「……」
「嘘だろっ……!」
俺のはるか先を読んでいるトーカは、俺が飛んで躱すこともすべて見越していた。
気付けば自由の利かない空中にいる俺の顔をサッカーボールのように、トーカの細い足で蹴ろうとしていた。
慌てて剣を捨てて両手でその蹴りを受け止めようとするが、トーカの強度は攻撃力にも転化する。
手の甲の骨が顔面を打ち付けた。
「ぶっ……!」
かっこ悪い呻き声をあげて、地面を跳ねるが、意識だけはしっかり繋げる。
でないと、トーカの連続攻撃がさらに鋭さを増していくからだ。
痛みを堪えつつ両手を地面に突き立て、急ブレーキをかけると、地面を押し上げるように大きく後方転回する。
「っ。休み暇も、っねぇ!」
今度は体勢が整っているとはいえ、また空中。
トーカは手のひらを俺に向けていた。
「まだだ!」
右の袖裏から壁のスクロールを取り出す。
トーカが瞬時に照準を変えてスクロールごと撃ち抜こうとするが、俺のねらいはそうじゃない。
スクロールを自身の真横に貼り付ける。
「……」
ハッと何かに気付いたトーカが慌てて光線を放ったがもう遅い。
空中で動けないのは重心となるものが定まっていないから。であれば、簡単なこと。
空中で動くには動かない重心を自分自身で作ればいい。
透明な壁を右手で押すことで、俺は左へと僅かに移動し、ギリギリ光線を躱す。
スクロールを警戒してくれたことで、一瞬でもスクロールを貼る時間が生まれた結果だ。
何も考えずに打たれていたら確実に心臓を貫いていただろう。
だが、まだ俺の空中戦は続いている。
トーカが照準を定める前に魔法を唱える。だが、長い魔法では間に合わない。
だから、この状況では。
「火よ」
子どもでも使える超初級魔法。マッチ程度の火しか出せない。
それで十分。
「……?」
トーカが互いの眉の距離を縮めるのが見えた。
と、同時に俺の服の内側が爆発した。
あっつ……。
トーカの顔は煙で見えないが困惑しているだろう。というか、困惑していなきゃ困るんだけど。
相手から見れば俺が自爆したように見えるが、なんてことのないただの爆発型の煙幕だ。本来は投げつけて使うものだが、こんな使い方もある。
ちょっと熱いことを我慢すれば問題はない。
……気分的に燻されてる感覚、ってのも加えておこう、今度から。身体からする煙の臭いがもうヤヴァい。
トーカが戸惑っている(だろう)間に上着を脱ぎ捨て、煙の外に投げ出す。
陽動だ。
煙の中から、煙を吹き出す何かが飛び出せば、この状況であればそれを俺と思ってもおかしくない。
ましてや、さっき俺は壁のスクロールによる移動方法を見せつけたばかり。トーカの解析の速さでは特に勘違いしてくれるはずだ。
……トーカがこれも全部読んでいなければ、の話だけど。
実際、攻撃してこないということはきっとそういうことなんだろう……と、信じたい。
え、大丈夫だよな? 遊ばれてるとかじゃないよな?
しかし、この煙はいろいろ使える。
煙自体が熱を帯びているおかげで、赤外線機能が備わっていたとしても、俺の姿を捉えられないし、先ほどの上着も充分囮になってくれる。
さらに時間に稼ぐことに成功した俺は右腕をまくり、長めの棘が一本ついた腕輪を手首まで下ろす。
その腕輪と棘は鉄の糸で繋がれている。
その腕をトーカがいるのであろう場所を向けると、左の手で腕輪の側面にあるボタンを押す。
シュッ!!
という音で棘が発射され、素早く身体の重心をずらす。
棘が何かに刺さる感触が手に伝わると共に、光線が顔のすぐ近くをかすめる。
居場所がわかればトーカでなくても攻撃してくる。
初めてトーカ相手にうまく躱せた気がする。けど、怖かったです。はい。
そしてあとは棘と腕輪を繋ぐ鉄糸を巻けば、俺は棘の下へと移動できる。……のだけど。
「……これ、怖いんだよなぁ」
安全ベルトをしないジェットコースターのようなものだ。
鉄糸と結ばれているのはこの腕輪一つだけ。ましてや鉄糸を切られたことを考えると、どうしても気が引ける。
――だけど仕方なくない? やらなきゃ死ぬんだぜ?
――うるせぇ。わかってるっての。
怖いもの知らずの俺に言われ、覚悟を決めてもう一度ボタンを押す。
シュルルッ、と鉄糸が巻かれ俺もそれに引っ張られる。
煙を抜けた先にいたのはトーカだが、その視線は俺じゃない。
足下の棘から生えた鉄糸だ。
「ちょ、待っ!? シャレにならない! シャレにならないから!」
トーカが鉄糸を光線で焼き切ろうとしたその時だった。
運がいいことにその棘が地面からすっぽ抜けたのだ。今度は俺が棘を引っ張ることになった。
棘も俺もそろって光線を躱すとは、なんてラッキーだろう。
……ラッキー?
いやよくねぇじゃん! そもそもこれどうやって止まるんだ!?
これの使い方を知らない俺。……初めて使ったんだもん。
「あぁもう! クソったれ!」
やけくそだといわんばかりに、トーカに身体を当てに行く。
トーカは余所見をしていたこともあり、俺の強烈なタックルを直にくらった。
「っ……」
「超硬ぇ」
それでも不幸中の幸いと言うべきか、初めてトーカの背中が地に付いた。
これを見逃す訳にはいかない。
すぐさまトーカの腹に手をかざす。
「その身体は大地となりて重力を加せ!」
その魔法詠唱にトーカが慌てて俺を押し放そうとするが、ここで負けたら間違いなく死ぬ。絶対に負けるわけにはいかない。
「重力付加!!」
「っ……!!」
この魔法をくらって動けるのはセラフィとイグスくらいだ。
あてるのが最難関なこの魔法を偶然とはいえあてることができたとは。
勝てるなんて一ミリたりとも思っていなかったのが、まさかこんな結果に終わるとはな。
「人生、何があるかわからねぇな。ホント」
女の子の重力を増やすのは少し悪い気がするけど。
「ふぅ……」
これで俺の役目も終わった。
あとはアイツらがなんとかしてくれる。
「任せたぞ……お前ら」
★☆★
★☆★
……と、思ったその時だった。
「ぉ、う……し。――ん、……っ、て」
「は?」
「――第二形態」
…………なんだって?
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