とりあえずこれから先のこと考えた方がよくない?
お久しぶりです!
さぁ、ここから毎日1話投稿します!
前回のように十話からさらに四話増やせるのでしょうか!?
会議室から帰ってくると、すでに俺達のテーブルに頼んだ料理が並べられていた。
ずいぶん長く話してたから仕方ないか。
できれば温かいうちに食べたかったと少し残念に思って見てみると、俺の料理はもちろん、トーカの料理にも一口すら食べた痕跡がなかった。
「遅かったね」
「ん、あぁ。別に先に食べててもよかったのに」
「冷めちゃってたから」
「……そうか」
俺が席に座ると、トーカにナイフとフォークを渡された。
どうやらトーカは俺が来るまでただ暇をしていたわけではなかったらしい。
自分なりにフォークとナイフの使い方の研究をしていたようだ。
うん、間違ってるけどな。
俺が手本でさりげなく持ち方を見せると、トーカは俺にならって持ち方を変える。
「食べるか」
「うん」
俺が手を合わせるとトーカも手を合わせる。
先ほどのフォークとナイフといい、そういう日常的な知識すらも消されてしまったのだと思うと、やるせない気持ちになる。
「いただきます」
「いただきます」
一口したが、やはりずいぶん時間が経っていたのだろう。温いどころか冷めている。
しかし、トーカは。
「あったかい」
「そうか? 俺のやつはけっこう冷めているんだがな」
「うん。ちょっと冷たいけど、私の中があったかい」
「よくわからんが、トーカがそれでいいなら」
わかっているのに何も知らないふりをするのもなかなか大変だ。
そんな感じで昼を終え、店の椅子でゆっくりしているとトーカがポツリと言った。
「私、よかったよ」
「何がだ?」
「外に出れて」
「お前はどっかのお嬢様とかするのか?」
「違うよ」
「……監禁されてたとかじゃないよな?」
「監禁……じゃ、ない」
「……?」
トーカにとっては監禁ではないのかもしれない。
もしくは監禁と思わないようにいじくられたか。どちらにせよ、なんともこの人体実験が最低なものだったと思わせるような発言だ。
「トーカは」
「……?」
「自分の家に帰りたいのか?」
「……どうして?」
トーカの顔が僅かに曇ったことにトーカ自身は気付いているのだろうか。
「いや、なんというかだな。俺もお前と似たような境遇でな」
「私と、リオンが?」
「まぁ、俺もぶっちゃけた話、家出した身でな。いろいろあって」
嘘は言ってはいないが、そうした感じにしか聞こえないようにする。
こう言うことでトーカの本音を聞き出そうとしているのだ。
帰りたいのか、帰りたくないのか。
別にどちらを答えようとも俺達のやることは変わらないし、変える気もない。
だから無意味な質問ではある。
だが、トーカの本音が今、聞きたいと思ったのだ。
チラリとトーカの反応を確認してみると、トーカはふるふると首を横に振っていた。
それが帰りたくない、ということなのか、帰りたいという意味なのか。どちらとも受け取れるが……。
「私とリオンはたぶん違うよ」
「違う、とは?」
「私はもっとひどかったから」
「ずいぶん言い切るんだな」
「ごめんね?」
「なんでお前が謝るんだよ」
うまい具合に話を逸らされたか。
たぶん俺を自分に関わらせないようにした配慮だろう。
「悪い。変なことを聞いたな」
「ううん。そんなことない」
「そうか」
俺はそう言うとおもむろに椅子から立ち上がった。
「さ、飯も食ったことだし家に帰ろうぜ」
「うん」
伝票を会計に持っていくと、若い男性店員が笑顔で迎えてくれた。
「ありがとうございます!」
お前はいったい何役やるんだよ……。つうか、どうやったら店員に化けられるんだよ。
俺のジト目にも一切表情を崩さない店員に呆れながらも、俺は金を出す。
「こちらおつりでございます」
その店員はレシートの下に何かを滑り込ませると、おつりと一緒にそれを渡す。
俺もトーカから見えないように自然な動きでそれを受け取る。
「またお越しくださいませ!」
店員のやけに元気のいい声に少しビビりながらも店をあとにする。
店を出ると、日は真上をちょっと過ぎた頃だった。
相変わらず町は容疑者二人を探すのに必死らしいし、ちょうどいいかもしれない。
「リオン?」
「帰る前にちょっといいか?」
「……?」
「お前に見せたいものがあるんだよ」
そう言って、帰り道とは違う方向に行くとトーカも黙って着いてきてくれる。
俺が言うのもなんだけど、そんな簡単に人について行ってはいけないからな?
トーカも。その後ろにいる奴らも。
「観光をしていてたまたま見つけたんだがな」
トーカにも怪しまれないように何気ない話で興味を引かせる。
……それにしても。
テッドの話を聞いていたときから気にはなっていたが、フリースナイという男はかなりの自信家のように思える。
自分は失敗をすべて成功に収めてきた、と言っていることからわかる。
しかし、自信家というのは実は二種類に分けられる。
一つは無根拠に自分に自信があり虚栄をはる者。
もう一つは、あらゆる想定を考慮し、何が起きても大丈夫だと自信がある者。
特に厄介なのは後者だ。
今回のトーカの関して言えば。
トーカの脱走がもし予想していたものだとすれば、そのための部隊をあらかじめ編成しておく。
これは誰もが考えることで、一見これは後者のように思えて前者の自信家だ。
本当の後者の自信家であれば、そもそもトーカの脱走を絶対に許さない。
すなわち、トーカがどうあがいても脱走できないような仕掛けを作っているはずだ。
そもそもここにトーカがいる時点でおかしいことになる。
トーカがフリースナイの思惑を越えて脱走した、そういうことも考えられるが、相手はあのフリースナイだ。
それにしてはトーカの顔に余裕がありすぎる気がして他ならない。
……もし。……可能性の話だとして。
もし、このトーカがここにいること、ひいては脱走することもすべてフリースナイの計画にあるとしたらどうだろう?
何かの目的のためにトーカの脱走を許したとしたらいったい何が考えられるだろうか。
それに対して考えを深めようとしたところで。
「見つけたぞ!」
「容疑者だ!」
後ろの方から聞こえたその声に思わず振り向いてしまった。
アイツらを見つけられるとかあり得るのか!?
そう思って振り向くと、兵士達がいっせいに俺達の方を見ていた。
……あぁ、なるほど。そうやってトーカを捕まえる気か。
だが、そこで周りにまだ本当に関係のない国民達がいることにも気付いた。
しかし、国民達がいよういまいが関係ないことだったのだ。
別に口実はなんでもいい。国民達の知らない犯罪が行われていた、などでも。国民達はそれで勝手に納得してくれる。
やられたな。
チラッとトーカを見るが、案の定トーカは怯えたように俺の袖を掴んで離さない。
すぐに俺は周囲を見渡すが、ここで下手に動けば俺が本当の壁を破壊した奴らの仲間だとバレてしまう可能性がある。
だから、ここは演じるしかない。
「と、トーカ。お前……」
トーカに悪いと思っていても、だ。
すべての責任をトーカに押しつける。
「ち、違うよ? リオン、信じて」
「捕らえろ!」
一瞬の隙を見逃さない彼らは、あっという間に俺達との距離を詰める。
大丈夫だ、安心しろ。必ず助けてやるから。
そう思ったときには、兵士達に身柄を取り押さえられる。
……取り押さえられる?
取り押さえられてる!? 俺が、なんで!?
「少女を盾にするとはなんて非道な奴だ!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺じゃない!」
「黙れ!」
地に倒された俺が必死にもがくが、まったく引きはがせる気がしない。
そんな俺の前に、明らかに偉い立場にいそうな男が立った。
「お前のことはもう調べがついている。神の心臓の一人だとな」
「はぁ!?」
そんなわけがない! あの偽装証明書はいつかでバレるような、そんなちゃちなものではない。
いったいどこでバレた!?
「これを見ろ」
「いったいなんだって……」
お偉い男が懐から出したものは、神の心臓のテッドを除くそれぞれの手配書だった。
その手配書には同じことが殴り書きされていた。
『『『『私達は六人よ!』』』』
……………………。
頭が。真っ白になった。
「この他に、壁に『一人足りない……』などというホラーじみた落書きも発見された」
「……ぁ」
あんのバカ野郎共ぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!
さらにさらに!
なろうコンから感想をもらいまして、かなりモチベが上がっています!
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