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とりあえずこれってデートじゃなくない?

感想で、ステータスのグラフ化が余計にわかりずらいという意見がありましたので三話の後半部分をかなり変えました。

時間があれば、読んでみてください。


その他に、何かここがわかりづらいなどがありましたら、感想へとお願いします。

「このようなものはどうですか!?」

「あの……。えっと……」


 店員の勢いに、トーカが助けを求めに俺を見てくるが俺に頼られても。


 それなのに。


「あっ! 彼氏さんはどう思います?」


 店員が俺の方を振り向いて感想を求めてくるが、そんなのわかるわけねぇだろ。


 あと彼氏とか言うのをやめろ。きっとトーカが恥ずかしそうに……してねぇな。「何を言っているのだろう?」とでも言いたそうに首をキョトンと傾げる。


 そういう反応されるとこっちが意識しているようで恥ずかしいじゃねぇか。


「まぁ……いいんじゃねぇの」

「彼氏さんも言ってますし!」

「あ、あの。えっと……」


 ……はぁ。このままじゃいっこうに決まらねぇな。


「とりあえずそれは買う」

「ありがとうございます!」


 はっ。嬉しそうな顔をしてくれるじゃねぇか、この店員。


「ねぇねぇ! こっちなんかどうかな!?」

「いいんじゃない? ボーダーもたまにはいいよね」


 トーカの服がようやく一つ決まったところで、その隣で試着しているカップルらしい声が響いてきた。


 別に声を出すなとまでは言わないが、少し声の大きさを抑えるべきではないだろうか。


 少し嫌そうな俺の表情をすぐさま読みとったのか店員は。


「こっちもおすすめですよ」


 と、さりげなく場所を移動させようと動く。なんだやっぱりいい店員じゃねぇか。


「隣のおすすめもよくない!?」

「いいね。それと、これが終わったらご飯にしないかい?」

「そうね!」


 俺達が場所を移すとすぐにそのカップルは追加の一着も買って店を出て行った。


 なんだよ。せっかく場所を移したというのに。


 だが、確かに彼らのいうことも一理ある。


「もう昼前か」

「そうですね」


 独り言に対して返答を返さないで貰えますか、店員さん。


 逆にアンタと付き合ってるみたいじゃねぇか。


「リオン」

「ん?」


 そこで初めて外でトーカが話しかけてきた。どうしたんだろうか?


「お腹減った。おにぎりない?」

「あの塩むすびにそこまで感動されると逆に困るんだが」


 それにせっかく外に出てきたんだから、たまには外食もいいだろう。


「この近くにいい店はあるか?」

「そうですね。ここから右に三つほど隣にある店などはどうでしょう?」

「よし。それじゃ服は今着替えさせてもいいか?」

「会計が終わりましたら試着室をお貸しいたしますよ」

「悪い」

「いえいえ」


 ということで、今さっき決めた服を買ってトーカに着せる。


 店員がとにかく薦めてきたものだが、センスはやっぱりあるようだ。


 あとはもともとトーカの顔立ちや体型もよかったのだろう。二つのセンスがうまい具合に噛み合っている。


 ここまでいくと隣に立つ俺が無意味に恨みを買われそうな気さえする。


 まぁ、いいや。仕方がない。


「んじゃ、行くぞ」

「うん」


 心なしかトーカとの会話も増え始めたことだし、トーカにとってはいい傾向かもしれない。


 潜入している身としては最悪だけどな。


「ありがとうございました!」


 店員の挨拶に軽く会釈して店を出た俺達は店員の言っていた店に向かったのだった。



 ★☆★


 ――リオン、か。


 この名前を呼ぶだけで内側が温かくなるのを感じていた。


 外に出るまで私の中に存在していなかったものが、リオンと出会ってから次々と生まれていた。


 違う。そうじゃない。存在しなかったんじゃなくて、忘れていたものだ。


 温かい。嬉しい。面白い。楽しい。一緒にいたい……などなど。


 隣を歩くリオンの顔を見る。


 その目はどこか違う方向を見ているようで、だけど私を気にかけている様子が時折見える。


 ちらちら私がちゃんとついてきているのか確認のために目を向けてくる。


 リオンと目を合わせるのが……温かくて辛い。


 だから私はその直前で目を逸らす。


 こんなにも幸せな辛さを味わったことはなかった。


 そもそも幸せという言葉もリオンから教わったんだ。


 ――ずっとこうしていたい。


「ここでいいんだよな?」


 リオンがそう呟いた。


 私はリオンの作るおにぎりがいいって言ったけど、リオンが気まずそうに「外食でもいいだろ」と言ったんだった。


「見つからないな」


 隣の脇道からその言葉が微かに聞こえた。


「……どうした?」

「な、なんでもない」

「そうか?」


 リオンに気付かれないような表情を固定する。


 リオンの眉がピクリと動いたが、すぐに店の戸に手をかけた。


「腹減った。さっさと食おうぜ」


 そう言って店の中に入っていったリオンを追いかけるように、私は声から逃げた。



 ★☆★


 店の中は落ち着いた雰囲気で、幸いなことに人も昼まっただ中というのに思いのほか少ない。


 たまには静かに食う飯も悪くない。


 アイツらと一緒の飯は騒がしいったらありゃしない。


 それに比べるとトーカはどうだろう?


 まだ俺に対して警戒をしているのか、あまり積極的に話しかける性格ではないのかわからないが、トーカと一緒にいると落ち着く。というよりか「和む」といった表現が正しいか。


 さて、と


「どこに行くの?」


 突然立ち上がった俺を驚いたようにトーカが尋ねた。


「どこってトイレだけど?」

「……うん」

「……?」


 トーカにはなんだかよくわからないときがある。


 自分の中でもわからないと言っているが、あれはいったいどういう意味なのだろうか。


 そんなことを考えながらトイレに向かう。


「ったく。何やってんだか」


 潜入調査中だというのに、見知らぬ家出少女の面倒を見るとか。


 困っている人を何でもかんでも助ければいいとか、バカ馴染みじゃあるまいし。


「っと?」


 男性トイレの前には掃除中という看板が立てられていた。


よいしょっと(・・・・・・)


 しかしそんなのお構いなく、俺は男性トイレの中に入ると、二人の清掃員が掃除をしていた。


 二人の清掃員は俺を見ると手を止めると帽子を脱いだ。


「何日ぶりだっけ?」

「五日ぶりね」


 先ほどの服屋でうるさくしていたカップル二人がいた。


 テッドとケイラだ。


「テッドはいいがケイラ。ここは男性トイレだぞ?」

「今はただの清掃員よ」

「カップルから清掃員っておかしいだろ」

「この店は人が少ないからバレないわよ」

「そうかもしれねぇが」


 万が一ってことも考えてほしいもんだ。


 まぁ、バレなきゃ何してもいいってのがコイツらの考えだし。今さらどうこう言っても結果は変わらない。ここは俺が折れるしかないんだ。


「で、なにかわかったのか?」


 こうして俺達が情報交換できるのは先ほどのこの二人の会話のおかげだ。


「隣」は「次の店で」。「おすすめ」は「店員におすすめを聞け」。「ご飯」はそのままだ。


 つまり、先ほどの二人のカップルのような会話は俺に対するメッセージで内容はこのようになる。


『次の店で落ち合おう。服屋の店員のおすすめの飲食店に来てほしい』


 あらかじめあの店員のおすすめの飲食店は調査済みだったのだろう。


 相変わらず手回しが早い。


「なにかわかったこともそうだけど」

「けど?」

「リオンは何してるの?」

「あぁ……」


 まぁ、そりゃそうなるか。


「どうやら家出したみたいでな。ポリバケツに入っていたのをたまたま見つけたんで拾った」

「拾ったってちょっとねぇ」

「潜入中に悪いことだとは思ったんだが、無視するわけにもいかなくてな」

「リオンらしいね」

「まったく。もう」

「悪い」


 だが、ここでテッドと会えたのはある意味幸いだった。


 調査の片手間でも少しトーカの家とかを調べて貰えるかもしれない。


「そこで頼みなんだが――」

「あぁ、うん。大丈夫だよ」

「いや、まだ何も言ってないのに受理すんな」

「あ、いや。そういう意味じゃなくて」


 テッドは手を横に振ると、服の内側から数枚の紙を取り出した。


「ちょっとこれを見てほしいんだ」


 それは長い論文、レポートだった。


 トーカの問題がまだ解決してないのに話を進めるなよ。


 そう思いながらも紙を受け取ると、テッドはこれまでの経緯を簡単に説明してくれた。


「あれから潜入したんだけど、すぐに騒ぎが起きちゃってね」

「イグスとセラフィだ」

「だと思ったよ」


 テッドは微笑を浮かべながら「まぁ気にしてないから」と言う。だが、お前が気にしなくても、せっかく考えた作戦を無にされた俺とケイラはそうもいかない。


 にしてもこのレポート。


「これってお前の手書き?」

「まぁね」


 テッド曰く、潜入調査で最も怖いのは潜入したことがバレることだと言う。


 少なくともテッドのいた盗賊団ではそれを最悪としていたらしい。


 そう考えると、イグスとセラフィは最悪な人間だということになるが、実際そうなのだから弁明は一切しない。


 で、潜入した後は情報を盗まなきゃいけないわけだが、さきほどの言ったことを考えれば、情報が盗まれたことにも気付かれないのが理想らしい。


 そこでテッドはそこで見た情報を頭の中にすべてたたき込み、後日、その情報の一言一句を別の紙に清書する。


 こんな長ったらしくて、俺だったら一枚目も覚えられそうにもないレポートをすべて暗記してくるとかふざけているとしか思えない。


 驚くことに、今回のレポートは二〇秒ほどで覚えてきたらしい。


 本当に化け物だな。


「レポートの四枚目を見てほしいんだ」

「四枚目?」


 レポートを作ったわけでもないのに、完璧に覚えているテッドを少し不気味に思いながらもページをめくると、右上にまるで写真のような絵が描かれていた。


 これもすべてテッドの手書きだ。


 だが、今はそんなことよりも。


「コイツは……!」


 もともとは写真であっただろうその絵は、胸から上を映し出された人の写真だった。


 そこにいたのは。


 笑った顔は見たことないが、それでも間違いなく彼女の顔だと断言できる。


「……トーカ、だと?」



明日もワンチャンいけるか……!?


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