年寄りは機械が苦手なのは基本。
「ふむ......。これじゃな」
和服を着た幼き子供が人が列を成す店を見つけ、駆け寄る。
「ふぐぐぐ......コレでは買えぬではないか!」
その子供は列を成す人が多すぎて買えそうにない事をようやく気付く。
「ほう.........既に戦は始まっておったと...?」
最前列の人間がテントを張り、カップラーメンを啜る様子がその子供の目に映る。
「ふっ..........この程度でわらわが屈するとでもおもっておるのか? 戦とは狡賢いものが勝つものじゃ」
その子供はそう言い、ただの人間には見えぬ不思議なモヤを体から出し、不思議な力を使う。
もちろん誰も見える者はおらず、誰も気付くこと無く、その不思議な力が周りの人間に降り掛かる。
それは幻覚。人を化かし、人を騙す。
そう...その子供は.........
五百年も人を化かし続ける妖怪、"妖狐"。
そしてその妖怪、妖狐はあるモノにハマっていたのだ......。
そうそれはーーーー人間の娯楽、『げーむ』である。
「ふっふっふ! わらわが最前列になるように化かしてやったわ! ............流石にこの人数は疲れるのう...」
そして、妖狐は平然と列の最前列へと割り込んでいった。
ーーーーーー時はしばらくし、開店時間。
「GWO専用VR機をお買い求めの皆さん。整理券を配布しますのでお受け取り下さい」
店員はそう言い、まず最初に妖狐に整理券を渡す。
「最初に来たお客様には特典が有りますのでご購入時にこれをレジにお渡し下さい」
妖狐は人を化かし最前列へと並んだのでどうやら、他の客とは違う券を渡される。
そこには特典、GWOの通貨。10000Gプレゼント! QRコードからお読み込みください!と書かれており、他のプレイヤーとあまり差がつかない程度の特典が貰えるようだ。
「ふむ...よくわからんが購入時に出せばいいんかのう?まあ、とりあえず本題のげーむじゃ!」
GWO専用VR機の整理券を店員が配り終わった後、店員はシャッターを開け、開店準備を終わらせる。
「やっとかのう...」
さほど待っていない妖狐が戯言をほざきながら、店内へ入る。そこにはGWO専用VR機が入った、人が1人でギリギリ抱えられるサイズの箱が大量に積まれているが...
「って押すでない!押すでない!」
妖狐はそれどころではなく 、後ろの客達に押されてGWO専用VR機の方にどんどん押されていく。
「ああ!もう、流れに身を任せるのじゃあ〜!!」
妖狐は人が流れていく方に身を任せ進み、なんとかGWO専用VR機の入っている箱を抱え、人気の無い所まで避難する。
「ぜぇ! ...は、はぁ......ぜぇ! ...はぁ......まさに地獄かのう...」
妖狐は息を切らし、汗がダラダラの様子で自分が先程までいた場所を見ながら言う。
その後レジに並ぼうかとしたら軽く迷子になり、結局壁に右手をつけ、店内を1周回ることになったがなんとかVRMMORPG、《growth world online》の購入に成功する。
「なんとか買えたんじゃぁ〜」
やりきった感を出し、妖狐は店を後にする。会計も妖狐なので化かす。......のでは無く、ちゃんとしたお金で払う。
昔、お金関係でトラウマがあったのであろうか。昔、貰った小判などの貴重品を売り捌き、ちゃんとしたお金に変えたようだ。
「ぬ〜!この程度ぉ〜」
妖狐は今、子供に化けており、箱に顎を乗せ、背を反らしながらも頑張って運んでいる。妖狐がその図が目立たないと思って術を使わないでいたが、周囲の視線がすごい集中しているが全く気付かず、店がある大通りから路地裏に入っていき、姿を消した。
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とある山の麓にある古民家。そこの隣である民家の縁側。
そこには先程の妖狐がいた。
「どうしたの〜?ヨウコちゃん?」
「ぶいあーるえむえむおーあーるぴーじーなのじゃー! 」
「あらあら...」
妖狐はGWO専用VR機の入っている箱を隣の家のおばあちゃんに見せる。ヨウコちゃんとは、妖狐が咄嗟に出てきた名前?である。
「買ったけど、どうすればいいのか分からないのじゃ〜...」
「まあまあ...私も機械音痴でねぇ......どうしましょ...」
「そんなぁー」
妖狐は子供の姿をした状態で親しげにおばあちゃんを頼るがどうやら無理のようで困っているとおばあちゃんが思い出す。
「そういえば、ケンちゃんなら知ってるかもしれないわねぇ...」
「なんですと〜! 是非、お願いするのじゃぁー!!」
「連絡取ってみるわね〜」
「頼むのじゃ」
おばあちゃんは自分の孫のケンちゃんなる者と連絡を取るために家の中に......
「ヨウコちゃん〜そこに座って、おやつでも摘んでなさい〜」
「分かったのじゃ」
おばあちゃんは煎餅が入った容器が乗ったお盆と座布団を縁側に置く。妖狐は返事をし、おばあちゃんは再び連絡を取るために家の中に......
「ヨウコちゃん〜喉が渇いたならこれを飲みなさい〜」
「分かったのじゃ」
おばあちゃんはお茶を持っていきお盆の中におく。再び妖狐は返事をし、おばあちゃんは再び連絡を取るために家の中に......
「ヨウコちゃん〜お腹が空いたのならこれをお食べ」
「分かったのじゃ」
今度はおばあちゃんが握ったおにぎりをお盆に置く。
そして、またまた妖狐は返事をし、おばあちゃんは再び連絡を取るために家の中に......
「おばあちゃぁーん!!!もういいのじゃああー!!」
「あらあら...」
そしてようやく、孫と連絡を取る。
「私よ〜、ケンちゃん、ちゃんと食べてる?」
「おばあちゃん? うん。食べてるよ?どうしたんだ?」
社会に出初めて数年。ケンちゃんはどうやら一人暮らしをしており、そんな孫が心配のようだが、用件を言う。
「あのね? ケンちゃん、ゲームに詳しいと思ってね?隣のヨウコちゃんがね?ぶいあーるえむえむおーあーるぴーじーってのを持ってきたんだけど、使い方が分からないみたいなのよ」
「ふぁ...!? VRMMORPG...今の所、うちしか出ていないはずで今日発売なのに...? 500万だぞ...マジかよ......ああ、いや、使い方はね。まず、収納状態からーーーー」
ケンちゃんは何やら意味ありげな事を言いながら使い方を教えてくれる。
が、
日が沈むまで結局時間が掛かった。
「ありがとなのじゃー!」
「......あ、ああ。」
途中おばあちゃんが晩御飯の為、姿を消し電話を代わり、ケンちゃんと電話しながら妖狐はGWO専用VR機の組み立てを完了する。
「じゃあ、ゲーム開始は明日、12:00だからそれまでにキャラメイク終わらせてね?」
「分かったのじゃ!!」
そして妖狐はおばあちゃんの晩御飯を頂き、自分の家へ帰っていった。
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とある社内。そこには大量のPCと作業をしている社員。その中で長電話をやっと終了した男が冷や汗をかきながら、横に置いてある栄養ドリンクを飲み切って仕事仲間に近寄って言った。
「......やべえ。ボスのモデルの子がこれゲームしだしたわ」
「まあ大丈夫だろ」
「違うっ!そうじゃねえ!」
男は仕事仲間と話し今の状態を話すが仕事仲間が全く心配していない為、声を荒らげて説明する。
「俺...近所の子がのじゃのじゃ言っててのじゃロリ娘ぽかったから、設定とか見た目そのままで狐耳と尻尾と和服着せて萌え要素を入れまくって俺好みにしたんだわ…」
「ああ...」
「あの子に見られたら......俺、恥ずか死ぬぅ〜〜!!」
社内に男の声が響くがもう遅い。既にモデルは作られており、ストーリーはだいぶ先まで続いており、そのキャラが充分ストーリーに関わっているので消せるわけもなく、今に至る。
「ロリコンだったか」
「うあああああ〜〜!!!」