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第初話 エイリアンりく 其ノ貮

高校生活最初の夏休みを満喫するべく初日から宿題を片付ける新垣リクと幼なじみ達。しかし彼らが風呂場で『初』めて目にしたそれは、およそ地球の常識が通用しない謎の生命体で―――!?


「話半分なんて都合がよすぎるんだよ。半分も信じる必要なんかねえ。九割は疑ってかかった方がいいな」



     002



 語り部が状況を掴めていないだなんてなんとも滑稽極まりない、きっとこんな所をあの真っ黒で真っ暗な瞳を持った全てを見透かした後輩に見られたら『やっぱり愚者の極みですねえ新垣先輩は。あなたは本当に何をお考えなのでしょうか』なんてケラケラと半笑いで言われてしまうだろうが、しかしそれでも、理解できない出来事が矢継ぎ早に起こると、人の脳みそというものは稼働が追い付かなくなるものだと思う。あの後輩ならこんな状況であってもそれまでの経緯や過程を可視化できるだろうから俺の苦しみなんてわからないだろうが、無能力者である俺にそれを求められても酷な話というものだ。だからせめて、今俺の目の前で起こっている非日常的なこの場面を、貧弱な語彙ではあるが見たままに記させてほしい。さながら小学校に上がりたての子供のノートのようなちぐはぐで稚拙な文章になってしまうかもしれないが、そこはそれ、皆様の理解力でどうにか補っていただきたい。


「あんた、よくもこいつに手を出してくれたわね―――覚悟はできてるんでしょうね?」


 俺のすぐ隣では白長髪の少女が右手に火球を生み出しながら鋭い目つきで睨みつけている―――これはいつも通り。


 俺のすぐ後ろ側には赤髪をポニーテールで結った少女が、そわそわした表情で立っている―――これもいつも通り。


 では何がいつも通りではないのか。それは、俺達の目の前に立ちすくむ『あれ』だ。


「なんだよオマエら。まさかこのオレ様に立てつこうってのか?」


 セミショート白髪を二つおさげで縛った、眼光鋭い少女が一人、俺達と対岐していた。それだけなら別にただの喧嘩に見えなくもないが、彼女の手の甲からは、深緑色の甲殻で覆われた三本の翼指に薄緑色で透けるほどに薄い二枚の被膜を張ったワイバーン骨格の竜のような翼が生えていた。加えて背中下部からは、白く太い尻尾のようなものまで生えている。これだけでも既に異様だというのに、更に追い打ちをかけるように、彼女の体の周りにはバリバリと凄まじい音を立てながら緑色の電撃が(ほとばし)っていたのだ。


「悪いがただじゃおかねえぞ……このオレに喧嘩を売ったんだからな!」


 どこか幼さの残る顔立ちとは対照的ともいえる類希なる兇暴的な顔を浮かべ、彼女は一層電撃を激しく鳴り響かせながら戦闘態勢に入る。尻尾についているリング状の緑色の模様がキュイイインと音を立てながら光を放っているところを見ると、もしかしたらあの部位は発電機のような役割を担っているのかもしれない。


「あんたこそ覚悟しなさい。この如月叶夢(きさらぎかな)様に立ちはだかったこと、後悔させてやるわ!」


 対して俺の横にいる少女もまた、いつの間にやら身体中に赤熱の炎を纏わせながら、腰を低くしてじっと構えている。

 ばっちり戦闘態勢に入っていた。


「ねえねえリク。立ちはだかるって裸みたいでちょっとえっちじゃない?」


 後ろにいるポニーテールがマイペースにそんなことを問いかけてきたが、構っていられなかった。そんな問いに応えられるほど、俺の思考回路は平常運転をしていなかったのである。

 ビリビリと、メラメラと、俺達がいる公園の空気が二重反応で揺れ動いていた。


 圧倒的バトル展開。


 ん?

 あれ?

 これって日常系ほのぼの物語じゃなかったのか?




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