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月見草短編集

短編集 失明した少年

作者: 月見草

短編です。テーマは美しさです。何か感じてくださったらと思います!!

僕は右目が見えない。


何故かは分からない。突然、見えなくなった。理由は不明だ。


僕は本当に不運だ。因みに片目だけを失明するというのは基本的に目に傷がついたか異物を目に入れてしまった場合らしい。


医者はおそらくなにかの理由で目が傷ついたのだろうと言っていた。


不便じゃなさそう?いや、そんなことはない。


他の人に比べて半分しか見えていない。右側の後ろを向くには左目で見るために首を結構回さないといけない。そのせいで右後ろからはイタズラされ放題だ。よく驚かされたりする。

あと、立体的に見えにくかったりと色々ある。けど、一番の問題は眼帯つけなければ生活できないということだ。


医者はこれ以上菌が傷跡に入らないようにするための配慮だそうだ。


が、その配慮は寧ろ心の傷を深くする。


まぁ、ご察しのように苛められている。殴られる、蹴られる等の暴力は勿論、金を取られたり、脅されたりされた。


そして気がついたら左目も見えなくなった。


理由は暴力による傷。殴られた拍子に目を机の角にぶつけた。これ以上の痛みは無いだろうという痛みを受けた。おそらくあれほどの痛みを感じたことのある高校生は100人位ではないだろうか。そして人生であれ以上の痛みは一切受けない。確信できる。


僕は入院することになった。当たり前だ。血もだらだら出たから手術もされたらしいが気絶してて全く覚えていない。そして入院中、高校を中退した。


いじめっ子達は何百回と謝りに来た。でも僕はもう「そう………」とぶっきらぼうに言うことしか出来なかった。


目が見えないことは不便過ぎる。点字も読めない僕は何も出来なかった。歩くことも出来なかった。車イスで生活するしかない。食べることも、飲むこともましてや遊ぶなど不可能だった。


すなわち、僕に未来という希望は無かった。


母さんは「頑張れ」などの前向きな言葉は言わなかった。いや、言えなかった。その気持ちは何となく分かる。親子だからだろうか。そんなことどうでもいいが。


病室では少なくとも一人では無いのは分かったが何人いるかも分からない。多分初めて連れてこられたときに言われただろうが方針状態で聞いていなかった。しかし、今さら聞けない。


???「あの………」


しかし、一週間が経ったある日、初めて声をかけられた。


「うん。なんですか?」


僕には相手がどんな人かも分からない。声は少女だったのは確かだが容姿は不明だ。


???「今日からこの病室に来たので挨拶をと………えぇっと………雲白紅葉うんぱくくれはです………」


「紅葉ですか………ぼくは白福命です。よろしくお願いします」


紅葉「この病室二人だけですか?」


「分からない。目が見えないんだよ………」


紅葉「そ…そうなんですね……何かすいません……」


「いや、紅葉が謝る必要は無いと思う………で、紅葉は何故入院何かすることになったの?」


紅葉「………事故で車に退かれました。信号無視で車が飛び出してきて………下半身が動かないんです。上半身もよくない状況だということで少なくても半年は入院です」


「何か久しぶりに人と話した気がするよ」


紅葉「実際、そうだったんじゃないんですか?気がするはおかしいですよね?」


何も見えないけど首をかしげている様子が目に浮かんだ。


「細かいよ………」


紅葉「細かくないです!!大事な事ですよ!!」


次は顔を赤くして怒っている様な口調だったのでその様子が浮かんだ。

名前からだろうか。赤っぽい長い髪をした少女がイメージされた。目もオレンジのイメージだ。


紅葉「聞いてますか!!」


僕はその時どんな見た目をしているかすごく気になった。でも聞くのはやめておいた。もし、こんなに序盤で嫌われて話せなくなるのが怖かったからだ。何より久しぶりの話し相手が嬉しくてたまらなかった。


その日から僕たちは色々なことを話した。紅葉が行っている学校の話。不便でしょうがないことを話したりもしてくれた。もした。二人はいつの間にか普通の友達よりも仲良くなっていた。


そして出会ってから2か月たとうとしていた秋の朝のこと………


僕は何も見えないが風の向かってくる方向…つまりはおそらく窓の外を見ているのだろう。


紅葉「何してるんですか?窓の外なんか見ても何も見えないんじゃないですか?」


「何か………見えないかなって………ね」


紅葉「なっ!なんかすいません………」


「謝る癖は会ってから変わってないよね」


紅葉「ホントにそう思うから謝るんです」


最近、こうやって紅葉と話すのが楽しくてたまらない。幸いそのお陰で自殺などは踏みとどまっているが病んでいるのは確かだ。それでも紅葉には感謝している。

………でも逆に少し悲しい。

こんなに優しくしてくれるのに………話をしてくれているのに………僕は何も彼女にしてあげられない。目が見えないから恩返し出来ない。それに彼女を見ることが出来ない。どんな見た目なのか………気になっていた。それが逆にストレスにもなっていた。


紅葉「命くん?どうしたの?」


考え込んでいたのがバレた。


「少し考え事」


紅葉「いや、悩んでるね」


「なぜ断言する?」


紅葉「顔に書いてあるもん♪」


「………………」


そういえばもう自分の顔も長いこと見てない。どうなってたっけ?


紅葉「話してよ。たまには命くんから話が聞きたい」


「関係ないよ………」


紅葉「あるよ。だってもう友達でしょ?」


友達

その言葉に何か懐かしい響きを感じた。そして少し話す勇気をもらった気がした。


「だって紅葉は僕のこといつも助けてくれるし暇しないように話もしてくれるのに………僕からは何もしてないし出来ないじゃん!!悔しいんだよ!!なんでそんなに優しくしてくれるんだよ………僕なんか………もういっそ………」


涙目で訴える。紅葉は無言で聞いていてくれた。でも泣きそうになって口が止まってしまった。そして………


「一回でもお前を見たかったよ………」


ほとんど泣きながらそう言った。


紅葉「……………」 「………………」


十秒くらいだろうか?沈黙が続いた。


紅葉「……………赤い目でオレンジの長い髪、それに紅葉の髪飾りをしてて背は低めで自分で言うのもなんだけど凄く痩せてる」


「…………………それが……………紅葉?」


紅葉「うん。伝えられることは言ったよ」


「初めて会ったときにイメージしたのとそっくりだ………」


紅葉「え!?凄いね!?」


驚く顔が思い浮かべられた。イメージするのは初日以来だ。


紅葉「…………命くん。私は命くんから沢山もらってる。恩返しをしてるのはこっちの方だよ」


「…………………………」


紅葉「私もね。下半身が麻痺して動かなくなったとき絶望した。今もだけど………それでもあなたを見てるとどうでも良くなる。なせだか分からないけど………動けなくなったこんな私に話しかけてくれて嬉しかった。それに話を聞いてくれた。それだけで充分だよ」


「……………………………」


紅葉「だからこれからも友達でいよう。お互い様だよ。だから自分を大事にして」


「………………………ありがとう……………………」


一瞬、紅葉の顔がうっすら見えた気がした。その顔はニッコリと笑っていた。


そして今僕は思う。


人は美しさに引かれる。景色、異性…………


人は見えなくても美しさは見える。


だから僕は彼女に引かれた。


今だから断言しよう。


たとえ子供でも。大人でも。老人でも。生徒会長とかまとめ役の人も普通の人でも。社会人でもニートでも。イケメンでも太ってても。いじめっこでもいじらられっこでも。


皆美しい。やってることが見た目が美しくなくても…………何かに美しさを隠している。


だからいじめっこ達は謝りに来たのだと………いまは思う。


人の心は常に美しい。誰でも心だけは美しい。


…………………そう断言しよう………………

いかがでしたか?こちらの短編はできるだけ沢山の感想を聞きたいので出来れば感想を書いてくれると嬉しいです!!ちなみにこの事は時々僕が思うことです。どんな傲慢な態度をとる人も不登校の人も根は優しいんだと感じることがあります。ありませんかね?少なくともぼくはそう感じます。共感してくれたら嬉しいです。

次回はおそらく「嘘をつかない少年」か「いじめられている少年」です。毎回伝えたいことはあります。せっかくなんでどっちが見たいか感想と書いてほしいです。それでは次回もよろしくお願いいたします!!

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