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孫娘

立案者、薬袋みない纐纈こうけつは戦後に生まれた。外科医であり多くの人間を救ってきた。だが、救えなかった命も多くある。彼はどうにかして彼らの命を救いたかった。彼は患者が死んだあとも、彼らの死を受け入れなかった。


 一度だけ偏屈な患者が彼の前に現れる。その男が陰陽師だった。日常生活では絶対に有り得ない怪我をしている。まるで大型の獣に襲われたような。だが、それにしてもいびつだった。ニュースにもならず、手術が成功しても誰も見舞いに来ない。その男に興味を持ち話を聞いた。


 自分は見捨てられた。死んだと思われている。悪霊に襲われた。この病院に近づいてきている。逃げてくれ。奴がここをねぐらにするかもしれない。


 何を言っているのか分からなかった。だが、彼は本気だった。


 薬袋纐纈には孫娘がいた。その名を薬袋みないいくわ


 彼女はまだ7歳になったばかり。そんな彼女は誰よりも悪霊の出現を感知して、先に何度も出会っており、悪霊を説き伏せて追い返していたのである。そんな姿を薬袋纐纈は目の当たりにした。


 程なくして薬袋の病院に陰陽師がやって来る。奴が生きていることを知り、回収しに来たのだ。また、薬袋纐纈の陰陽師に関する知りえた事を全て消し去るつもりだった。だが、薬袋纐纈は記憶を失わなかった。最新科学技術では陰陽師など彼の足元にも及ばない。自身に暗示をかけ、記憶療法を自分自身に投与して難を乗り越えたのである。


 彼は孫娘にお願いをして自身の病院に悪霊を招き入れるように説得した。孫娘は嫌がったが、無理やりに引っ叩いても実行させた。悪霊のいる医院が出来上がる。彼には協力者がいた。同じ死後の世界を研究する大学で教壇に立つ学者、大ヒットを世に送り出し続けた作家、旧友でもある俳優、この噂を聞きつけて後から政治家や弁護士もやってきた。全員が霊体としての永遠の命を望んでいた。


 程なくして薬袋纐纈は寿命にて死んだ。孫娘に自身を悪霊としてこの世界に復活させることを望んだが、その願いは叶わなかった。彼女は死後の彼を無視した。順風満帆、傍から見れば何の人生の絶望も無かった薬袋纐纈に生き返るほどの怨念は無かった。


 そして、悪霊を無意識に呼び込んでしまう薬袋的を利用した悪霊を進化させる実験が始まった。彼らはあまりに狂っていた。どこまでも精神が狂い切っていた。何人患者を殺しただろうか。「悪霊にして救い出す」という名目で。それでも問題にならなかったのは、薬袋的がいたからである。


 そして、彼らは遂に思いつく。『薬袋的を悪霊にしてしまおう』と。


 ★


 「栄助さん……」


 「私は滋賀栄助じゃない。実在した人物だが、もうとっくに死んでいる。私は彼の身体に乗り込んでいるだけだ。私は……未来人なんだよ。おそらく百物語の作者も。外国のネタを知っているんじゃない。未来では外国の神獣なんて有り触れた存在なんだ」


 「ごめんなさい。もうこれ以上は……。改めて自己紹介させて。私の本当の名前は」


 









 「薬袋的みないいくわだよ」

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