立案
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悪霊を生成する。本来ならば陰陽師が戦うべき相手であり、人間にとって恐怖と絶望を巻き散らす存在でしかない。それを量産する計画が立案された。必要なのは死体の山。
「絶望とは何か。希望を失い、苦しみ続け、もう生きていたくないと思う状態」
「人間が悪霊を生成、制御できるはずがないだろう」
そこには一人の女の子がいた。髪が短く、学生服を着て、愛らしい姿をしている。
傍らには白髪の男性がいた。眉毛より上は髪が残っておらず、輪郭は丸い。かなりのご高齢であり、顔中に皺がある。そして、不気味に笑い続ける。
「人間は進化を続けてきた。猿の頃に二足歩行をはじめ地上から脳みそを持ち上げた。石を削り、火を起し、絵画を描いた。もっともっと人間は進化していく。その進化の過程でとある生き物が生まれた。死後の概念が生まれた。人間が意思を持った瞬間に霊界という世界は生まれた。もう一つの地球が生まれた。その地球から悪意を吸い込んだ怪物が誕生した。大恐竜時代と同じだ。まず生物の進化というのは、大型化する! その後、悪霊は姿を人間に似せた。猿になったのだ。だが、まだ意識はない。意識とはこの世界において最も爆発的な発明」
持っていた杖で、目の前にいた女の子を叩き飛ばす。その女の子は当然痛がる。
「では意思を覚醒させる最も重要なファクターとは何か。痛みだよ。痛覚を刺激されることで、人間は学習をする。痛覚こそが成長の証。人間は筋肉を再生させる時も、身長が伸びる時も、前の歯が抜け落ちる時も、痛みを感じて成長するのだ」
女の子はよろよろ立ち上がった。
「痛みを我慢できる生物は死んでいった。大型爬虫類は我慢して死んだ。死にたくなければ痛みから逃げ出さなくてはならない。痛みを受け入れるのではなく、拒絶しなくてはならない。痛みとは、身体が異常を来たしていることを知らせてくれる警告なのだから」
老人はその年齢に合わず、勢いよく立ち上がった。
「そうだ。身体からの警告、それによる進化。なんと素晴らしい。全ての生物は成長する為に生まれてきたのだ!」
まるで太陽に向かって吠える獅子のように大声をあげる。
「悪霊は絶望によって生まれる。そして、痛みによって進化を果たす。大型の怪物をレベル1、人間型をレベル2、そして意思を持った悪霊をレベル3と名付ける」
「気色の悪いことを言うな! お前なんかに何も出来はしない」
女の子は泣きそうな顔で叫ぶ。しかし、老人はこう言い返した。
「お前の心無い言葉で私は傷ついた。だが、これでまた私は成長することが出来る!」
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