表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/263

子燕

 ★


 鶯小町と偽神牛鬼は以前の小部屋にいた。周りに落ちていた死体は、全て偽神牛鬼が平らげてしまった。畳の上や部屋の壁、部屋の彼方此方あちこちに血飛沫の跡がある。


 「何でかえってきた。奴らの死体はどうした……」


 「いえ、いや、だって……」


 「そうか。殺せなかったか……」


 狼面の忍者『紅爪』は逃げ出していた。奴はあの場にいたのだが、一度しか戦闘には参加していない。忍者はまず、身を隠すもの。忍者の戦闘など漫画の世界だ。正面から目と目を合わせて戦うなど、あり得ない。残りの二匹は言わずもがな狂っていた。


 そして、二匹が紙のように叩き切られた。自分もあの二人のように殺される。勝てないことを悟ったくノ一は、もう逃げ出す以外に方法が無かった。あのまま戦っても勝ち目はない。いや、あの傍らにいた男を拉致すれば……。だが、それも出来なかった。得体の知れない何かを感じた。


 あの男……何かを……。


 そう考えている内に、右腕を掴まれ空中に持ち上げられる。次の瞬間に偽神牛鬼によって頭から踊り食いされてしまった。あまりに抑揚のない、あっさりとした殺害された。


 「ふう」


 「手強いでんなぁ。あの二人組。どっちも我々以上の化け物やさかいに」


 「あの男……なんであんな場所に……」


 鶯小町はゆるりと立ち上がった。余り過ぎている袖を口に添えた。


 「ではそろそろ私も行きましょうか。もう一人の男は殺せずとも、引き剥がすまでは出来るでしょうし。おや、ボチボチ……」


 相変わらず口調が独特のイントネーションである。


 「お前が操っていた連中か。途中で術を変更したようだが……」


 小刻みに震えるように笑う。前髪が長く目線が見えない。楽しそうにその場でクルクル回りだした。


 「術を変更などしておりませんよ。むしろ術の精神汚染の進行を拡大させたんですわ。時間が経てばいずれ狂っていたでしょう。母鳥を呼ぶ子燕のように」


 「幼児退行か」


 精神のみが子供に戻る。享楽に溺れ、使命感を失い、恩情に甘え、自立心を失う。そして、赤子のように泣き叫ぶ。母親が傍にいないことに。得体の知れない不安感に襲われたから。耐えられる精神力が欠如してしまった。


 「私が現れれば奴らは助かるのですが、放っておくと発狂死します。母鳥なしでは小鳥は生きていけませんから。もうそろそろ死ぬのでは」


 「残虐だな。お前には叶わないよ」


 偽神牛鬼は胡坐あくらで座り込んだ。その骸骨のような面の間から不気味は紅い光が灯る。妖気が部屋中に充満する。黒い煙のような妖気。髑髏武者の持つ直刀にその妖力が吸収されていく。万全の準備を整える。それでも足りない。


 「お前だけ行かせても仕方がないだろう。拙者も出陣する」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ