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援護

 血染蜘蛛のぐるぐる回る目の動きが止まった。瞬殺したのかと思ったが、そう都合が良い話はない。はっ、とした次の瞬間には切り傷が修復した。だが、血染蜘蛛は滋賀栄助に対して反撃を試みようとしない。ただ見下すようにクスクスと笑っているだけ。


 それを見て滋賀栄助も小さく笑い返す。あんまりにも奇妙な光景に言葉を失った。


 「悪鬼特有の妖力により身体が自動的に修復するんだよね。妖力が消えるまで切り刻むべきなんだろうけど……」


 滋賀栄助も第二擊を入れようとはしない。それどころか少し距離をとって、何か楽しそうに考えている。躍起になって飛び込めばいいとは思わないが、随分と悠長だ。気に入らない相手だが、今はあの化物を早急に始末するのが最優先と思うべき。援護に徹するべきか。


 「攻めあぐねていますか! 御札で援護します」


 「しないで。そこに隠れていて。御札とか通用する相手じゃないから。俺にしか戦えない相手だから。通常の妖怪じゃないんだよ」


 滋賀栄助の表情が豹変した。私の身の安全を按じて気にしてくれているという表情ではなく、私の獲物を横取りするなという表情だった。


 それにしてもここまで反撃してこないとは。蜘蛛の攻撃と言えば、分裂、猛毒、牙歯、粘着糸。攻撃手段は無数に存在する。滋賀栄助は刀で応戦するみたいだが、接近戦は避けるべきだろうと思うのだが。


 「あっ、やばい! おいおい、そこの陰陽師! もっと遠くへ逃げろ! 来るぞ!」


 「来る?」


 遅れてあの悪鬼の攻撃に気が付く。奴がずっと握り締めていた物があったのだ。奴はあの蜘蛛の巣から一歩も動いていない。そして奴はずっと攻撃の伏せをつくっていた。地響きがなる。クモの巣を民家の間に張り巡らせていた。それを引っ張っていたのだ。


 「倒れる!」


 唇を噛み締め必死に広い道へ走り出した。あんなか弱い女の筋力には思えない、だが現実的にそれが起こっている。我々を巨大な家の下敷きにして圧死させる腹積もりだ。蜘蛛が糸で物質を持ち上げるなんて聞いたことがない。そんな筋力は存在しない。つくづく有り得ない現象が続く。


 轟音をたてて巣のあった小道に両サイドの家が倒れ込んだ。私は全力で走り込む事によって逃げ切ったが、あまりに必死に逃げていたせいで、血染蜘蛛はおろか滋賀栄助が脱出する様を見ていない。私よりも距離が遠かった滋賀栄助が逃げ切ったとは思えないのだが。血染蜘蛛にしたって、自分も下敷きになっている時点で自爆になっていると思うのだが。


 ふと見上げると血染蜘蛛と滋賀栄助は瓦礫の上で睨み合っている。どうやって落ちてくる大木から脱出したのかを考える前に、遂に刀と蜘蛛の足の先が鍔迫り合いになった。

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