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進撃

 原作では奴は大海に潜んでいた。その巨大な図体にて大海を荒らしまわる。それ故に、神から裁きを受けた。三度の雷光を受けて絶命する。その際に奴を襲った神を道連れにした。この物語はよく覚えている。日本のどの地域を描いた書物なのか全く分からなかった。


 著書にて怪談を書く場合に、神様を描くことなど無い。明日は我が身だと錯覚させてこその怪談だ。神など登場させてしまっては現実味は一切なくなる。まして大海を荒らす大蛇など、全く身近ではない。この作者は本当に何を考えているのか皆目見当がつかない。


 「いませんか? 雷を生み出せる妖怪が」


 絵之木実松は後悔していた。目玉の悪鬼に寄生されていた青年が発した言葉から今回の敵が「世界蛇」であることは連想出来ていた。ならば戦地に赴く前に、入念な準備と有益な情報を共有すべきだったのである。しかし、栄助の帰還と敵が四体に増えたことで、意識が下がった。まるで世界蛇と戦わない気持ちがあった。いや、自分に都合がいいように未来を思い描いていたのだろう。何たる見っとも無い失態。


 猪飼慈雲は苦しそうに下を向く。彼の式神は狛犬であり、雷獣ではない。賀茂久遠、水上几帳、天賀谷絢爛も打つ手ないといった表情だ。そんな中で自信満々に目を輝かせている人間が約一名。


 「栄助さん……」


 「ふん。元よりこの暴神立は百鬼を殺す妖刀だ。この世界蛇がどんな化け物だろうと、俺なら倒せる。斬撃で倒せないなら、感電させるまでだ!!」


 怯えていない。闘志に燃えている。独眼巨人との戦闘の傷も癒えていないだろうに。まるで三歳児のような煌めいた顔をした。愛らしい表情だった。


 「私に任せろ!」


 その掛け声と共に、暴神立を空高く突き上げた。辺りの空気が震えだす。蛇どもの進撃によって更地と化した地面から、小砂が空に舞う。辺りの樹木の間を温かい風が吹き荒れている。栄助を中心に、妖力が滋賀栄助に蓄積されていく。その妖力が上昇気流となって天空に流れ出している。


 「ああ。またその手でいくのですね」


 天賀谷絢爛がそんな言葉をあっさりと言う。実松は栄助が雷を扱うことが出来たことに驚愕していた。しかし、そう都合よく隙を見せてはくれない。ここまで大きな術を使っているのだ。当然、世界蛇に気づかれる。栄助を見て巨大な眼で睨んだ。獲物を捕捉した瞬間だった。


 目にも留まらぬ突進で栄助へ向かっていく。その場にいた全員が危険に晒されているのと同じだ。絵之木実松は栄助の腰に腕を巻いて捕まった。どうせ逃げられない。それならば、少しでも自分の妖力を吸収して貰った方がいい。目を瞑って自分の死期を覚悟しながら、一切の望みを託した。


 大蛇の速度は極めて速い。しかし、雷の速さは一秒に340m。振り下ろされた刀の頭上にある雨雲から、巨大な電撃が世界蛇を襲う。鼓膜が破れんばかりの爆音が鳴り響いた。独眼巨人の皮膚にも負けない蛇の厚い鱗が真っ黒に焦げる。まさに直撃だった。


 しかし、それでも生きている。 

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