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共食


蛇は神の便りである。神獣にして、邪神。太古の昔に誕生し、世界中にありとあらゆる場所に適応した。世界中に逸話を持っており、複数の物語に登場し、様々な伝承の歌詞に登場し、邪悪の化身として恐れられた。多くの人は蛇を見ると恐怖する。得体にしれない恐怖として。


 ある蛇は砂漠の中を這いずり回り、ある蛇は大会を群泳し、ある蛇は人と融合して合成獣となり、あるものは二頭の蛇が融合した。そしてある蛇は世界そのものと表現された。世界蛇『ヨルムンガンド』。


 「栄助さん。これってまさか……」


 「四匹とも蛇の百鬼だったとはな」


 親方様を隠しているお城を出た。猪飼慈雲と共に、百鬼の感知できる方へ走る。その百鬼はあっさりと見つかった。こんな巨大な蛇は見たことが無い。巨山を見下ろす程の巨大な蛇。錆び切った刀のような鱗を持ち、鮮血のような舌を巻く。


 すぐに迎撃態勢に入ろうと思った矢先に、悍ましい光景が広がっていた。至る所に散らばる死体。元は陰陽師であろう人間が死体のまま散らばっている。しかし、違和感があった。殺されたにしては、原型を留めている。喰われた訳でも、四股を引き裂かれた訳でもない。爆撃にあったような跡がある死体。身体の一部が石化して死んでいる死体、またある者は地面に引きずり込まれた跡が残った死体である。


 あまりに不自然。殺害方法がバラバラだ。

 

 「あれ? 東西南北に分かれて戦うのでは? もう全員集合しているじゃないですか」


 天賀谷絢爛の空気を読まない発言に苛立ちが奔る。確かに名家の陰陽師たちは、この巨大な蛇の前に立ち尽くしていた。猪飼慈雲、水上几帳、賀茂久遠、天賀谷絢爛。この四人は互いに顔を合わせていた。なぜなら……。


 百鬼同士が共食いをしているから。この灰色の一番巨大な蛇が、集まった蛇達を丸呑みしている。親方様を殺そうと四匹の百鬼が現れた。東西南北から一斉に城を襲った。近衛隊が百鬼に戦いを挑むも惨敗。この四匹の百鬼は強すぎた。


「機械仕掛けの水蛇」、「砂漠毒蛇」、「涙目たる女」、「二頭を持つ赤髪蛇」。


 そして今度は名家の陰陽師との交戦となった瞬間に、天空に巨大な魔法陣が現れた。それはあまりに巨大過ぎて、真下からその模様を覗いても何か分からない程である。そして、そこから「世界蛇」が現れた。世界蛇は人間には目もくれず、その場にいた蛇達を食い荒らした。


 まず、石化する能力を持った上半身が女で下半身が蛇の百鬼が、不意打ちのように丸呑みにされた。赤髪の蛇が激しく威嚇をする。この百鬼は以前に栄助さんが返り討ちにあって逃げた程の実力を持っている。ソイツを一方的に絞め殺し、そのまま飲み込んだ。水蛇が爆撃破を放つも、世界蛇にはそよ風にしかならない。何度も尻尾で地面に叩き付けられ、そのまま食い殺される。最後に残った砂蛇は逃げ出そうとするも、簡単に追いつかれて今目の前で食い殺されている。


 「なんだ、コイツ」


 全てを見下ろす巨大な蛇。絶望を巻き散らす邪悪の化身。

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