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平泳

逃げ腰だった絵之木実松が少し考察をする。殺傷能力は確実に上がっている。好戦的な意欲もだ。しかし、コイツは本当に強化されたのだろうか。前回での戦いは、コイツの動きはきめ細やかだった。水流に身体を任せたキレのある動き。しかし、今のこの大鼠はただの暴れ回る怪獣である。


 鎧なんて着ているから知能は上がったように感じるが実際には逆なのかもしれない。


 「この鼠、馬鹿になっている」


 大鼠が不気味に笑った。次に歯ぎしりを何度も起こして、こちらを恐怖させようとする。


 「おい、実松! 逃げるか?」


 あの大鼠に負けない不気味な笑顔で、滋賀栄助が声をあげた。


 「いえ、作戦変更です。戦闘を続行します。刀を奴の巣から取ってくるので、足止めをお願いします」


 「そうこなくっちゃ」


 言い終わる前に泳ぎ出していた。あの川の中にある巣は、水面より上からは入れない構造になっている。鳥類などの侵入を防ぐためだろう。だから水中に潜って下から潜入するしかない。必死に平泳ぎで近づいていく。


 「うらぁぁぁ!」


 「ぐぎぎぎぎぎぎ」


 向こうで炸裂音が鳴り響く。栄助が大鼠と肉弾戦をしているのだ。鼠は考え無しの突進と、噛みつき攻撃だけ。同じ脳筋戦術でも、ここまで単純な戦闘ならば両手両足のある栄助に軍配があがる。大鼠が飛び上がった瞬間に凄まじいスピードで懐に潜り込み、思いっきり蹴り上げた。大鼠は仰向けのまま水面に激突する。


 「鎧分の重みを感じねぇ」


 そんな言葉を背に、実松が奴の作った巣へと到着した。大きく空気を吸い込んで水中に潜りこむ。巣を外側から破壊できれば早いのだが、その手段は実松にはない。幸い巣への入り口はあっさりと見つかった。水深がそこまで深くないのだ。


 (この生物、やはり日本に生息していると思えない)


 日本の川は急流が多い。元より山国である日本は勾配が高い地域が多く、川の流れが速くて、水深が低いものが多いのだ。だから、川の真ん中にこんな巣を作るのは、生物が環境に適応して身に着けた知恵としては、いささか利便的ではないように感じる。


 中はやはり陸上になっていた。奴はここで休息を取っていたのである。暴神立は奴の巣の一部として、枝に突き刺さっていた。暴神立は煮え滾るように、強大なオーラをまとっていた。何が原因か分からないが、まるで振動するかのように、妖力をほとばしらせている。柄を握って一振りするだけで、容易

く巣は瓦解した。


 「うわ、俺でも破壊できた」


 温室育ちの陰陽師である実松にそんなことは不可能だ。勿論、木の枝を吹き飛ばしたのは、暴神立の溢れ出す妖力によってである。木の枝に触れることなく、斬撃のみで巣を吹き飛ばしたのだ。


 「受け取れ! 栄助さん!」 


 

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