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時計

 両の眼を見開いて徳と御覧じろ。世界が終わる。顔を上げた瞬間に柵野栄助は絵之木実松に口づけした。身体を抱き寄せながら、身を捩り合いながら。優しく頭を摩ってあげた。頬を重ねて擦り合った。そして……柵野栄助は涙を落した。


 何時間この一時が過ぎただろうか。言葉は無かった。ただ愛を感じていただけ。もしかしたら、そんなに時間は経っていないのかもしれない。いや、数時間が経っていたのかもしれない。時計はないので時間の流れが把握できなかった。そして、ゆっくりと顔をあげてみる。そして愛する人の顔を覗いてみると……。


 絵之木実松は死んでいた。


 ★


 泥人形は意識を存在を失いかけていた。身体の中に百鬼滅殺の双剣『闇荒御魂』と『天和御魂』の二つを取り込んだので。控え目に言って失策だった。どんなに狂っても百鬼であることに変わらない。最も大きな失敗は柵野栄助を見失ったことだ。何としても繋ぎ止めておくべきだった。微かに合った勝算がこれで消えて無くなった。


 「コイツはもう駄目だな」


 人狼は焦りを感じていた。滋賀栄助を取り込んで世界を壊せるだけの力を手に入れたはずだった。しかし、目の前から柵野栄助は消えてしまった。何処へ行ったのか分からない。この瞬間にも世界はポリゴンになって消えて行く。人々はいない。建物も大半が消えた。大木は消滅し、雑草までも消えかけている。何もない更地が続く。いや、これから地面も消えて行くだろう。


 圧倒的な相手と戦っているのに、ここに来て時間制限まで追加される。状況の悪化……これは苦しい。このまま柵野栄助と戦えない場合には自分たちはどうなるのだろうか。そんな途方もない不安が襲って来る。まさか帰って来ないつもりか。このまま瞬間移動を繰り返して追いかけっこを続けるつもりか。


 「ふざけるな!」


 そんな咆哮を他所に泥人形が息絶えた。これで眠気を与える効果が消え去った。四対一でどうにか互角以上に戦えていた相手だというのに。残るメンバーだけで戦えるのか。人狼は地面に転がった直刀を崖の下に投げ捨てた。


 「おい。獄面鎧王。いつまで大将を気取っている。お前独りで柵野栄助と戦うつもりか。お前も役に立て」


 百鬼将として崇め奉られる存在だったというのに。残り四体となった。高みの見物をしている場合ではない。人狼としても獄面鎧王の憑依能力に期待をしていた。百鬼将の妖力を自分の力に上乗せ出来れば……逆転の一刺しになるかもしれない。


 ここまで戦って来たのだ。諦めてたまるか。


 「獄面鎧王。このままじゃ貴方も負ける。それなら我々と一緒に……」

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