表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
218/263

埋葬

 ★


 被害は甚大だ。しかし、この悲劇によって生まれた良さもある。滋賀栄助と薬袋的が互いのつぶし合いを止めた。お互いの人生の記憶を共有しており、互いの感情を知っている。


 祖父からの虐待。両親の無惨な死。学校どころか碌に外にも出向けず、悪霊を呼び込む毎日。最期には大人の都合で殺された。雪山に埋められて凍死した。


 か弱い女性なのに、男として育てられた。外に出ることを許されなかった。出来もしない剣術を埋め込められ、厳しい稽古の中で上達しない日々。厳しい言葉を浴びせられ、自殺するまで心を痛めていた。復活したら……悪霊どころか、得体の知れない怪物になっていた。


 お互いがお互いを記憶や設定、考え方は理解している。でも、行動原理は理解できない。それでいで、心内だけは理解できる。そういう歪な関係。


 「俺は黄泉獄龍を探している。アイツが悪霊たちを百鬼にした正体だ。私はアイツを見つけ出して普通の悪霊に戻して欲しいんだよ」


 「野望は……それだけじゃないんだろ」

 

 「この世界を破壊する。この世界は脱線した。本来の歴史には……もう戻れない」


 一同は大阪城の天守閣に戻っていた。死体を埋葬し弔った後に。何名かはすぐに周防へ向かうと言い出すかと思いきや、誰も自分勝手に行動する人間はいない。全員で協力して遺体の整理をした。陰陽師は殉職が当たり前。一般人に認識されることもない。だからこそ、仲間内で心を合わせて弔う。我々を守ってくれと。


 「三匹目の怪鳥ハーピィが妖力を吸い上げている。あれを地球を破壊する威力まで増大させる」


 「この期に及んでまだそんなことを!」


 苛立つのは滋賀栄助だけである。津守都丸は正気を失っている。虚ろな目で下を向き、聞き取れない声で小言を口ずさんでいる。水上几帳と土御門芥は何も喋らない。何も声を発さない。この世界を破壊するという決断に、少しくらい後ろ髪を引かれたのだろうか。


 「じゃあどうするんだよ。この世界は一年間がループしている。その現象は原因が掴めねぇ」


 そう言って薬袋的が人型ロボットを指差す。そのロボットの胸にある液晶画面には、周防にて待ち構える獄面凱王と武雷電の姿があった。奴らは最終決戦に向けて覚悟を決めている。全ての謎を解くにはあの場所に……行くしかない。


 恐らく残りの百鬼を総動員して迎え撃つ所存だろう。きっと奴らは滋賀栄助と薬袋的を……今度こそ本気で殺しに来る。百鬼将が二人係で……いや、三人係かもしれない。ここまで来て、まだ姿を現さない……黄泉獄龍。


 「その前に教えてくれませんか? 薬袋的さん」


 不意に声を出したのは津守都丸だった。消えかかりそうな声で、ボソボソという。


 「レベル3計画の全容を。柵野栄助って何なんです? どうも百鬼たちも恐れているように感じましたが。栄助さんは忘れている部分も多いんですよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ