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目下


 百鬼『背徳者イレイショナル』。真っ黒なアーマーを身に着けた長身の男。全身が真っ黒の全身タイツの男なのだが、身体のラインとしてマゼンタの線が入っている。また、肩には鷹の頭蓋骨の形をした黄金の石碑が乗っかっている。目が真っ赤に光っている。


 「雑魚はいいのかい?」


 「構わん。必要ない。貴様の養鶏に飼料を与えてたまるか」


 空気が淀んでいる。吸い込む息が気持ち悪い。狂気に心も身体も侵食された真っ黒な少女と、真っ赤な線の入った漆黒の怪物。この二匹が真正面から向かい合う。


 「これが……百鬼……」


 津守都丸が実際に百鬼を見たのは戦闘員ネバットを除くと初めてだった。今まで知り得た情報から聞いていた通りだ。およそこの世の生き物とは思えない。百鬼……未来の時代からやって来た悪霊。今まで見てきた、聞いてきた、知り得てきた、百鬼とは根本は繋がっていつつも、確執的には違う。住んでいる次元が違う。


 「貴様こそゴミを捨てろ。本気になれ」


 その言葉を聞いて、何の思い入れもなく、腕で縛りつけていた男を鉄の床に捨てた。手を離しただけ。腕を大きく開いただけ。津守都丸は目を見開いたまま、地面に俯せに倒れた。床が冷たい。頬に冷ややかな感触が伝わる。薬袋的は楽しそう。


 「名乗らせて貰おう。背徳者イレイショナルだ」


 「お前、そんな名前だったっけ? あぁ、思い出した! 確か特撮ドラマ『武雷電』の第一話で主人公に顔面をぶん殴られて、宇宙の彼方まで吹っ飛んで行った雑魚じゃん」


 「偉大なる大幹部たる我に、そのような……」


 第一話で負けてしまう幹部って面白い雑魚だな、と言って笑いこける。腹を抱えて前屈みになり、涙を堪えている。それを点滅する真っ赤な光で照らす。我慢ならないという面持ちなのだろう。真っ黒な仮面の下が見てみたい。


 「図に乗るなよ、薬袋的。いいや、柵野栄助。お前はここで消えるのだ。薬袋纐纈が死んだ今、残る面倒な相手は武雷電のみ。百鬼将は我らが軍勢が始末する」


 「出来ないよ。たった一話で死んだ雑魚と、万年負け犬の大首領様に、百鬼将は倒せない」


 残酷な言い草だった。人を鼻で笑うかのように、ただ自分より目下の人間を見下す。


 「俺の能力は知っているな。『非合理イレイショナル』だよ。俺の攻撃は辻褄が合わない」


 「おう。日本語の使い方知っているか?」


 右腕を怪し気に光らせて見せつける。本人は恰好を付けているのだろうが、薬袋的は全く意に介さない。小さく手を叩いて滑稽だと馬鹿にする。


 「道徳に背く。良心がない。これが私の強さの本質だ。私の象徴は『容赦なし』『徹底』にある。普通の人間が精神的に出来ないことが出来る……おい、聞いているか」


 「五月蠅いなぁ。本当に面倒な奴だ。道徳に背いた程度で強くなるなら苦労はないよ。もう時間が勿体ないから、とっとと掛かって来い!」

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