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抹殺

 伊代羅刹龍は強靭な肉体を持つ。殺した百鬼を仲間に帰る能力は協力だが、百鬼将であるが故のポテンシャルの高さがある。一般的な百鬼が束になったって勝てる相手じゃない。同士討ち能力も、相手の武器を奪い取る能力も、百鬼将には通用しない。


 「では……どうやって……百鬼将を上回るのか」


 小手先の戦術で倒せない。何度切り付けようとも、部位を破壊しようとも、呪いを加えようとも、精神的に追い詰めようとも、百鬼将は倒せない。では……どうやって倒せばいいのか。


 「百鬼将を上回る……妖力を叩き込めばいいのだ!」


 「薬袋……的……」


 怪鳥に蓄えた百鬼の魔力では足りない。もっと、もっと果てしない妖力が必要である。そこでエネルギーを更に徴収する。怪鳥は死に腐った百鬼を拾い食い漁る。動きは遅いのだが、着実に一匹一匹食い漁る。


 伊代羅刹龍は薬袋的を知っている。薬袋纐纈の旧友として薬袋病院に通っていた。金ならばいくらでも払う。だから私の痛みを全て取り去ってくれ。不死身になれる技術があると聞いた。私を不死身にしてくれ。不老不死にしてくれ。死ぬことが死ぬ程怖いんだ。


 そんな言葉を薬袋纐纈は笑い転げながら聞いていた。そして自分の孫娘に合わせた。悪霊を自然に引き付けてしまう少女。薬袋的みないいくわ。最初にこの娘を見た時に……明るい太陽のような子だと思った。薬袋纐纈のような狂った笑い方をしている訳ではない。本当に人生を楽しんでいるように笑っていた。幸せが全身から溢れていた。


 自分が殺した人間の霊が……薬袋的に惹き付けられて飛んで行った。伊代羅刹龍は生前に政治家であり、社会的に何人も抹殺している。数え切れない悪霊に呪われていた。そんな悪霊たちを一瞬で慰めたのだ。この子は……憑りついている悪霊の量で、人間の本質を見抜くことが出来ると一瞬で判断した。


 初めて……勝てない生物が出現した。


 「どうしてお前がここに……。お前は……私たちが殺したはずだ」


 世界一素敵な女の子を……殺した。太陽を二度と昇ってこないように、沈めてやった。雪山に埋めて凍死させた。泣き叫ぶ彼女を強引に引っ張って。


 「いいね! お前ならそんな在り来たりな台詞を言ってくれると思っていたよ」


 薬袋的が笑顔を向ける。遂に伊代羅刹龍が変身させた百鬼を平らげた。食べ散らかし、食べ尽くし、食べあげた。もう地面に転がっている死骸はない。怪鳥は……丸々と膨らんだ七面鳥のようにブクブクと太って、姿を変えてしまった。


 「さぁ。死ぬ覚悟は出来ているよね……」


 「ま、まて。私は……不死身の身体を身に着けるために……。不死の肉体を手に入れる為に……。負けが分かっているなら、戦わなかった。お前は私に幸せを齎してくれると……」


 「いいね! ここ最近の悪役は面白くない。実はいい奴でした、とか。本当は世界平和を目指していました、とか。面白くないんだよ。もっと悪役は性格がゴミ屑じゃなきゃ」


 「な、なにを言っている……」

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