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旧友


 薬袋的と薬袋纐纈は仲が良くなかった。薬袋纐纈は薬袋的に悪霊を呼び込むように強引にお願いした。元より狂っていた人間だった。その気色の悪さは家族にも及んだ。独り言として訳の分からない言葉を口走り、癇癪をあげて、悍ましい笑いを見せる。誰も彼についていけなかった。


 薬袋的も徹底的に恐怖に支配されていた。祖父の赴くままに人間を呪って行った。彼女の目の前で何人もの人間は破滅した。罪を贖う手段を失い絶望のままに死んだ。笑わなければ祖父に叩かれる。楽しそうにしろと強要された。何も考えないでいろと命令された。口答えを一切許されなかった。


 誕生日の日に欲しくもない玩具を何百個も買ってもらった。豪華な食事が食卓に並んだ。使用人が大勢、生活の手助けをしてくれた。こんな私を不幸な女の子だと言ったら、きっと罰が下るだろう。彼は本気で世界を救済していた。そう思った瞬間に他の思考を一切捨て去った。そうやって生きて来たのだ。


 自分だって主人公になれると。


 「相変わらずの期初の悪い顔だな。薬袋纐纈、我が旧友よ」


 荒野に青い鎧を纏った怪物が姿を現す。ストレンジャージレンマと同じく機械のような姿なのだが、どこか人間らしさもある面持ちだ。頭の角はクワガタ虫のような二本角。その覇気は偽神牛鬼と同じ……いや、それ以上な気がする。圧倒的な妖力の多さ。


 怖がって縮こまっていた滋賀栄助が立ち上がった。この場で二体目の百鬼。


 「そうか。お前が来たか。待っていたぞ、我が親友よ。百鬼将:武雷電ぶらいでん


 この気迫、やはり百鬼将の一人だったか。強烈な覇気を用いて薬袋纐纈を威嚇している。殺気を垂れ流しつつも、その大部分は此方へ流れてきていない。薬袋纐纈が百鬼と結託していないという話は本当だった。奴の狙いは間違いなく、ストレンジャージレンマなのだ。


 「会いたかったぞ、我が親友よ。お前がもたついてくれたおかげで、何匹か百鬼を倒すことに成功した。本当はもっと倒したかったのだがな」


 「私はお前に会いたくなかった。私はお前を裏切ったのだから。そして、また、旧友を苦しめることになる。私が俳優を目指そうと思う機会をくれたお前に、心から感謝している。だから、こんな事はしたくなかった……」


 自白した。裏切ったと。仮面を被っているので素顔は見れない。どんな顔をしているのか分からない。裏切ったという事実を再確認しても、それでも薬袋纐纈は気色悪く笑う。


 「はっはっは。別にいいのだよ。私は運命に負けただけだ。何も考えなかった、勝てると確信していたから。だが、無謀な勘違いはここまでだな。そろそろ夢から覚める時期なのだろう。まあ私は敗北者になることが確定したが、お前はどうかな……」


 滋賀栄助と絵之木実松を置き去りにして、そんなことを話し合う。仲の良い旧友が出会った時の感慨だと思えない。殺気が二人の間に渦巻いている。


 「滋賀栄助……いや、柵野栄助だな。貴様にも悪いことをした。お前を雪山に埋めて凍結死させた。その前にもお前の怨念が欲しくて、残酷なことをした……」

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