表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

R&J 1-3-1 ジュリエット登場

第一幕 第三場 キャピュレット家の一室

1-3-1

キャピュレット婦人と乳母登場

キャピュレット婦人J  ばあや、ジュリエットはどこ?

乳母J   あれまあ、すでにお呼びしたんですよ。私の処女の誓いにかけて嘘じゃありません。と言っても私が嫁いだのは十二のときですけどね。すでにお呼びしたんですよ。子羊お嬢様あ!てんとう虫お嬢様あ!お嬢様あ!ジュリエットお嬢様あ!

ジュリエット  どうしたと言うの?ああ、お母さま、何かご用?

キャピュレット婦人J  実はね、お前に内々の話があって。ばあや、席をはずしてちょうだい。あ、いえ、いてちょうだい。ばあや、この子ももうそろそろ年頃でしょう。

乳母J   そうでございますとも。そりゃもうお嬢様のお年については仔細に存じておりますとも。今度の収穫祭の晩には十四におなりになる。あの誕生日の地震のことも忘れはしませんとも。あれからもう十一年になるのでございますねえ。だれもかれも大慌て。駆け足がおできになるようになったお嬢様も駆け出して、転んでおでこにヒヨコのおきんたまのようなコブをこしらえて。今はあの世のうちの主人がお嬢様を抱き上げて「ああ、よしよし。うつ伏せにお転びになりなすって。お嬢様、もうすこし大きくなったら仰向けにお転びになるのがようござんすよ」って。お嬢様はぴたりとお泣きやみになって、うんうんとおっしゃいましたよ。そのお嬢様がもうお年頃でございますよ。うちの主人が「大きくなったら仰向けにお転びになるんですよ」って言ったら、うんうん、て。

キャピュレット婦人J  ばあや、その話はそれくらいにして。

乳母J   はい、奥様。この通り黙りますとも。ばあやはお嬢様が大きくなられてうれしゅうございますよ。これでお嬢様のお嫁入りの姿を見せていただけたら何も申すことはございません。

キャピュレット婦人J   そうなのよ、お嫁入りの話なの。ねえ、ジュリエット。あなたは結婚のことをどう考えているの?

ジュリエット   結婚だなんて、まだ夢のよう。考えたこともありませんわ。

乳母J   まあ、お嬢様、夢のようだなんて、賢くなられて。ばあやのお乳が効いたんですよ。

キャピュレット婦人J   そこを考えてみて欲しいのよ。このベローナの立派なお嬢様方で、あなたよりも年下でもう母親となっておいでの方もあるのだし、この私もあなたの年には、もうあなたという子があったのですもの。実はね、ジュリエット、あのパリス様がぜひあなたをとお望みなの。

乳母J   パリス様とは、あのパリス様!?非の打ちどころのない好男子の!

キャピュレット婦人J   ベローナの夏にも、あれほど美しい花は咲かないと言われるお方。

乳母J   花ですとも。パリス様こそは花そのもの。

キャピュレット婦人J  どう?あの方を愛せるかしら?今夜の宴でお目にかかれるはずよ。あの方のお姿から、あなたはそこに書かれた内面を読み取るのよ。調和のとれた素晴らしい愛の書も、まだ表紙を持たず製本もされていない。表の美しさは、その内側に美しさを秘めていればこそ価値あるもの。あの方と結ばれるなら、すべてはあなたのものになるのですよ。好きになることができるかしら?

ジュリエット  好きになれるようにお目にかかってみます。目で見て好きになれるものならば。私の視線の矢が深く刺さることはありませんように。

召使登場

召使J  奥様、お客様方のご到着でございます。お食事の支度は整いまして、奥様は旦那様がお呼びの、お嬢様はみなさまがお待ちかねの、乳母は台所で呼ばれの、手前はこれよりご接待のでございます。すぐにおいで下さいますよう。

キャピュレットJ   すぐにまいります。

召使退場

キャピュレットJ   ジュリエット、伯爵様がお待ちですよ。

乳母   さあさあ、お嬢様。嬉しい昼には嬉しい夜を添えるのでございますよ。

一同退場 


シェイクスピア ロミオとジュリエット 第一幕第三場 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ