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美空①
とある廃棄物処理場にて。
カラスが飛び交う廃棄物の集まる広場でしきりにカメラのシャッターをきる深森美空。同じ年齢であるアイカと似た長い髪だが、アイカのように所々ばさつきがなく、端正な顔に相応しく流れるようなしとやかさがあった。きれいな青い目の奥には水底を覗くような深い色がある。その目に映るのは壊れた家電製品や車など鉄くずの塊達。夕日はこの廃棄物の山を美しく照らしていく。美空はひとしきり撮り終わると、カメラから顔を離し安堵の一息をついて夕日を眺めた。
「美しい」
今度は視線を夕日から廃棄物に移す。
「壊れゆくものの儚い姿」
美空はそれから何枚か写真を撮った後、壊れた時計を見つけ、思い出したかのように腕時計を見た。残念そうに思う。
「(塾の時間だわ)」
美空は惜しげに夕日に染められた廃棄物を見渡す。