黒桜戦②
黒桜達はとあるビルの屋上へとワープした。眼下にはたくさんの人たちが見える。彩芽は人の多さより、高さにビビッてしまう。
「どうしたの? お姉ちゃん」
彩芽は慌ててしまい、本音を言ってしまった。
「な、なんでもない…… ちょっと、高いなと思っただけ……」
黒桜はいきなり飛び降りた。彩芽は引き気味に驚くが、すぐに黒桜は宙に浮いた。先ほどのように両手を向かい合わせ、球体状である闇の塊が出来上がると、力を込めた。地上に行き交っているたくさんの人々がバタバタと倒れ始め、宙に浮いていく。人々は次から次へと叫び声を伴いながら、黒桜の手元まで登ってきては闇の球体に吸い込まれていく。彩芽には地獄絵図を見るようで言葉が出ない。
「あなたもやってみる?」
黒桜が問うと、彩芽は黙って素早く首を振った。
「駄目ね。仮にも闇の魔女の仲間だと言うのに。でも、それ以前にこの者達と同じ人間だったわね」
彩芽は返答に困った。黒桜は悪戯っぽく笑う。
「でもそれじゃ、到底闇の魔女にはなれない」
黒桜は妙に優しいトーンで言葉を続ける。
「強くなれないわ」
彩芽は高さと黒桜の魔力に怯えながらも逸らしていた目を眼下の人々に向けた。彩芽はまだ怯えながら言う。
「私も、人間なんて、どうでもいい! でも、やっぱり、高いのは苦手だし、それに……」
小花は笑顔で話に割り込んできた。
「大丈夫だよ、お姉ちゃん」
小花は両手で光る花型の絨毯のような物を作った。小花に促され彩芽はそれに乗った。
「何、これ?」
「これで空を自由に移動出来るよ」
小花の無垢の行為に彩芽は違う意味で困った。空を飛べるとなると、次は人間を攻撃しなければならない。黒桜は微笑んだ。
「良かったわね?」
彩芽は迷いを振り切ろうとする。
「(いいわ。私はもう、闇の魔女の仲間だから。普通の人間じゃないもの!)」
光る花型絨毯の上で、彩芽は自分に言い聞かせるように言うと、両手を下の人々に向ける。彩芽は思い出す。以前のように力を込めれば、巨大なドクロが人々を呑み、地面に吸い込んでいくかも知れない。手が震えて力を込める事が出来ない。しばらく彩芽の様子を見守っていた黒桜が諦めたようにため息をついた。
「もう、いいわ」
彩芽は無駄に体力を消耗したように全身に汗をかいているが、気持ちは救われたようにホッとする。しかし、次の瞬間、黒桜の右手の人差し指が闇のオーラをまとい大きくなって、彩芽に向けられる。
「あなたは邪魔なだけ。一緒に吸い込まれるといいわ」
「そんな!」
彩芽は慌てたが、黒桜はあっさりと指を降ろした。
「と、言いたいけれど、あなたにはかわいいボディガードがいたわね」
混乱している彩芽を傍目に、黒桜はちらりと相も変わらずニコニコ笑顔の小花を見た。




