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世界の終わりを望んでみた  作者: 白上 しろ
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彩芽②

三者懇談の時、先生が彩芽について語った。

「彩芽ちゃんは非常に大人しいですね。それに何事に対しても興味を示そうとしない」

先生は彩芽を見て、尋ねた。

「彩芽ちゃんは、何か好きな事って何ある?」

彩芽はしばらく黙っていたが、静かに首を振った。

「じゃ、好きな食べ物とかは?」

今度は黙ったまま全く動かなかった。

「この子、本当に何にも興味がなくて。家でもほとんど話しませんし。一体何を考えているのやら。これから大丈夫でしょうか?」

隣に座る母親が見かねたようにため息をついた。それから先生も彩芽について語るが、彩芽は一切話を聞いていなかった。自分について語られることにさえ、興味が無かった。

学校ではいつも一人だった。椅子に大人しく座り、いつも外を眺めて過ごしていた。目にはおそらく何も映っていない。

 ある日、彩芽が登校すると、自分の机の上に一輪の花を挿した小さい花瓶が置かれていた。周囲の児童はクスクスと笑っていた。彩芽は机の前に立ち、じっと花をみつめた。死者に対するような心ない悪戯とは分かっていたが、彩芽はそんな事より花の美しさに見とれていた。そう。彩芽は唯一、花が好きであった。彩芽が花に見とれて微笑むと周囲から「気持ち悪い!」

「やっぱ不気味だ」

そんなざわめきが聞かれた。彩芽の机は陽がよく当たる場所にあったため、静かに花瓶を後ろの棚の涼しい所へ持って行った。生徒達は彩芽を避けるように逃げた。

そんな事を思い出し、ベッドに身を任せながら彩芽は壁に掛かる蕾の絵を尚も無表情に眺めていた。


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