アイカとアゲハ②
雨が本降りとなった。
アゲハはアイカに近づいて言った。
「その指輪は闇の魔女がこの世界にいる限り、外れる事はありません。ですが安心してください。闇の魔女をすべて倒し、元のような世界に戻れば、その指輪も外れます」
「まだ戦いは終わっていないわ!」
アイカはアゲハの胸元をつかんで食ってかかった。無抵抗なアゲハに、アイカは攻撃をためらう。もっとも生身のアイカにアゲハを倒す事は出来ない。そんな事はアイカにも分かっていた。
「お願いです、アイカさん。苦しいでしょうけれど、それまで見守ってくれないでしょうか?」
アイカは歯を食いしばりながら言った。
「アゲハこそ! 私達の邪魔をしないで!」
「アイカさんは本当にこの世界を」
「そうよ! 世界を無茶苦茶にしてやるのよ!」
アゲハは悲しそうな顔を浮かべた。
「どうしてなのですか?」
「どうして? この世界が、あまりにもくだらないからよ!」
「くだらなくなんてありません!」
アイカは初めて真正面から怒鳴ったアゲハに驚いた。『すみません』と慌てて謝るアゲハだが、思わず後退したアイカは失笑した。
「なによ……。あなたのような、世界を救うとか、化け物みたいに大きな力をもった正義の味方なんかに、私の気持ちなんて分からないわよ」
「この世界が滅んでしまえば、アイカさんも」
「もちろん私も死ぬでしょうね」
「それは駄目です! この世界が滅んでも、アイカさんにだけは生きていて欲しい」
アイカは笑った。
「何言ってるの? 馬鹿じゃない? 正義の味方がそんな事言っていいの?」
「私は正義の味方ではありません。この世界を救うだなんて、私にはとても大きすぎます。でも夢があるんです」
「夢?」
「もう一度見てみたいものがあります」
「見てみたいもの?」
アゲハはいつもの笑顔になって頷いた。




