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世界の終わりを望んでみた  作者: 白上 しろ
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アイカ①

 夕方の西日は少女の長い影を坂の峠に映している。長い黒髪に赤い瞳。中学二年生の舞城アイカは普段と同じく表情を殺しているように淡々と静かに下校していた。

下り坂にさしかかると前方で老婆が何かを拾い集めていた。近づくと、財布を落として小銭をばらまいてしまった事が分かった。アイカは足元にあった小銭を拾いあげると、老婆は頭を下げた。

「おや、ありがとう」

ハッとしてアイカの顔が強ばると、小銭を地面に捨て、逃げるように走り去る。老婆は呆然としてアイカの背中を見送った。走りながらアイカの心に悔しい思いがこみ上げてくる。

「(まただ!)」

息を切らしながら自宅の扉の前でたどり着き、呼吸を整える。家の鍵を開けて無言。二階に上がり、『AIKA』とプレートのかかった部屋に入った。部屋の壁には魔女のポスターが一面に貼られてあり、魔女を思わせる怪しげな置物がいくつもあった。アイカは電気も点けずに小さい丸テーブルに向かう。テーブルの下にある蝋燭を取り出して、ライターで火を灯すと、テーブルの上の蝋燭立てに挿した。そのまま体育座りをして、じっと蝋燭を眺める。ようやく安堵の表情を浮かべると、アイカは顔を膝に埋めた。幼い頃の自分を思い出す。

小さい時から親には一人娘として特別にかわいがられていた。だがアイカは常に極端に愛を拒絶してしまう所があった。声を掛けられると嬉しそうに父親の方へと走って行く。しかし、抱きかかえられようとすると、アイカの心はすぐさま嫌悪に満ちたように拒絶し、父親の手を振り払って必死で逃げているのであった。母親のお手伝いをすると「ありがとう」と言われる。そう言われる度に持っていた物を手放し、また意味も分からず逃げるのであった。


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